2011年7月12日火曜日

ストレステスト:安全を測るためではなく、「『安全』と言うためのテストか」?

九大工学部の工藤氏が先般「ストレステストをしても結果は変わらない」というような発言をされていたことから、薔薇っ子は、原発で実施されるストレステストの項目や手順がどのようなものなのかとても関心をもつようになった。

何か今までの日本の原発の安全審査にはなかった新しく、かつ厳しい審査基準をたくさん設けて、これまでなされてきた安全審査の在り方を根本的に覆すような査定を行うかのように思われたからである。

そのように単純にころっと騙されてしまったのは、先般ドイツがEU版のストレステストをした結果、対テロ対策に対して安全性を担保することができないと判断を下し、結局それが脱原発に踏み切る際の大きな判断材料の一つになったという報道が頭の片隅に残っていたからである。

日本でこの度実施されるストレステストに関して、今日のモーニングバードの報道によれば、

日本で実施されるストレステストの流れ

電力会社 ⇒ 保安院 ⇒ 安全委員会 という形で実施されるそうだ。

ちなみにEUにおけるストレステストの流れは、

電力会社 ⇒ 27か国の原子力規制機関 ⇒ 別の国の原子力の専門家

と大きな違いがある。

日本版のストレステストは、同じ穴のムジナである、東電と保安院さんと安全委員会さんが、ストレステストの項目の選定から基準の設定、手順、実施、評価に到るまで、何もかもを請け負うらしい。

IAEAへの報告では、今回のフクシマ原発人災事故の反省点の一つとして、保安院や安全委員会の組織の在り方を根本的に考えなおすということだったのではないのか?原発再稼働の条件となるテスト作成・実施・評価は東電を始めとする電力会社がすべて自社で行い、それを保安院と安全委員会が確認するというのだから、なにをかいわんやである。

人災事故の大元である東電と先般、日本の原発に対して安全宣言を出したばかりのお役所の面々がテスト結果を評価するのだから、「どこどこの原発はテストをした結果、安全ではなかった」などというような結論は、彼らのメンツにかけても、出てくるはずがないのである。

ストレステストは「『安全』と言う為のテスト」ではないかと番組の終わりに女子アナが指摘していたけれども、このテストには、何も新しいことは期待できないということは、原子力安全委員会の専門委員である奈良林氏の以下の発言からも明白である。

「ストレステストの調査項目や実施手順は、現在検討中であり,近日中に明らかにしたい。調査項目については今週中にも結論を引き出したい」と官房長官は宣うたが、本来ならば今日の時点ではまだ作成検討中であるはずのテストについて、安全委員会の奈良林氏が早々と次のように結論づけている点は実に興味深い。

http://jp.wsj.com/Japan/node_271489

 奈良林直・北海道大学大学院教授(原子炉工学)は「ストレステストが実施する検査の大部分は3月11日以降の安全性点検で既に実施されている。(後略)」 とみている。
             「日本政府、2段階の安全評価を実施―原発再稼働で」より



さて、以下は武田邦彦氏のストレステストについての言及である。
「ストレステストは実に馬鹿らしいことであり、国民がこのようなテストにごまかされるようでは、日本での原発はダメだ」と指摘し、ストレステストの問題点を以下のように指摘している。


その上で、氏はストレステストは今までやってきたことを、「名前を変えてハードルを上げたように見せかける卑劣な提案と思う」と述べる。つまりこれから新しい何かが始まるのではなく、ストレステストという名の、現政権延命のための茶番劇が新たに展開されると考えたほうがよさそうである。



http://takedanet.com/2011/07/post_8ef8.html
ストレス・テストの怪・・・誤魔化されるようなら日本はダメだろう

 原発再開のために政府は突如として「ストレス・テスト」というのを出してきた。


内容を聞くと「震度6の地震がきた」とか「10メートルの津波が来た」というように「危険なことが起こる想定」をして、その時に原発がどうなるかをシミュレーションで調べると言う。
・・・・・・
実にバカらしいことだ。このようなことで、もし日本国民が納得したら、やはり「日本では原発はできない」ということになるだろう。
この方法の欠陥は3つ
(1)   従来からの方法と変わらない
(2)   コンピュータは「現在想定していることしか分からない」
(3)   想定外のことが起こった福島原発の教訓が生きない
原子力発電所の大事故については、多くの研究や検討があり、普通は[シビア-・アクシデント]と呼ばれていた。
つまり、臨界事故や今回のような冷却が出来なくなる事故などは、大事故として予想されていた典型的なものだ。
それなのになぜ、今回のような大事故になったのだろうか?
・・・・・・・・・
沸騰水型の原子炉では、冷却水の循環は比較的、単純で原子炉の熱で直接、水を沸騰させて高圧の蒸気にして、それでタービンを回し、その後、熱交換機(復水器)を使って海水で冷却して、また原子炉の戻す.
この場合、たとえば次のようなことが起これば冷却ができなくなる。
1)  原子炉への配管が割れたり、外れたりする、
2)  タービンに異常が起こり、タービンからの蒸気を復水器に回せなくなる、
3)  復水器につまりが起こり、そこで冷却が停滞する、
4)  海水の推移が急激に下がり、取水口から海水を取水出来なくなる、
5)  循環ポンプが故障する、
6)  循環ポンプや電磁弁への電気が来なくなる、
7)  温度や圧力を測定する計装系に異常が起こり、たとえば冷却水が止まっているのに、冷却していると誤認して循環を止める、
8)  人間が非常時を誤って判断して、冷却を止める、もしくは冷却を止めるつもりはないが、スイッチを間違える。
・・・・・・
このような非常時の想定は幾らでもあって、どの異常は起こるが、どの異常までは起こらないという「想定」が必要である。
今回は、「3つの電源を一度に失うことはない」という前提(想定)があった。それは主電源、予備電源、非常用発電(ディーゼル発電)の3つを一度に失う「確率」がきわめて小さいと見られたからである。
ところが現実には電気は止まった。
原因は、2つ考えられる。
一つは:震度6の地震で配管が破壊された。もしくは冷却系に異常が起きた。
二つは:津波で電源が水をかぶった。
今のところ、どちらであるか分かっていない。事故が起こったことから考えると、どちらでも良いが、それが「想定外」だったからだ。
たとえば主電源、予備電源、非常用発電のいずれもが建屋の地下にあり、津波の水をかぶったということが原因と言われている.
もし、これが本当なら、なぜ「大雨」、「洪水」、「津波」など普通の災害を考えなかったのか?ということになる。
この「想定」をすれば「ストレス・テスト」ではなくても、普通の「安全性検討」で安全に疑問が生じるはずである.しかし、安全については東電内部の検討、保安院の審査、それに一般的な考え方についての安全委員会の了承は得られている.
これまでの「シビア-・アクシデント」の研究で、「洪水」が想定されていなかったとすると、ストレス・テストでも想定しないだろう。
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実は「安全」というのを守るためには「程度問題」との戦いであることが分かる。
「北朝鮮が原発を爆撃してくる」・・「そんなことは起こらない」
「大雨の時に従業員が建物の戸を閉めるのを忘れる」・・「水浸しになるまで誰かが気が付く」
など、
「こういうことが起こる」・・「そんなこと、起こらない」
というのとのせめぎ合いである。楽観的な人は途中でバカらしくなってくるし、悲観的な人は普通にはあり得ないところまで考える.だから、なかなかケリがつかない。
・・・・・・・・・
なにしろ、現在は東日本の原発は、青森の東通、宮城の女川、福島の福島第一、第二、茨城の東海の各原発が2011年の震度6で壊れ、新潟の柏崎、石川の志賀が2007年の震度6で壊れ、静岡の浜岡が自主的に停止している。
つまり、「震度6」の地震を乗り切った東日本の原発は皆無であるという現実もある。
一方、震度6以上の地震はここ10年で13回あったから、西日本に地震が起こるとほぼ間違い無く原発は壊れる。
震度6の想定もしていなかった。
それでも、「玄海原発の安全宣言」が出たぐらいだから、適切で今までの事故例を参考にしたストレス・テストの前提を作れるはずもない。
私は「ストレス・テスト」というのは今までもやっていることを、名前を変えてハードルを上げたように見せかける卑劣な提案と思う
もう少し誠意を持って欲しい。もし、政府が「原発は危ないけれど
電気がいるから動かす」というなら、そのように言って、住民をあらかじめ退避させるとか、救命ボート(バス、マスク、風向計)を準備するとかして、誠意を見せたらどうか。
(平成23712日 午後4時 執筆)

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