2012年9月28日金曜日

さようなら、たね蒔きジャーナル:風化されしつつある原発災害


 今日で、毎日放送ラジオのたねまきジャーナルがとうとう終了することとなった。番組取り潰しに義憤の念を抱いている視聴者も少なくないはずである。薔薇っ子も度々ブログに書いてきたが、このような良心的な番組が姿を消し、深刻な原発問題が、意図的に、我々一般市民の視界から日々見えにくくされていくことに、大きな不安を感じずにはいられない。

 水野さん、近藤さん、番組作成者の方々、さまざまな圧力に耐えつつも、信念を持って今週まで番組を続けてきたことに感謝したい。そして、小出さんのような方が原子力研究者の中にもいたことに唯一の救いを覚えるのは、薔薇っ子だけではあるまい。

このような事態への対応として、市民がスポンサーとなる番組を作ることも重要だが、視聴者は、真実の報道を行わないような大企業のひもつき新聞や、一億総白痴を推進するような不良電気紙芝居に対する、ボイコットなど、もっともっと声を大にして発信していくべきではないのか。


http://hiroakikoide.wordpress.com/tag/%E3%81%9F%E3%81%AD%E8%92%94%E3%81%8D%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AB/


9月25日 『番組(たね蒔きジャーナル)はつぶされた。ここ1、2ヵ月の毎日放送とのやりとりを考えるとこれまで通りのお付き合いを続ける気持ちにはなれない。』小出裕章(サンデー毎日)

2012年9月25日【サンデー毎日2012年10月7日号】にて、ラジオ「たね蒔きジャーナル」に関する小出裕章さんのコメントが掲載されていますので、このブログでも共有させていただきます。
情報元は「薔薇、または陽だまりの猫」です。
以下、情報を引用いたします。
▼引用元:2012年9月26日【サンデー毎日】存続願いカンパ1000万円超でも…ラジオ「たね蒔きジャーナル」が終わる理由
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/002e98bf6c663a3589ffd31697d24b0d
=====(引用ここから)=====
 関西の一ラジオ奮組のために、全国各地の市民が立ち上がった。存続を願って集まった多くの署名と寄付金。 しかし9月末での終了が決まり、賛同者からは落胆の声が漏れる。
 「大きく取り上げられるニュースを、『たね』の時から、注目し、届けよう」
 このモットーが番組名の由来となった、毎日放送(MBS、大阪市)の「ラジオ・ニュースたね蒔きジャーナル』(月~金、午後9~10時)。2009年10月に始まったが、番組が一躍脚光を浴びたのは、昨年の東日本大震災に伴う福島第1原発事故以降だ。京大原子炉実験所の小出裕章助教が事故直後から出演を重ね、事故の推移や放射能汚染について分かりやすく解説した。
 テレビや新聞が「ただちに健康に影響はない」と政府発表を繰り返す中、昨年3月14日の時点でメルトダウンに言及し、かつて喧嘩をしてきた」という東京電力に対し「何とか頑張って水を送り続けてくださいと、私はお願いしたいのです。それ以外にできることはないのです」と発信。また、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の公開前から、風向きを考慮した避難の重要性を訴えた。
 小出氏の話は動画投稿サイトにもアップされ、番組の聴取者はMBSの放送エリアどころか国境を越えて広がった。東京在住の筆者のもとにも、関西の知人から同番組の内容をまとめたメモが日々メールで送られてきたほどだ。
 原発事故報道の姿勢と信頼感はジャーナリズムの世界でも高く評価され、今年3月には毎日放送ラジオ局番組センター東日本大震災取材制作班が、第19回坂田記念ジャーナリズム賞特別賞を受賞する。ラジオ番組の受賞は、初の快挙だ。
 しかし、7月下旬から番組終了のうわさがネット上で流れ始め、8月に入ると『朝日新聞』や『東京新聞』も報じた。経費削減問題が示唆されたため、ノーギャラ出演の申し出や市民スポンサーの寄付を募る運動もスタート。原発報道の立役者たる小出氏自身も呼びかけ人となり、毎日放送に存続を申し入れた。無料出演に応じる賛同人は、浜矩子・同志社大大学院教授や作家の雨宮処凛氏ら計78人(9月15日現在)、寄付金は1003万4500円(同19日現在)に上った。
 が、9月19日、毎日放送は番組終了を正式に発表。小出氏は「国、電力会社などが一体となった原子力の大本営発表のもと、少しでも事実に近い情報を流し続けてくださり、ありがたく思いました。さらに、毎日放送が聴けるエリアだけでなく、世界の多数の視聴者から、これだけ愛された番組もなかったはずと思います」と、ネット上の声明で惜しむ一方、番組は「つぶされた」と憤った。
 そして、あくまで「個人的な感情論」と断った上で「ここ1、2ヵ月の毎日放送とのやりとりを考えると、これまで通りのお付き合いを続ける気持ちにはなれない。とりあえず私は当面、毎日政送に出演するつもりはありません」と話す。
 こうした声に対し、毎日放送は終了の理由を「10月からワイド番組『with・・・夜はラジオと決めてます』が始まるため」(広報部)と説明する。さらに「新番組は『たね蒔き』を作ってきた報道部門の全スタッフに加え、新たにスポーツや編成スタッフも加わり、ラジオ局が一丸となって取り組むもの。小出氏ご本人の了解が得られるのであれば、当社としては内容によって出演をお願いする予定です」(同)と理解を求める。
 放送局として番組改編があるのは当然だ。ただ一方で、ここまで支持され、評価された番組をなくしてしまうことに、支援者らは首をかしげる。背景には一部メディアで報じられた金銭的問題があるのか、あるいはスポンサー側の意向があったのか。毎日政送は「番組制作費削減のために終了するというような事実は全くありません。また、番組のスポンサーは大阪の不動産会社で、終了との関係は全くありません」(広報部)と強く否定する。
 集まった1000万円超の寄付金については「お気持ちは大変うれしく思いますが、報道機関として中立性を守るために、当社が寄付金を受け取ることはあり得ません」(同)と言う。
 事実、8月27日と9月7日、小出氏らが寄付金を持って毎日放送に出向いたが、同社は受け取っていない。
「ラジオの発展形、見た気がする」
 では、宙に浮いたカンパはどうなるのか。募金などの事務局「すきすきたねまきの会」で活動する、反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠氏は「返金を求める寄付者もおり、手元に残るのは1000万円を切る」と前置きし、複数の使い道を示唆する。
 例えば▽他局で『たね蒔きジャーナルプラス』といった番組を始める▽東日本大震災被災地のコミュニティーFM局に寄付する▽良質な報道番組を顕彰する基金を設立するーーといった案。思い描いているのは、ラジオ番組の新しい形だ。
 「『たね蒔き』はマスメディアの一番組でありながら、独立系メディアのように市民の熱い支持を得ていた。マスか独立系かという二項対立に収まらなかったことに、ラジオの発展形を見た気がします。たやすくはないが、何か新しいことに挑戦できればと考えています」
 また、「たね蒔き」存続の呼びかけ人だった一人、諏訪中央病院(長野県茅野市)名誉院長の鎌田實氏も同様の考え方と、存続運動の先の”光” を語る。
 「あらゆるメディアがインターネットに侵食される時代、大企業がCM枠を買って番組の色を左右する形態には、無理が生じ始めています。市民がスポンサーとなり、多様な意見を発信するメディアを提示することは、昏迷の時代、ますます必要とされるのではないでしょうか。『たね蒔き』は、私たちにそのきっかけをくれました」
 番組最終政送日の9月28日、存続運動に携わった人たちはラジオ持参で毎日放送前に集結する。「その時までには寄付金の使い道に見通しを立てたい」(前出・湯浅氏) 。
 東日本大震災後、インフラの途絶えた被災地での情報のよりどころとして、あるいは静かで小さな生活を考え始めた人たちの情報の窓として、改めて見直された「ラジオ」という存在。
 その象徴的な番組の一つは終わるが、蒔かれた「たね」が一つでも新たな花を咲かせるといい。

          本誌・菊地 香
=====(引用ここまで)=====


2012年9月28日
2012年9月26日(水)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。


2012年9月23日日曜日

原発デモはいかに報道されているのか?

反原発デモの声がjどんどん大きく広がっている。しかし、日本のメディアはどれぐらいそれを伝えているのか。

 反原発を主張し、日本の大型メディアを批判し続けてきた反骨のジャーナリスト上杉隆氏の攻撃を意図したブログを以下に転載する。

ここでは、9月19日の反原発デモ報道を行った、9月20日付けの朝日、毎日、読売、日経の4紙をとりあげ、上杉氏の「日本の新聞・テレビは、自分たちに都合の悪いデモは報じない」という発言に根拠がないということを検証・批判しようと試みている。

 しかし、上杉氏やフランスのル・モンド社は、もとより新聞やテレビが全く反原発抗議報道をしないなどと言っているわけではない。

一人一人数えたわけではないので、主催者発表の参加者数が正しいのか、警察発表の数字が正しいのか私にはどちらが正しいとは言えない。

しかし首都に警察発表でも、少なくとも3万人もの人間が集結して、反原発の抗議行動をとっているという歴然たる事実があるにもかかわらず、メディアは他のニュースに比して、これを申し訳け程度にしか取り上げていないこと、大型メディアで番組や紙面の編集権を握っている報道局の経営陣やジャーナリストの報道に対する姿勢を、氏やルモンド社の記者は、鋭く批判しているだけのことである。

首都にどんなに少なく見積もっても3万人もの人間が集結して、抗議行動を行ったのである。しかも、たった1日のために3万人が集まったわけではなく、この抗議行動は、酷暑の日も、大雨の日も、毎週金曜日に欠かさず続けられているのである。

そのことが、新聞であれば、どのくらいの紙面を割いて報じられているのか、新聞紙面のどのページのどの部分に記載されているのか、ウエブ・ニュースであれば、どれぐらい多く、継続的にウエブ上に記載されているのか、テレビであれば、どのような時間帯に、どれだけ長い時間、何度繰り返し報じられたかが問題である。


CMよりもはるかに短いほんの20秒かそこらの時間に、1度ちらっと説明しただけでは、紙面の片隅に申し訳程度に小さな記事を載せたところで、読者・視聴者は、よほど耳を済まし、目をとんがらせて、新聞の隅から隅までを読みつくし、早朝から深夜までテレビを見ていない限り、報道されたことに、気づくことすらできないからである。


もちろんどんな内容がどのような論調で解説されたかということも、重要である。

たとえば、日経新聞は、拡大されているので、大きく見えるが、実際こんな小さな記事の中で、原発抗議行動の内容については全く触れず、デモの主催者側は参加者を6万人といっているが、警察発表では3万人であったという点がわざわざ記されている。

また読売新聞は関係のない記事まで一緒に切り抜かれているので、大きな記事のように見えるが、実際は20行しかなく、そのうちの半分の紙面を割いて、福島出身の女性の「福島を忘れないで欲しい」というような反原発に対する抗議からはかなり論点のずれた発言をことさら取り上げているのである。

 さらにグーグルの検索で、デモのニュースをググってみたら、NHKは9月18日の北京でのわずか300人規模の反日デモを馬鹿でかく取り上げており、その後も繰り返し大きく反日デモのニュースを取り上げている。

興味深いことに、ほぼ同じ時期に日本で行われた3万人規模の反原発デモに関するNHKウエブニュースはヒットしなかった。朝日新聞のウエブ版の社説が、9月19日の反原発抗議デモについて取り上げていたようだが、23日の時点でこの記事は、早々と削除されている。

このようにメディアの原発関連のウエブ記事は、わずか数日で削除されてしまうことが多い。都合の悪い報道はしないと言われる所以である。

http://www.youtube.com/watch?v=mxVGJCoasoI

#NHK BBC CNNは #反原発 デモ一切報道せず。


報道する外国メディアはどこか?




http://www.youtube.com/watch?v=CBGWW2XeGfw


ドイツZDFテレビニュース「脱原発を求める日本人」

~東京9月19日6万人デモ





http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120918/t10015090041000.html


中国各地で反日デモ 北京は3000人超
9月18日 11時56分


http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120919/k10015123751000.html


中国 反日デモ数か所で小規模に
9月19日 12時25分




http://www34.atwiki.jp/ddic54/pages/16.html
上杉隆氏についての検証
9月19日反原発デモ報道



【脱原発デモの報道について】

たとえば原発事故の後には、インターネット発の6万人デモ(※1)が日本でも起きています。ところが、日本の新聞・テレビは海外のデモは報じても、自分たちに都合の悪いデモは報じないのです。

(※1)インターネット発の6万人デモ 2011年9月19日、ノーベル賞作家大江健三郎氏らの呼びかけで東京・明治公園に集まった6万人の参加者が、脱原発を訴えるデモを行った。
『大手メディアが隠す ニュースにならなかったあぶない真実』(210頁


  検証結果:デモは各紙で報じられていた。

朝日新聞9月20日朝刊

読売新聞9月20日朝刊

毎日新聞9月20日朝刊

日経新聞9月20日朝刊





http://gendai.net/articles/view/syakai/137721
日本の大メディアはなぜ反原発デモを報じないのか

【政治・経済】

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2012年7月23日 掲載
<先週も当局の規制に緊迫場面>

 毎週金曜日に首相官邸前で行われる原発再稼働反対デモ。集う人々は膨れ上がる一方で、16回目となった今月20日にも9万人(主催者発表)が集まった。
 もはや、民意のうねりは安保闘争並みだが、これをきちんと報じるメディアはごく一部だ。20日は鳩山元首相がやってきて、拡声器を握った。毎日や読売、日経はそれをキワモノ扱いで小さく報じただけ。NHKは脱原発10万人集会(代々木公園=16日)まで、デモを全然扱わず、ついに仏ルモンド紙にこんなふうに書かれてしまった。
〈日本ではデモの習慣は失われていたが、1カ月前から毎週金曜日の夕方、総理官邸の前で原発反対の抗議デモが行われている。デモの参加者は回を重ねるごとに増えている。しかし、国内の主要新聞の扱いは非常に小さく、NHKはこれを完全に無視している〉
 外国メディアにとっては、これだけのデモを報じない大メディアの姿勢の方がニュースなのだ。
 ルモンドの報道は外務省のホームページも取り上げられ、そうしたらNHKは慌てて「デモの参加者増の背景は?」(20日)なんて、“小特集”を組んでいた。
 こんなメディアばかりだから、もちろん、先週の金曜日にあった“小競り合い”も報じていない。
「デモが終わり、8時過ぎには整然とみんな、帰り始めました。ところが、官邸前の交差点にはバリケードが張られ、目の前にメトロの入り口があるのに何百メートルも迂回させようとするのです。誰かが“なぜだ”“みんな静かにやっているじゃないか”と言い出し、そうしたら、自然発生的に“開けろ”“開けろ”コールになった。警官が本部と連絡し、鉄柵は撤去されたんですが、脚立に飛び乗った男がいて、バシャバシャを撮っていた。あの人、公安ですかね」(参加者のひとり)
 デモ隊=危険分子とでも思っているんじゃないか、この国の当局や大マスコミは。フランス在住のエッセイスト、中島さおり氏はこう言った。
「フランスで、この規模のデモが起これば大ニュースになります。デモは政権に対し、民意を直接示す行動で、民主主義においては極めて重要だからです。メディアはデモで示された民意がどれだけ強いのかを報じる義務がある。人数はもちろん、時には実況中継もやります。日本のメディアがあまりにもデモを報じないことに驚いています」
 メディアが民意ではなく政権の方を向いているのだからどうしようもない。

2012年9月22日土曜日

国の代表者たる人物の資質とは?:日本、アメリカ、韓国

 韓国では安チョルス氏が、大統領選挙に出馬することになったという、まごころの政治をスローガンに出馬する安氏は、ソウル大学の医学部の教授であるのみならず、アメリカのペンシルベニア大学でMBAもとり、IT企業を立ち上げ成功した企業家でもある。

企業家と言っても、日本の大企業の経営者にような既得権益にしがみつき、国民がどうなろうが、企業の金儲けのために強引にカネと権力を行使する人物ではない。安氏は自らアンチ・ウィルスソフトを開発し、それを無料で配布するような人物である。日本では若者に人気があると伝えられているようだが、韓国では年齢に関係なく、大変な支持を得ていると聞く。

 一方、アメリカのオバマ氏も、日本にとってはTPPといい、基地問題といい、理不尽な要求を強引に突きつけてくる、たいして有り難くない大統領だ(むろん保守的な共和党の代表よりはましかもしれないが)。しかし、自国民のためには、困難な選挙公約を在任中に次々と果たし、僅かな期間の間、アメリカ国民のためにかなり貢献したのではないかと評価できる。

むろんアメリカの世論のなかには、大統領が経済を好転できなかった責任は重大だという異論もあることは十分に承知している。しかし、そもそもイラク戦争とリーマンショックで、あれだけひどく疲弊したアメリカの経済を、アメリカ大統領一人の力で、わずか4年の短い時間のうちに立て直すなどということは、常識的に考えて無理な話である。

「経済がよくならないから、大統領として失格」というのは極めて単純かつ短絡的な考え方であり、大統領就任時にリンカーンを強く意識して国民による国民のための政治を目指したオバマ氏が、仮に今度の選挙で共和党に破れるとすれば、それは彼自身の力量不足というよりかは、むしろブッシュ共和党政権の尻拭いをするという貧乏くじを引いてしまった、不幸な巡りあわせの結果としか言いようがない。

 日本ではあの野田氏が民主党の総裁として大勝した。これだけ国民から不信任の声が日々強まっているなか、過半数以上の党員が野田氏を選出したという事実は、民主党が何を見て動いている政党であるかを端的に表している。

経団連や経済同友会の会長や大型メディアの社主やアメリカがNoといえば、昨日決めたはずの脱原発を、一晩のうちに反故にするなどといったことを、平気の平左でやってのけるのが、現民主党の閣僚たちである。

むろん問題は民主党だけにあるわけではない。民主党といい、自民党といい、維新の会といい、党利党略の政治しか志向しない連中ばかりで、全く嘆かわしい限りである。

自民党総裁の座を狙う候補者はといえば、揃いもそろって右傾化した2世議員ばかりで、親の七光りで知名度を上げたに過ぎない世襲議員を好んで取り上げ、ちやほやしてきたのが日本のマスメディアである。

特に、自民党は、これまで営々と電力・原発関連企業から多額の政治資金を得てきたことや、官僚主導の悪政(弱腰外交、原発推進政策、年金、農業、経済政策)を主導してきたがために、にっちもさっちもいかなくなってしまった失策の責任を、国民の前で詫びて、出直すという発想すら持てないような御仁ばかりである。

 他方、維新の会はといえば、奇をてらうような発言ばかりを繰り返し、メディアに持ち上げられて追い風に乗っているとはいえ、結局大阪、名古屋、横浜などの大都市ばかりが潤い、それ以外の地方や、働けない高齢者を容赦なく斬り捨てる弱肉強食の社会づくりに拍車をかけるだけである。
票集めに貢献できるような人間を巧に寄せ集めてはいるものの、国民目線の政治からも、真心の政治からも程遠い。

口先三寸のご都合主義で、脱原発と主張しながら、舌の根も乾かぬうちに前言をころころと覆すところなどは(結局それが大きなきっかけとなって大飯原発の再稼働が決定してしまったわけであるが)、民主党とそっくりである。

悪知恵と権力欲と詭弁を弄すること以外は空っぽで、しっかりした哲学もビジョンも、卓抜した知性も品性もないような彼らは、誰一人をとっても、明らかに国の代表としての資質を欠く。

そんな彼らが、国際社会で敬意を持って評価されるはずもない。

彼等がどう評価されようが、それは彼ら自身の問題であるが、彼等が国の顔となり、それが国の評価に直結することを、我々はもっとしっかり認識しておかなければならない。

以下講談社「現代ビジネス」に掲載された長谷川幸洋氏の記事を転載する。


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33597

「現代ビジネス」
長谷川幸洋「ニュースの深層」
「近いうちに解散」「シロアリ退治」「原発ゼロ」ーーー約束を平気で次々に破る野田佳彦という政治家の本質
                    2012年9月21日(金)


野田佳彦首相が「秋の解散」先送り発言を繰り返している。
 9月19日のテレビ朝日系列「報道ステーション」では「『近いうち』と言ったのは事実。ただし、それは内閣不信任案と問責決議という野党にとっての異議申し立てを放棄するという前提での話だった」と述べた。そのうえで自民党総裁選の後、新しい総裁と「3党合意をどうやって実現していくのか腹合わせして、今後のスケジュールを考えたい」と語った。
 私は先週のコラムで「10月解散の話は消えた」「野田は党代表に再選されれば、新しい自民党総裁と党首会談を開いて、3党合意やその先にある連立の可能性について突っ込んだ協議をする運びになるだろう。解散に踏み切るかどうかは会談の結果次第だ」と書いたが、まさにその通りの展開になった。

谷垣との約束を一方的に破った野田

 注目されるのは、野田が谷垣禎一自民党総裁との会談の中身に触れた点だ。近いうち解散の約束は「内閣不信任案と問責決議の放棄が前提だった」と暴露している。先週のコラムで書いたように、谷垣は「会談について外に出すのは『近いうち』という部分だけにする、と合意した」と語っている。そうだとすると野田は今回、この約束も破った形になる。
 ここが、むしろ重要だ。政治家同士の密約で中身と公表の仕方は表裏一体、ワンセットである。野田は公表の仕方について谷垣との約束を一方的に破ったのだから、合意の中身についても、もはや「守る理由はない」と考えているとみて間違いない。
 野田が暴露したように、もしも谷垣が本当に「近いうち解散」と引き換えに内閣不信任案と問責決議を封印する約束をしていたなら重大だ。言うまでもなく、野党にとって最大の武器は内閣不信任案、次いで問責決議である。この2つを封印するなら、いわば完全武装解除したのと同じになる。戦う前から政局のイニシアティブを敵に渡したも同然だ。「あなたを信じますから、私は武器を捨てます」という話なのだ。
野田の話が本当なのかどうか。もし違うなら、谷垣は堂々と反論すべきだ。だが20日夜になっても、谷垣サイドから何も反論が出ていないところをみると、どうやら谷垣は武装解除を本当に約束していたのかもしれない。そうだとすると、野田に封印を約束しながら結局、野党7会派が提出した問責決議に同調したのだから、谷垣もブレにブレた格好である。これでは野田のほうが一枚上手と言わざるをえない。
 いずれにせよ、自民党新総裁との話し合い次第の面はあるが、これで10月解散話はいったんリセットとみるべきだ。

野田という政治家の本質とは

 野田は「2030年代に原発稼働ゼロ」というエネルギー戦略の閣議決定も見送った。今回の「近いうち解散」先送りと原発ゼロ閣議決定の見送り、さらに5月25日コラムで紹介した消費税をめぐるシロアリ発言を合わせて考えると、あらためて野田という政治家の本質が見えてくる。
 野田はどうして、こう次から次へといったん口にした約束を平気で破れるのか。その謎が解けてきたような気がするのだ。それは、こういうことではないか。
 野田にとって発言や政治行動はあくまで、その場の状況に合わせたものなのだ。状況が変われば、全体の判断も変わり、したがって発言も行動も変わる。それで何の問題もない。不都合とも思わない。野田はそういう政治家である。
 野田にとって重要なのは、いつでも目の前の「状況」である。選挙の時は自分が当選する。それがもっとも重要な「自分が置かれた状況」だったので、当選するには「消費税を上げる前にシロアリ退治をします」と約束する。それはそれで、もっとも合理的なセリフになる。
 次に谷垣との会談では、野田の最優先事項は消費税引き上げ法案の成立と、できれば内閣不信任案や問責決議の提出阻止だった。増税法案成立だけでも十分だったはずだが、欲張って不信任案と問責決議の封印を持ち出してみたら、なんと谷垣はそちらも同意してしまった。それなら、まったく文句はないので「近いうち解散」を約束した。野田の言い分が本当だとすれば、そういう話になる。
 だが後になって、谷垣自民党が問責決議に賛成するという「新しい状況」が生まれる。すると野田の判断も変わって「いまや前提が崩れた。新総裁と話し合ってみなければ分からない」という話になる。

官邸を取り巻く数万人の群衆は予想外

 原発ゼロも同じである。当初は霞が関(とせいぜい経済界)の風景しか目に入っていないから、経済産業省の言い分にしたがって関西電力大飯原発の再稼働を決めた。将来のエネルギー戦略についても、経産省まかせで「2030年原発ゼロ案」「15%案」「20~25%案」という3つの選択肢を用意し、真ん中の15%案への着地を狙っていた。ほぼ同時進行で、これまた霞が関まかせで原子力規制委員会の露骨な原子力ムラ人事を内定した。
 ところが毎週末の首相官邸前抗議行動が象徴するように、脱原発世論と原子力ムラ人事への批判が高まると、野田にとって状況が変わる。反対派の抗議を「大きな音」などと口が滑ったが、官邸を取り巻く数万人の群衆は予想外の「新しい状況」だったのだ。
だから、あわてて軌道修正を図る。さすがに大飯原発は止められないでいるが、15%案はあきらめてゼロ案に傾く。原子力ムラ人事は国会同意をあきらめ、首相権限での任命という非常手段に訴えざるをえなくなった。それはたしかに乱暴だが、むしろ野田がそれほど追い詰められていた、と理解すべきである。批判が効いたのだ。
 ゼロ案を公表してみると、当然なのだが、経済界や原発立地県、青森県などから猛烈な反発を浴びた。それがまた野田にとって「新たな状況」になる。すると、今度は閣議決定の見送りに舵を切り換える。
 もう1つ、例を挙げよう。野田は先の番組で12月訪ロ予定について「11月までは次官級、外相級の会談があるので、総理が訪ロするなら12月になる。だから12月訪ロ希望を言った。それと解散時期の話は関係ない」と説明した。これも同じだ。
 プーチン大統領を目の前にして、野田の視野には「日ロ交渉をどう進めるか、という状況」しか入っていない。解散は関係ないのだ。だから12月訪ロという答えがスッと出てくる。ところが、もちろん現実には訪ロだけでなく解散をどうするかという問題がある。
 特例公債法案の成立が見通せないなど政権が行き詰まって解散せざるを得なくなると、今度は解散不可避という「新しい状況」が目に入ってくる。そこでは12月訪ロの約束など、どこかに消え失せてしまうに違いない。そのときは日本人だけでなく、プーチンまでがあっけにとられることだろう。

野田は信念の政治家ではない

 以上のように徹頭徹尾、野田の行動原理を支えているのは、常に目の前の状況である。状況に応じて対応するのが「悪いことだ」とか「信念に反する」といった考えは初めからない。もともと信念など持ち合わせていない。むしろ「状況に応じて柔軟に対応するのが政治家の手腕、力量」と考えているのではないか。
 これに対して、普通の人々は「政治家は信念にしたがって行動し、理想を実現するために政治活動をしている」と思っている。野田のように自信満々で「シロアリ退治」を訴えられると「その通りだ。彼は信念の政治家だ」と勘違いしてしまう。人々は「政治家は信念で活動してほしい」と願っているから、そういう風に演じられると、つい「信念の政治家」と思い込みたくなってしまうのである。
 自分が願うように現実を理解する。これは日本社会のいたるところで見受けられる。日本人の悪い癖だと思う。最近の一例を挙げれば、環太平洋連携協定(TPP)への態度もそうだ。TPP反対論者は野田が昨年、TPP交渉について「参加に向けて協議する」と表明したら「あいまいだ」とか「参加はとんでもない」と批判した。
 日本が「参加に向けて協議する」と表明したところで、相手が参加を認めるとは限らない。当たり前だが、参加できるかどうかは相手次第の面が半分、あるのだ。現に共和党のロムニー大統領候補は交渉が減速する懸念があるので、現段階での日本の参加に反対している。とにかく交渉反対という立場の人はともかく、新聞や識者が野田の言い方をあいまいと批判するのは、自分の都合でしか物事を判断しない視野狭窄である。
 脱線した。
 野田は信念の政治家ではない。そうではなく、その場の状況に対応する政治家だ(こういう人を「政治家」と呼ぶのはためらうが)。その場しのぎの人である。多くの人が「政治家は信念の人」であってほしいと願うのは勝手だが、間違ってはいけない。政治家も人それぞれだ。実績と行動で正しく判断すべきである。
 野田には初めから信念だとか、実現すべき理想のようなものはない。あったとしても、それは「床の間の掛け軸」のようなものだ。あれば格好よく収まりもいいが、別になくても困らない。邪魔になれば、いつでも外す。その程度なのだ。
 そう考えると、野田の政治方針はこれからもコロコロ変わる、とみて間違いないだろう。いまや野田の脱原発路線はほとんど風前の灯火だ。だが、たとえば次の選挙で落選すれば、またまた脱原発を言い始めるかもしれない。あるいは「消費税引き上げは間違っていた」とさえ言うかもしれない。
 こういう政治家が内閣総理大臣にまで昇り詰めた事実に脱力する。しかし、それが日本の現実でもある。










Shame on You, MBS (Mainichi Broadcasting System, Inc )!!

 MBS(毎日放送)の「種まきジャーナル」が9月28日を最後に打ち切られ、スポーツ、音楽、グルメ中心の番組が始動することになったという。

ラジオ放送が衰退する中で、種まきジャーナルは、さまざまな問題に鋭くメスを入れ、問題提起を行った。電気紙芝居や大本営発表に洗脳されない、意識の高い視聴者によって支えられ、愛される稀少なラジオ番組でありつづけた。

このような日本の民放放送番組の「最後の砦」ともいうべき種まきジャーナルが、圧力に屈して、多くの視聴者からの要望に応えられなかったことは誠に遺憾である。

政府や大企業に都合の悪いニュースを報道をする時には、視聴者の問題意識が湧き立つ前に、すばやくCM、スポーツ、グルメ報道に移し換えて混ぜ返す、くだらないお笑い芸人のだじゃれやおふざけで茶化してしまうなど巧みな手法で、視聴者の思考力を完全に奪いとり、「聞かない、直視しない、考えない」の「一億総白痴化」にみごとに成功した日本のマスメディアの罪は大変深い。 

こんな世の中だからこそ、MBSの経営陣には、種まきジャーナルという、日本のジャーナリズムの良心を象徴する最後の砦を、徹頭徹尾死守すべき大きな社会的責任があったと薔薇っ子は考える。

http://www.youtube.com/watch?v=gHyPWJWKa8w


2012年09月19日【水】たね蒔きジャーナル・番組終了について~感謝と思い


 
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 さんが 2012/09/19 に公開
2012年09月19日【水】たね蒔きジャーナル・番組終了について~感謝と思い
12:42 京都大学原子炉実験所 小出裕章さんの解説
◆たね蒔きジャーナル番組終了について~感謝とそれぞれの思い。
☢IAEA総会:「原発ゼロ」日本説明 見直す可能性も強調
毎日jp(毎日新聞)
http://bit.ly/OEJCCq
☢IAEA:プルトニウムの扱い注視 日本の新エネ戦略で
http://bit.ly/OEJSS3
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33:47 原子力規制委員会がきょう発足~そのメンバーは、どんな人?
きょう、原子力の安全規制を担う新たな組織、「原子力規制委員会」の委員が野田総理に任命され、発足しました。
規制委員会はほかの省庁からの影響を受けにくい、独立性の強い組織とされています。
 では、その「委員の独立性」はどうなのでしょうか?
原子力を推進する官庁や、原子力事業者・メーカーなどの機関・組織から、十分に独立している「中立な人物」が選ばれたのでしょうか?
 今日は、慶應義塾大学経済学部教授の金子勝さんにご出演頂き、委員がどういった略歴を持っている人達なのか、などを詳しく解説してもらいます。
 また、京大原子炉実験所の小出裕章さんには、
最近の気になる原発関連の報道について、お伺いします。

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2012年9月19日【水】水野晶子のひとり言
感謝をこめ
「たね蒔き」は9月いっぱいで終了となります。
これまでの3年間、リスナーの皆さんと一緒に
番組を作ってこられたことを
本当に感謝しています。
「たね蒔き」の主役は、リスナーの皆さんの声です。
私はその代弁者として、様々な問題の当事者や
専門家に質問をすることを心がけてきました。
ずっと支えてきてくださって、
ありがとうございます。
これまで正式に決定されるまで
多くの応援メールを頂きながら、
何も申し上げられなかったことを申し訳なく思っています。
頂戴したおたよりすべてを読ませていただき、
おひとりおひとりにお礼を申し上げたい気持ちでいっぱいです。
ありがとうございます。

水野クリスタル http://bit.ly/OERF28

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MBS1179『たね蒔きジャーナル』終了の公式発表
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2012年秋の改編について
http://www.mbs1179.com/201210/

毎日放送「たね蒔きジャーナル」打ち切りに抗議して、
すみやかな番組復活を求めます。
http://www.news-pj.net/
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■声明文 - すきすきたねまきの会 http://bit.ly/PHr1Rw

小出裕章さんからのメッセージ

「たね蒔きジャーナル」では、昨年3月14日以降、大変お世話になりました。

 国、電力会社などが一体となった原子力の大本営発表のもと、少しでも事実に近い情報を流し続けてくださり、ありがたく思いました。

 そして、私がありがたく思うだけでなく、「坂田記念ジャーナリズム賞」を受賞したことで、業界内部でも評価されました。

 さらに、毎日放送が聞けるエリアだけでなく、世界の多数の視聴者から、これだけ愛された番組もなかったはずと思います。

 それを潰すのであれば、しっかりした説明をしてくれるよう毎日放送にお願いしてきましたが、残念ながら私が納得できる説明は得られませんでした。

 ジャーナリズム、報道の本来の仕事を守ってきた「たね蒔きジャーナル」が潰されたことを心から残念に思います。

2012年9月19日 小出 裕章

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2012年9月15日土曜日

規制庁の田中さん、4号機の問題を黙って放置するのですか?

 19日鳴物入りの規制庁がとうとう発足した、あの頼りがいのある保安院さんがほとんどみなさん横滑りで規制庁に入庁なさったという。なんという税金の無駄遣いだろう。原子力ムラに対して、脱原子力ムラもあると反発していた田中氏は、ここに来て原子力ムラというレッテル貼りをしないで欲しいと反発したそうである。あの原子力委員会の委員長代理まで務めておきながら、何が原子力ムラではないのか。

 原子力ムラかそうでないかなどの、くだらない弁明をしている暇があれば、現地に毎日出かけて4号機の問題を一刻も早く収束すべく現場の指揮・監督に勤めるべきではないのか。東京から高見の見物をしているだけでは現状把握さえ十分にできまい。

以下は、元スイス大使の村田光平氏の4号機の危険についての記事を転載する。このテーマについては、米上院議員ワイデン氏の報告として今春、このブログでも取り上げたが、日本の元政府筋の有識者が、メディア向けに発信したという点で大変意義深く、再度取り上げておきたい。



「現代ビジネス」
永田町デープスロート

脱原発を訴える「反骨の外交官」が緊急寄稿!
村田光平「新たな一大汚染の危機と国・東電の無策ぶり」
2012年9月14日(金)

 福島第一原発の事故から1年半。実は今、同原発の「4号機」が、さらなる放射性物質を地上に撒き散らし、人類を未曾有の危険にさらそうとしている。それなのに国と東電にはまるで危機感がない---。外交官時代から脱原発の志を貫いてきた信念の人・村田光平さん(元駐スイス大使)が、その空恐ろしい実情を語る。

驚くべき杜撰さが明らかになった

村田光平氏(元駐スイス大使)

 去る8月31日、「福島原発4号機の核燃料問題を考える議員と市民の院内集会」が衆議院第一議員会館で行われました。私も特別スピーカーとして出席しましたが、この集会で驚くべきことが判明しましたので、急ぎご報告したいと思います。

 一言で言うと、ここで明らかになったのは、呆れ果てるしかない原発事故処理体制の実態です。事態は放置できないレベルに達しており、世界的な一大事になりつつあります。少なくとも、今の事故処理体制の信じがたい杜撰さが、国内外から根本的に厳しく問われることは必至です。

 こういうと、多くの人は「福島第一原発の事故処理は一段落したんじゃないのか?」といぶかしく思うかもしれません。しかし、実態はまったく違います。一段落どころか、これまでの量をはるかに上回る放射性物質による汚染が、明日にでも起こる可能性があるのです。まずはこのことから説明しましょう。

「福島4号機」の崩壊が招くメルトダウンと世界の破局

 今、世界を脅かしている大問題があります。それは福島第一原発の「4号機問題」です。4号機には使用済み核燃料プールがあり、そこに残っている1535本の核燃料棒がさらなる惨事を引き起こす可能性があるのです。

 昨年3月11日の東日本大震災で福島第一原発が大事故を起こしたのは周知の通りですが、4号機の建屋は、このときの水素爆発で大変傷んでいます。しかも地盤に不等沈下があって、倒壊する危険もあります。

 現在、4号機のプールにある1535本の核燃料棒はかろうじて冷却されていますが、もし4号機が倒壊すれば、冷やす術はありません。そうなると、最悪の事態---核燃料棒が溶け、メルトダウンが起き、膨大な放射性物質が撒き散らされるという、いまだ人類が経験したことがない悲劇が起こります。

 そうなれば、これまで放出された分の数倍、数十倍の放射性物質が拡散し、福島第一原発の一帯には誰も近寄ることができなくなります。すべての人員が原発から撤退しなければならなくなるのは言うまでもありません。その結果、4号機のみならず、1号機から6号機までの事故後処置も難しくなり、全機がメルトダウンを起こす可能性もあります。

 今、4号機も含めて、福島第一原発に残されている核燃料棒の総数は1万4225本にのぼります。米国の核科学者ロバート・アルバレス氏によれば、チェルノブイリの85倍のセシウム137が福島第一原発に存在するそうです。4号機に限っても、セシウム137の量はチェルノブイリの10倍になるのだとか。

 したがって4号機の崩壊は、日本のみならず、世界的な広範囲の汚染を招くでしょう。「究極の破局に繋がることは確実」と多くの科学者は見ています。

政府と東電は「4号機は震度6強の地震に耐えられる」としていますが、逆に見ると、この震度を超える地震が発生したらきわめて危険ということです。しかも、傷んでいる建屋が本当に震度6強までの地震に耐えられるかについては、何の保証もありません。

 今年3月、私は参議院予算委員会の公聴会に公述人として出席し、この4号機問題には世界の安全保障問題として最大限の対応が必要であることを訴えました。8月24日から3日間、広島市で開催された核戦争防止世界大会でも、世界に向けて4号機危機への注意を喚起するスピーチを行いました。

 私たちの訴えは各国で少しずつ聞き入れられていき、今や4号機問題は世界の安全保障上、最も重大な関心事になっているのです。

「水では消火できない」ことを知らなかった国と東電

 冒頭に述べた「福島原発4号機の核燃料問題を考える議員と市民の院内集会」は、このような背景で開催されるに至りました。13人の国会議員が呼びかけ人となり、脱原発政策実現全国ネットワークの主催で行われました。

 第1部では、アメリカの原子力技術者アーニー・ガンダーセンさんが講演を行い、私は特別スピーカーとしてコメントを述べました。第2部では、経産省から資源エネルギー庁の課長と、東電から課長クラス7名が出席し、彼らに対するヒヤリングが行われました。

 あらかじめ、東電に対しては、飛散防止剤の影響や鉄筋の腐食、燃料棒取り出しの計画などについて、質問書を提出してありました。また原子力安全・保安院(資源エネルギー庁の特別機関)に対しては、企業任せの事故処理を改めて国が前面に出て迅速に対応する必要があることや、国際技術協力チームが必要であることなどにつき、やはり質問書を提出していました。

 第1部でガンダーセンさんは、以下のような重要な指摘をしました。これが後に、処理体制の驚くべき実態が明らかになることにつながります。

①4号機の燃料プールの水が地震で抜け、燃料棒がむき出しになると、1535本の燃料棒に火がつく。このことはアメリカで、すでに実験によって確認されている。
②その火がついたときの破壊力は、核兵器程度ではすまない。東北、関東圏は壊滅し、放射能で人がいなくなれば、福島第一原発の1、2、3、5、6号機も管理不能となり 核の暴走が勃発する。
③燃料棒に一度火がつくと、燃料棒を包むジルコニウムが水を分解し、そのときに生じる酸素で発火が起こり、水素爆発に至る危険がある。したがって、消火に水を使用することは許されない。
④消火のための化学製品はアメリカで開発されているので、これを用意しておくことが望まれる

集会が第2部に入ると、ガンダーセン氏は東電の7名に対し、

「最悪の事態に備えて、(第1部で説明した)化学製品の活用を考えていますか」

 と質問しました。これに対し、東電側からの答えは以下のような趣旨のものでした。

「4号機は十分に補強しているので崩壊はあり得ない」

「燃えるようなものはなく、消防体制も強化している」

 これを聞いて、会場に集まった人々は一様に愕然としました。東電の面々は、水による消火が問題外であることなど、まったく理解していない様子だったのです。世界中が固唾を呑んで見守っている4号機問題という重大問題について、当事者である東電の認識があまりにもお寒いものであることが暴露された瞬間でした。

会場から「全然わかってない!」と罵声

 会場からはたちまち罵声や怒号、叱声が次々と起こりました。

「何をバカなことを言ってるの?」「燃えるものがあるだろう!」「想定外じゃすまないんだよ!」

 騒然とした雰囲気の中、資源エネルギー庁の課長が話を引き取って、次のような趣旨の発言をしました。

「万が一、プールが損壊して水が漏れた場合、コンクリートポンプ車を用意して水を・・・」

 課長はこの発言を最後まで続けることができませんでした。会場から遮るように、「ガンダーセンさんの話を聞いていたの?」「水はダメだって言ってるじゃないか」「全然わかってないだろう!」といった罵声が次々と上がったからです。

 そう、東電だけでなく、国の実務責任者も「燃料棒の消火に水を使うことが許されない」という重要な事実を知らなかったのです。

 注目を集めたのは、菅直人前首相の政策秘書・松田光世氏の発言でした。松田氏は、ガンダーセン氏が述べた消火のための化学薬剤に関して、こんな趣旨のことを述べました。

「福島第一原発の事故の直後、日本政府はアメリカ軍にこの消火薬剤を送ってもらっている。だが、東電にはまだ渡していない。東電には管理能力がないと判断しているので、消火薬剤の到着を知らせてもいない。

 もし、4号機の燃料棒に火がつくような事態が起きたら、米軍機が山形空港から飛び立って、4号機の燃料プールに消火薬剤を投げ入れることができるようになっている。だが、そのことにさえ反対する国会議員の勢力がある」

活断層の上にある核燃料プール

 思わぬ情報に身を乗り出して聞く会場に向かって、松田氏は続けました。

「4号機の建屋の下の、南側3分の1くらいのところに活断層がある。核燃料プールはその上にある。大震災のとき、4号機は80㎝も右に傾いた。そこに東電は40本の棒を打ちこんで補強した。

 しかし、60㎝沈んだところや40㎝沈んだところもあって、地面はあちこちが凸凹になっている。それを東電の報告書では『平均58㎝の地盤沈下』と言っているが、いったい何のことやら、実態を反映していない。

 コンクリートもひびが入ったので、底が割れないようにさらに厚くしたが、鉄筋も入れず、ただ厚くしただけ。だから横揺れには弱い。そういうことを、国と東電は正直にすべて言うべきではないか。データを公開すべきだ。

 現行の国の基準では、活断層の上に原子炉を建ててはならないことになっている。しかし、その建てられないところに4号機の建屋がある。原子力安全・保安院ですら、『4号機の建屋が震度6強に耐えられるかどうかは言えない』と言っている。情報をもっと世の中に真面目に公表してほしい」

 この松田氏の発言にショックを受けた議場からは、さまざまな発言が飛び出しました。中でも

「燃料棒に火がついたら、私たちが受ける被害は広島の原爆の数千倍になる」

「震度6強を上回る地震が起こる可能性は十分にある。スマトラでは、マグニチュード9の地震の起きた18ヵ月後に、マグニチュード8.4の余震があった」

といった発言が印象に残りました。

なぜ、今すぐ燃料棒を取り出さないのか

 そんな中、ガンダーセン氏から次のような提言がありました。

国は来年12月から核燃料棒を運び出すと言っているが、それでは遅すぎる。実は、もう、燃料棒の3分の2が十分に冷えているのだから、今から1年半ほどかけて、冷えているものから順に取り出せばいい。それが終わる頃には、残りの3分の1も冷えているだろう。そうやって一刻も早く、効率的に取り出すことを考えるべきだ。地震は待ってはくれない

 また現状のプランでは、水中から取り出した燃料棒を100トンのキャニスター(核物質を入れる容器)で運ぼうとしているが、これは40トンから50トンくらいに小さく分けて回数を多く運ぶ方がよい」

この提言に対しても、東電側は冷淡でした。彼らの言い分は、

「放射能の拡散の問題があるから、現状の屋根がない状態では、燃料棒を取り出す作業はできない。屋根をつける作業を先にする今は、100トンの重量の燃料棒をクレーンで上げられる機械を企業に発注し、作ってもらっているところだ」

 というもので、早急な問題解決への積極的な意欲が全然と言っていいほど感じられませんでした。燃料棒の取り出しがいかに急を要するものであるか、その認識がまったく欠けた回答ぶりでした。私はこの件について、東電に強い不満を表明しました。

米国の専門家も東電の言い分に「戦慄した」と

 今回の集会で判明した二つの重要な事実を整理しておきます。

 第一に、世界が安全保障問題として注目している4号機問題につき、経産省と東電が、事故から1年半を経てもその重大さを理解しておらず、最悪の場合の想定も対策も一切考えていなかったことが明らかになりました。会場が罵声と怒号で包まれたのは当然です。この体たらくにつき、私のもとにもすでに全国から怒りと失望の反響が伝わっています

 第二に、原子力の現場を熟知した専門家アーニー・ガンダーセン氏は、「今すぐ4号機からの燃料棒の取り出しが可能だ」と指摘しました。来年末まで待つことなく作業を始められる。との見解が示されたのです。

 実は、現場で事故処理に携わる会社の責任者も、私にこう語ったことがあります。

「処理の予算を東電が半分に削ったりするような現状を改め、国が全責任を担う体制にすれば、ガンダーセンさんの提言に沿うことは、困難が伴うかもしれませんが実行が可能です

 集会の後、ガンダーセン氏は私宛のメールの中で、次のような意見を述べてきました。

①東電は最悪の事態が発生しうることを想像できていない。そのため、対策の必要も感じていないことが今回の集会により証明された。
②「4号機の冷却プールに燃えるものは何もない」という東電側の言い分に戦慄を覚えた。原発事故が起こった後も、東電の世界観は事故の前と一切変わっていない。
③「独立した専門家が必要」とのご意見には賛成するが、IAEA(国際原子力機関)の専門家は排除すべきである。

 4号機について、フランスの有力誌『ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール』は8月、「最悪の事故はこれから起きる」とするショッキングな記事を掲載しました。この記事では、北澤宏一元JST理事長など、4号機の施設のデータを分析した専門家を取材し、「北半球全体が長期にわたって深刻な汚染にさらされ、現代日本は滅亡する」と指摘する声を伝えています。

また同誌は、この事態の危険性を日本の政府やマスコミはいっさい伝えていないが、欧米諸国では早くから危惧されてきており、米上院エネルギー委員会の有力メンバーであるロン・ワイデン議員が昨年6月、ヒラリー・クリントン国務長官に深刻な状況を報告した---と指摘しています。

「原発ゼロ政策を確立せよ」と野田首相に手紙

 前述したように、私は8月下旬、広島で開催された核戦争防止世界大会に出席しスピーチをしましたが、海外の出席者が4号機問題に寄せる関心は高まる一方でした。特に、日本政府が世界を脅かすこの大問題への対応を東電に委ねたままで最大限の対応をしていないことや、放射能汚染による加害国としての罪悪感に欠けることについて、海外から厳しい批判の目が向けられています。

 以上のことを踏まえ、私はこのたび野田首相宛に手紙を出し、広島、長崎、そして福島を経験した日本が当然打ち出すべき脱原発政策の確立と、日本の名誉挽回のため、次の諸点を要望する旨を申し入れました。

①原発ゼロ政策を確立すること
②事故収拾については国が全責任を負い、4号機からの燃料棒取り出しの作業を早急に開始すること
③4号機問題の解決に人類の叡智を動員するため、中立評価委員会及び国際技術協力委員会を設置すること

④福島事故は、原発事故が人類の受容できない惨禍であることを立証するものであるから、そのような事態が起こる可能性を完全にゼロにする必要があると世界に発信すること

 今、「原発の存在自体が、倫理と責任の欠如に深く結びついたものである」という認識が、急速に国際的に広がりつつあります。それなのに日本では、福島第一原発事故の後も原発推進体制が改められることなく、原発輸出や再稼働などによって国は「不道徳」の烙印を押されたも同然で、名誉は大きく傷つけられています。

 先の集会でわかったように、原発事故の収拾体制に驚くべき欠陥があると露呈したことで、上記4項目は、一刻も早く実現しなければならない最優先の国民的ミッションとなったのです。

村田光平(むらた・みつへい)

1938年、東京生まれ。61年、東大法学部卒業、外務省入省。駐セネガル大使、駐スイス大使などを歴任し、99年、退官。99年~2011年、東海学園大学教授。現在、同大学名誉教授、アルベール・シュバイツァー国際大学名誉教授。外務官僚時代、チェルノブイリ原発事故をきっかけに「脱原発」をめざす活動を開始。私人としての活動だったにもかかわらず、駐スイス大使時代の99年、当時の閣僚から「日本の大使が原発反対の文書を持ち歩いている」と批判され、その後日本に帰国となり、辞職。さまざまな圧力に屈せず、脱原発の主張を貫いて「反骨の外交官」と呼ばれた。以後、現在まで、主に原子力問題やエネルギー問題などをテーマに言論活動を続けている。著書に『原子力と日本病』、『新しい文明の提唱 未来の世代に捧げる』など。

http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&NR=1&v=RCCTctlJegQ

http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&NR=1&v=mUopQRPEeQQ



<原子力規制委>「ムラ」批判に反発…田中委員長

毎日新聞 9月19日(水)23時59分配信


 原子力規制委員長に就任した田中俊一氏(67)は福島市出身。1967年、東北大工学部原子核工学科を卒業し、日本原子力研究所(旧原研、現日本原子力研究開発機構)に入った。一貫して原子力畑を歩み、同副理事長のほか、内閣府原子力委員会委員長代理などを歴任。こうした経歴が「原子力ムラ」との批判を浴びたが、旧原研はもともと基礎研究が主で、電力会社や商用原発を監督する経済産業省とは関係が薄い。委員長就任は、「ムラ」からの距離感も考慮されたとみられる。

【初会合では】原子力規制委:原発再稼働、新基準策定まで不可能

 99年に発生したJCO臨界事故(茨城県東海村)では、旧原研東海研究所副所長として収束作業に従事。昨年4月には、福島原発事故を反省する専門家16人の緊急提言を取りまとめた。細野豪志・原発事故担当相は「JCO事故では真っ先に陣頭指揮を執り、福島事故では福島県除染アドバイザーとして先頭に立って除染活動を担った人物」と高く評価する。

 その一方で、原発事故の地元・福島県では「除染が中途半端で線量が下がらない地域もあり、地元を混乱させた」(飯舘村住民)との声があるほか、反原発団体は「日本原子力研究開発機構は高速増殖原型炉もんじゅを運営しており、原子力ムラの中心人物だ」と辞任を求めるなど、評価は分かれる。


 19日の就任記者会見で田中氏は「原子力ムラ」批判について「出身や仕事によって十把一からげに判断することには反対だ」と述べ、レッテルを貼られることに反発した政府の革新的エネルギー・環境戦略が掲げる「原発ゼロ」方針が迷走していることへの見解を尋ねる質問には、「何もコメントしない」と慎重な発言を繰り返した。【中西拓司】