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【コラム】日本にはスマートな電力が必要
HEARD ON THE STREET
停電を回避するため、政府は、工場など東京電力の大口顧客に対し、7月1日から9月22日までの期間、平日の午前9時から午後8時まで使用電力の15%を削減することを義務付ける電力使用制限を発令した。そして、一般家庭を含む他の顧客にも同様の節電努力を求めるとともに、東北電力の顧客にも同じような使用制限を定めた。これら2つの電力会社が電力を供給する地域を合わせると、日本の経済規模の半分近くを占めている。
しかし、7月1日以前にも行われていた節電努力の一部はそれほどスマートとはいえない。例えば、ハンバーガーレストランやデパートは閉店時刻を早めたりしているが、実際には夏の電力需要はもっと早く午後4時頃にピークとなる。消費者にとって支出機会の減少は必要ではなく、また、そうやって節約した電力は水のように翌日に持ち越せるわけでもない。
需給バランスの改善には、携帯電話通信サービスや航空会社のように、時間帯により異なる価格体系を採用して、使用量を需要の低い時間帯にシフトさせる方法がある。米大手コンサルタント、ブラトル・グループの報告によれば、高機能なスマートメーターと電力使用量を顧客が確認できるディスプレイを組み合わせることによって、電力需要を20%削減できる。メーターに価格面での奨励策を組み合わせると、一層の節電も可能だ。
すでにスマートメーターを導入している国もある。ニュージーランドでは2010年にスマートメーター導入率は全体の約3分の1程度だったが、2013年末にはそれを80%まで拡大する予定だ。韓国では昨年の導入率は14%だったが、向こう10年間で100%とする計画だ。
だが、日本ではまだスマートメーターは試運転を始めたばかりで、料金差はほとんどない。東電管内の家庭と小口需要家のうち、夜間に料金が下がる変動料金制度を使っている顧客は5%未満に過ぎない。残りは、使用時間帯に関係なく同一料金が課金されている。
長い目でみると、日本は、競争促進と、太陽エネルギーなど再生可能エネルギー導入のため、電力会社の送電部門と発電部門を切り離す必要がある。また、配電と発電の効率を改善するため、スマートグリッドの構築も急ぐ必要がある。韓国では、スマートグリッドによって最終的に電力需要を10%削減できると推定している。
さらに、日本では東日本と西日本の間の電力の融通を増やすことも必要だ。東日本と西日本では電力周波数が異なるため、緊急事態には変換器が必要となる。
日本には、電力問題を解決するための道具は揃っている。だが、それを使う知恵があるかどうかが問題だ。
[ハード・オン・ザ・ストリート(Heard on the Street)は1960年代から続く全米のビジネス・リーダー必読のWSJ定番コラム。2008年のリニューアルでアメリカ、ヨーロッパ、アジア各国に 駐在する10人以上の記者が加わり、グローバルな取材力をさらに強化。刻々と変わる世界市場の動きをWSJ日本版でもスピーディーに紹介していく]
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