2011年8月7日日曜日

日銀の為替介入は過去最大: これも国民へのつけまわし?

 5日、ロイターによれば、日銀が4日に実施した為替介入は、日銀が公表している「当座預金増減と金融調節」からの推計から、4兆5000億円規模で、1日の円売り介入額としては、過去最大であったと言う。

この単独介入の成果は当然のことながら一時的なものに留まり、円はただちに78円半ばまで下落し、介入効果は疑問視されている。それどころか、円高の進行を抑制するためには、日銀はマネーを増やす政策にコミットするべきなのではないかという専門家からの声も飛んでいるとロイターは報じている。


にもかかわらず、4日以来、この介入について、国内メディアにおいては、「一時的にせよ効果があった」だのといった意見ばかりが報じられているのである。


以下東洋経済の記事においては、経団連に属する輸出で利益を得ている大企業の擁護のために行ったものであるが、円高は経済の構造上自然な流れであって、効果が薄いばかりか、国民の大きな負担を強いるものでしかないことを明らかにしている。


 財政が逼迫しているような時期に、経団連の輸出に依存する企業に対する無意味なご機嫌取りなどやめて頂きたいものである。いくら高くても、ベンツやVMやロレックスは確実に売れている。日本の大企業が、価格競争しなければ売れないようなものばかりを飽かずに大量生産して続けてきたことの限界が自明になっているというだけのことである。


経団連に属する大手製造業は、原発の電力に依存しなければ生産ができないような電気食い虫の製品を大量に作り、熾烈な価格競争をして海外市場に売りさばくといった従来通りの産業形態から脱皮していち早く斬新的な転換を図る必要がある。政府やメディアや省庁の圧力をかけて、原発の再稼働だの、為替介入だのと、国民にばかり負担を強いるようなことは避けて頂きたい。


かのドラッカーも言っている。「傲るな。企業は、「社会」に存在させていただいているものである


円高は必ずしもマイナスばかりではない。なぜか毎月電気代は上がる一方であるし、輸入商品の大幅な値下げも行われないため、庶民にとって円高効果は全く眼に見えないものとなっている。


しかし、明らかに円高で原油価格は安くなっているということは、当面化石燃料に頼らざるを得ない日本にとっては、むしろ喜ぶべきことであるし、仮に食糧汚染による食糧不足が生じることがあったとしても、円高であれば海外輸入が容易になる。下手な介入をしている暇があるならば、円高によって潤う産業の振興でもしている方がはるかにましである。


以下では、為替介入をほめそやかすメディアの姿勢についても言及し、経団連に属する大企業の尻馬に乗って原発の安全神話を流布し、推進の一翼を担ってきたのと全く同じではないかと論じている。


http://www.toyokeizai.net/business/industrial/detail/AC/d476acb8b6e662a9b2b0049fcf298215/

政府・財務省の円売りドル買い介入の大いなる罪、相場の総崩れ招く - 11/08/05 | 17:56

 政府・日銀が昨日8月4日の朝方から円売りドル買い介入を実施、本日5日も市場では午後から介入を再開したとの観測が流れている。しかし、円売りドル買い介入は効果が薄いばかりか国民負担が発生し、大きな禍根を残しかねない。

円高は経済の構造上、自然な流れ

 まず、今般の円高の背景は、野田佳彦財務相の言うような「投機的、無秩序な動き」ではない。欧州周辺国のソブリン危機、米国の債務上限引き上げ問題に加え、景気回復期待の後退があって、世界中の投資家がリスク回避モードになり、円が買い戻されている。欧米は金融危機後のバランスシート調整に時間がかかり、景気への不安が幾度もぶり返す状態にある。民間の負担を減らすために財政出動を行ったが、財政余力には限りがある。市場はそこを不安視している。

 加えて、長期的な流れとして、米ドルは他の通貨に対しても下がる傾向がある。米国は経常赤字国で、円ベースで世界最大の252兆円余の対外純債務国、これに対し、日本は経常黒字国で、世界最大の251兆円余の対外純債権国。現在のように、金利差がほとんどない状態になると、ドル安円高傾向になる。米国はインフレ、日本はデフレであることからも、ドル安円高で調整されるのは当然の動き。つまり、ファンダメンタルズを反映したものだ。
外為特会に膨らむ損失

過去の介入の結果、日本の国庫には大きな損失が残っている。対外純資産のうち3分の1は外貨準備だが、その中身は惨憺たるありさまだ。

 JPモルガン・チェース銀行の佐々木融債券為替調査部長は、「過去に110兆円余りの円を借り入れてドル買いの介入を行って、外国為替資金特別会計には40兆円近くの含み損が出ている。クーポン収入をためていれば理論上は収支トントンとなるが、これを予算で使ってしまっているので、外貨準備を取り崩すと損が実現する」という。いわゆる”埋蔵金活用”ということで、予算で使ってしまったのである。

 今回も、初日の介入額だけでも4兆円という推定がなされているが、これも円高が再び進めば評価損を抱える。自国通貨高は購買力を増す。政府がカネを使って、これを抑制しようとするのは、家計から見ればとんでもない背信行為であるばかりか、財政赤字がさらに膨らみ、いずれは国民負担に付け回される。

 円売りドル買いの介入とは、輸出企業への補助金にほかならない。もし、本当に円安方向に転換できて、輸出企業が潤い、雇用を増やしたり従業員の賃金を上げたりできるのならよいが、輸出企業はすでに、円高の前から需要地である中国などへの移転を進め、雇用については非正規労働を多用して賃下げを行っている。こうした企業に雇用吸収はもはや期待できない。

 また、前述のように、そもそもファンダメンタルズによって円高の流れができており、介入によって円安に転換することは、多額の介入資金をかけても不可能だ。

 介入に効果がないことは、「東洋経済オンライン」の佐々木氏へのインタビュー記事でも紹介している



世界的に円キャリーの巻き戻しで相場は総崩れのおそれ

 しかも、今回、介入後に欧米日とも大きく株式相場が暴落した。この点に注目し、マネーパートナーズの金井氏は警告を発する。

「過去には、円売りドル買い介入後に、安心感から再び円キャリー取引が復活して世界の株価をかさ上げするという現象も見られたが、今回は、介入に効果がないとの判断を市場関係者が下したので、いっせいに円キャリートレードの手仕舞いに動き出したと見ている」。

 だとすれば、世界的なリスク回避モードをさらに強固なものにして、商品相場なども含むすべての相場の値崩れのトリガーを引いた可能性がある。トリシェECB(欧州中央銀行)総裁のみならず、世界から指弾を受ける可能性もある。

 テレビや新聞などの大手メディアが円売りドル買いの介入を催促すれば、投機家は円売り外貨買いのポジションを手仕舞う機会をうかがうはずだ。なぜ、介入をほめそやすのだろうか。日本経済団体連合会に属する輸出大企業に配慮しているのだろうか。これは、「原子力発電は安全だ」と、メディアも東京電力をはじめ電力会社に配慮した記事を書き続けたことと、何ら構造が変わらないことを示してはいないだろうか。

(大崎 明子 =東洋経済オンライン)


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