今年になって勢い、東電の発送電分離を視野に入れた社内分社化のアイデアや、国の一時的な国有化の話が浮上している。以下、関連記事を転載するが、2つめに転載した現代ビジネスの町田徹氏の東電の国有化を茶番とし、東電は淡々と法的整理を進めるべきという主張には、納得させられる点が多い。
債務超過会社には破たん処理をすればいいのであって、東電関係者や株主や銀行が身銭を切らず、理不尽に国民に高いつけを回すようなことは断じて避けるべきである。
今回大災害を巻き起こしたのは、東電にはちがいないが、原子力・エネルギー産業をめぐるシステム自体の構造的な問題は、何も東電に限定されるものではない。
地域独占、発送電分離、総括原価方式、原発産業と大企業、政府、官僚、研究者との癒着、立地自治体の電力会社への依存、燃料買い取り価格をめぐる問題など、国のエネルギー政策の大きな転換と全国の電力会社の構造改革を英断を持って早急に進める必要がある。理由はこれまで、さんざんこのブログに記してきたので、改めて繰り返す必要もないと思うが。。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120222-00000004-fsi-bus_all
東電、部門別に社内分社へ 発送電分離を視野に
フジサンケイ ビジネスアイ 2月23日(木)8時15分配信
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カンパニー制も検討されている東京電力本店=東京・内幸町(写真:フジサンケイビジネスアイ) |
支援機構がまとめた総合特別事業計画の骨子案に、3年後の黒字化や5年後の社債市場への復帰などの経営目標とともに、カンパニー制を導入した企業改革案を示した。
この制度は、商社などで多く採用されている。部門ごとへの権限と責任を委譲して外部との競争にさらすことで、独自の経営計画や管理会計を徹底させる。地域独占で「どんぶり勘定経営」とも揶揄(やゆ)される東電経営陣の意識改革を促す。
具体的には、20カ所程度所有する火力発電所をカンパニー化し、外部からの投資資金を取り込みやすくする。電気料金の3割以上を占める燃料調達費についても、独立採算化することで海外企業との共同調達などを促しコストダウンを目指す。
支援機構は週内にも運営委員会(委員長・下河辺和彦弁護士)を開催してこれら骨子案の了承を得たうえ、来週にも東電首脳と3月に策定する総合特別事業計画を話し合う経営改革委員会を開き、説明する。
一方、政府は既存電力会社の送電網を新規発電事業者にも開放して自由競争を促す「発送電分離」を検討中だ。分離方式では、運用を中立的な外部組織に委ねる「機能分離」が有力視されている。東電の送電部門の社内分社化はこの制度改正にも沿った内容となる。
ただ、カンパニー制への移行は、東電の経営権温存につながりかねない。透明度の高い発送電分離には、送電部門の経営を完全に切り離す「所有分離」が適しているとされる。また、東電の経営権についても枝野幸男経済産業相は1兆円規模の公的資本注入に際し、会社分割が単独でできる議決権の「3分の2以上」の取得へ強い姿勢も示している。
これに対し、東電は「発送電一貫体制が安定供給にふさわしい」(西沢俊夫社長)との基本姿勢を崩しておらず、支援機構によるカンパニー制移行への調整は難航が必至だ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31913
「現代ニュース」
エネルギー改革のノド元に刺さった棘:「東電国有化」という茶番
町田徹「ニュースの深層」(2012.02.28)
この冬、何度も広域停電の危機に瀕してきた東北電力や九州電力、最終赤字への転落が続出している電力会社経営、秒読み段階に入った電気料金の値上げ、そしてLNGの購入代金がかさんで31年ぶりの赤字に転落した日本の貿易収支・・・。
冷静に捉えれば、我々はすでに、深刻なエネルギー危機の入口に立っている。原発の運転再開ルールの早期確立を含めた、短期、中期、長期のエネルギー戦略の再構築は喫緊の課題だ。
しかし、いたずらに国民の不信感を煽り、エネルギー戦略の立て直しの議論の本格化に影を落としているのが、政府と東電が「経営権の取得」を巡って対立の構図を演じている「東電国有化」の茶番だ。
枝野幸男経済産業大臣は即刻、不毛な議論に終止符を打つべきだ。手始めに、資本主義の原則に従って、東電をきちんと法的整理に処すことを進言したい。
原子力、火力の主力発電所が東日本大震災の直撃を受けたことから、昨年3月11日以来、電力供給で薄氷の綱渡りを続けてきたのが、東北電力だ。
河北新報などによると、東北電は暑いさなかの昨年8月8日、午前中に供給余力が2.8%まで低下して、110万キロワットの電力を東電から融通して貰うピンチがあった。
同社は、冬の暖房需要に備えて、他社からの融通の容量を拡大したり、仙台火力発電所4号機の復旧を急ぐといった対策を講じてきたものの、十分といえず、この冬は最初から余力の乏しい日が続いていた。
そして、厳しい寒波に襲われた今月(2月)1日、ついに中部電力から電力融通を仰ぐ緊急事態に追い込まれた。融通量は最大30万キロワットだった。
翌2日も、綱渡りは続き、午後5時に最大電力使用率が94.7%(90%以上は「警戒水準」)に上昇、今度は北海道電力から最大28万キロワットの融通を受ける有り様だった。
綱渡りは、決して東北電だけの問題ではない。世界最悪の事故を起こした東電福島第1原発の影響で、全国で定期点検に入った原発の再稼働が認められないため、原発依存度の高かった電力会社ほど深刻な事態に直面している。
例えば、東北電が初の中部電からの支援を仰いだ2月1日には、中部から融通を受けたところが他にも2社あった。関西電力が前日より20万キロワット多い最大60万キロワットの融通を、九州電力も最大40万キロワットの融通を、それぞれ受けている。
加えて、2月3日。この冬最も危うい状況が全国的に勃発した。「警戒水準」とされる最大電力使用率が90%以上の状態に、全国の10電力のうち、東北電、中部電、北陸電、関西電、四国電、九州電の6社が陥ったのだ。
寒波の襲来に加えて、燃料を送る配管の凍結のため、九州電の新大分発電所の火力発電設備が13基すべて緊急停止したことが原因だった。九州電への緊急融通は、関西電、東電など6社の合計で240万キロワットにのぼった。
付言すれば、火力発電では、北陸電の七尾大田火力発電所でも15日、計器周辺で水漏れが見つかり、補修のため、緊急停止するトラブルが発生した。北陸電は、自社の供給力を確保するため、関西電への融通をとりやめざるを得なかった。
企業でも、家庭でも、ユーザー側が真摯な節電努力を続けているのは間違いない。
しかし、大分、七尾の両火力発電所のトラブルは、そうした努力だけでは、突発的な全国規模の停電を防ぎきれないリスクが存在していることを浮き彫りにした。
原発停止の代替措置としてフル稼働させている火力発電の燃料費の増加と、節電要請に伴う売り上げの減少が、電力各社の経営を直撃していることも憂慮すべき問題だ。
各社の決算発表によると、東電の2012年3月期は、最終赤字がこれまでの予測より950億円拡大して6950億円に膨らむ見通しだ。本コラムのアップ前(27日)に、2012年3月期の業績予想を発表する見通しの関西電も、過去最悪の2900億円前後の最終赤字が見込まれているという。
すでに確定した今年度の第1~3四半期(2011年4~12月期)の決算では、全国10社のうち、四国電と沖縄電を除く電力8社が最終赤字を記録した。
家計や企業にとって、あるいは経済全体にとって、深刻なのは、こうした赤字が値上げに直結しかねないことである。
東電に続いて、4月からの新年度には、各社が相次いで大幅な電気料金の引き上げに踏み切ることが確実視されている。
国富の流失も目を覆いたくなる状況だ。昨年は、貿易収支が31年ぶりの赤字に転落した。事態の一段の悪化を象徴するかのように、今年1月も、貿易収支は単月で過去最大の赤字を記録した。欧州危機を主因とした輸出の減速の一方で、化石燃料の購入を主体とした輸入が増えているためだ。
イランがホルムズ海峡の封鎖に踏み切れば、原油の確保が難しくなる懸念もある。
こうした様々な問題を打開するために原発の運転再開を認めるのか、それとも原発封印の代償として様々な問題を甘受するのか、 エネルギー戦略を巡る国民的な議論が必要な段階を迎えたことは、もはや誰の目にも明らかだろう。
しかし、筆者も含めて、そうした議論に素直に応じる気にはなれない問題が残っていることも、また事実だ。のど元に刺さった棘のような問題が、資本主義の原則を無視した政府の「東電の国有化論議」である。政府のあまりにも露骨な東電擁護姿勢は、我々国民に政府への不信感を抱かせずにおかないのだ。
ここからは、その問題を検証しよう。そもそも「東電の国有化」論議は、福島原発事故の発生直後から、株式市場で東電株の売買材料として取り沙汰されていた。その後、折に触れて、話題にのぼった問題だ。
今回、改めて新聞やテレビで大きく扱われることになったきっかけは、枝野大臣が2月13日に、西沢俊夫東電社長を呼び、国による東電への資本注入について、「十分な議決権が伴わない計画を認定するつもりはない」と申し渡したことにある。
枝野大臣は翌14日の記者会見でも、議決権取得に関して「一般論として申し上げれば、りそな銀行に資本注入をしたケースが、国が資本注入する場合の基本的な考え方だ」と見栄を切った。
地域独占、発・送電の分離、総括原価主義の見直しといった電力制度改革と、抜本的な自社の経営改革の両方に、以前から難色を示してきた東電に対し、経産省では昨年春から、「いっそのこと国有化して経営権を取得してしまえば、メスを入れやすいはずだ」という意見があったことは事実だ。筆者も早い段階の取材の際に、複数の関係者から意見を求められて、「血税を浪費しかねない施策を安易に採ることは反対だ」と述べたことがある。
それだけに、新聞やテレビの記者は今回の枝野発言に関して、経済産業官僚から「実現すれば、東電に鉄槌が下る」といった類の解説を刷り込まれ、早とちりしたまま、枝野発言を大きく取り上げてしまったようだ。
しかし、話はそれほど単純ではない。というのは、枝野発言がこのタイミングで行われたことには、東電に甘いとの批判をかわしたいという同大臣の意図が読み取れるからだ。
そもそも、13日に、枝野大臣が西沢社長を呼んだのは、昨年秋に続く2度目の手厚い賠償支援の決定を伝えるためである。これによって、1回目とあわせた政府の支援額は、1兆6000億円に膨らむことになった。
そもそも、13日に、枝野大臣が西沢社長を呼んだのは、昨年秋に続く2度目の手厚い賠償支援の決定を伝えるためである。これによって、1回目とあわせた政府の支援額は、1兆6000億円に膨らむことになった。
また、翌日の枝野発言は、前日の交付金の受給決定によって、東電が経営悪化批判を免れることができた第3四半期決算の発表日である。
この両日、政府が淡々と2度目の東電支援だけを公表していれば、どれほど大きな政府批判が新聞紙面を飾るか予測できない局面だった。
だから、次の支援策である公的資金の投入に伴う経営権の取得要求という、一見したところ東電に厳しい議論と映る話を、批判回避のために持ち出したと見るのが妥当なのだ。経営権を取得したところで、東電国有化が国民に余分な負担を求める東電救済策であることにかわりはない。
実際のところ、先週末の終値で株価が250円弱に過ぎない東電が増資によって1兆円を調達しようとすると、発行する株式は単純計算で約40億株となる。
しかし、東電の定款第6条が定めた同社の株式発行枠は18億株。一方、同社はすでに16億株を発行しており、追加できる枠はわずか2億株しかない。実現には、臨時株主総会を開いて定款を変更しなければならないが、3月末という国有化までに、臨時総会を開くことなど事実上、不可能だ。つまり、最初から、3月末までの増資や国有化、それを前提とした経営権の所得など、すべて絵に描いた餅なのだ。
むしろ、この問題が再び、ヤマ場を迎えることがあるとすれば、それは定時株主総会がある6月か、総会の議案を決める5月だろう。2度目の賠償支援によって、今年度末の東電の資金繰りには目途がついたはずで、3月末がヤマ場になるとは考えにくい。
にもかかわらず、枝野大臣が威勢の良い発言をしたため、新聞とテレビは、増資を巡る東電の内情を確認することもなく、あたかも政府と東電の間で激しい攻防が繰り広げられているかのように報道したのだろう。
報道を真に受けて、大物財界人が口角泡を飛ばしてそれぞれの応援演説をしたのは気の毒だった。
将来の税金投入を懸念する財務省が東電、メガバンクと手を結んで経済産業省のけん制に動いたのは事実のようだが、それは過剰反応で、記事として報じられたことも、枝野大臣の発言に踊らされたに過ぎない。
過去1年を振り返ってみても、政府や銀行の東電擁護は目に余る。
発端は、昨年3月。経済産業省、メガバンク、東電から、歯止めのない停電を招くと迫られた金融庁が、昨年度末に向けた東電の資金繰りをつけるため、メガバンクに対して国による事実上の債務保証をほのめかしたことだ。はっきり言って、金融庁の対応は「資本主義の番人」の立場を自己否定する失態だ。
次いで5月にかけて、政府は、3月の失策を覆い隠すため、監査法人の口を封じ、東電の事実上の債務超過状態を隠し通そうとした。決算発表を乗り切らせる狙いもあり、この段階で、本格的な公的支援の導入を繰り返し公約する挙に出たのだ。
そして、昨年夏、急きょ根拠法を可決・成立させて、秋に設置したのが、あの原子力損害賠償支援機構である。
当時は、経済産業省の政務3役にさえ、同機構の設置を失策と認めて、1年程度の間に抜本的な見直しをすると確約する向きもあった。が、そんな約束は、菅直人前政権の崩壊とともに、官僚たちによって葬られた。
昨年11月になると、賠償支援機構は自らの存在意義を示すかのように、東電支援の第1弾を断行した。
ちなみに、この第1回支援で、約8900億円の資金が交付されたのに、機構と東電によると、実際に東電が今年1月までに被災者に支払った賠償金は4分の1にも満たない2132億円にとどまっている。
ところが、枝野大臣は、こんな賠償の遅さを問題とするどころか、逆に、2月13日に6900億円の追加支援を決定した。これほど被災者や国民を無視した、東電に手厚い支援策はない。
国民感情からすれば、このうえ、国有化など容認できるわけがない。
加えて、何よりも問題なのは、政府によるバックアップの代償だ。政府は、事故処理の費用対効果に無頓着で、除染費用などで大盤振る舞いを進めている。かかった費用は東電に請求する仕組みになっているからだ。肝心の東電も、値上げで資金を回収すればよいと考えているためか、そうしたツケ回しに表立った抵抗をしていない。こうしたことは、これまでに本コラムで何度か言及しているのでこれ以上の言及は控えたい。ただ、重荷を、被災者を含む国民に転嫁する話であることだけは、ここで再度、指摘しておきたい。
本来、こうした理不尽な国民への重荷のツケ回しは、法的整理など、資本主義の原則に従った債務超過会社の破たん処理を断行すれば、おのずから歯止めが効く問題だ。
最終的に、公的資金を用いた資本注入が必要になる可能性がゼロというわけではないが、枝野大臣が主張するように、破たん処理もしないで、いきなり公的資金を投入するのは、手順が間違っている。下ごしらえもせずに料理をするようなものだ。
仮に、破たん処理をせずに、公的資金を投入すると、その資金が、本来の趣旨に沿って賠償に充当される保証はない。これまでだって賠償のペースは呆れるほど遅いのだ。おカネに色はついていない。浮いたキャッシュフローが資金繰りに使われたり、金融機関の融資回収に転用されるかもしれないのだ。
そして、いざ、破たん処理となった時には、その公的資金(事実上の血税)が、自動的に紙屑になってしまう。
公的資金による資本注入は、東電が過去に地域独占企業として溜め込んだ身銭や、銀行融資、株主負担などによって、債務整理を進めて再スタートする新会社を身軽にしたうえで、再スタートに必要な資本が民間から集まらなかった時に初めて検討すればよい問題である。
東電の場合、発電所をすべて売却したとしても、送配電事業の地域独占企業として再スタートできる公算が大きく、高くて安定的な収益性が見込まれるため、民間からの新会社への出資が集まらないとは考えにくい。つまり、資本主義の原則通りやれば、公的資金による資本注入がいらない可能性が小さくない。
法的整理をすれば、社債市場が混乱するとか、電力の安定供給が難しいといった議論もよくなされているが、これらはいずれも真実と言えない。
というのは、東電の社債はすべて担保が付いており、元本がきちんと償還される仕組みになっているからだ。
法的整理を行った日本航空(JAL)で運行ダイヤが守られていた前例を見れば、法的整理の期間中、電力の供給が維持されることも理解できるはずだ。
最後に、法的整理は国民負担を何兆円も減らすメリットもある。昨年12月末のバランスシートによると、東電には9800億円弱の純資産と、使用済核燃料再処理等引当金など所要の手続きを踏めば福島原発事故の処理に使える可能性がある引当金が総額3兆7300億円程度残っている。
加えて、金融機関に対して債権カットを要求できる長・短借入金も3兆8300億円存在する。
つまり、最大で、これらの合計の8兆5400円に相当する分だけ、国民負担を軽減できることになる。
もちろん、福島原発事故の被害は甚大で、これですべての賠償や除染を賄えるとは思わない。が、東電や株主、金融機関に身銭を切らせないまま、政府が支援し、そのツケをすべてを国民に回すという「国有化」は、許される行為ではない。
枝野大臣は、口先だけで勇ましいことを言うのはやめて、淡々と法的処理を進めるべきだ。
そして、もし、野田佳彦首相が政権の維持に成功して、あなたがもうしばらく、大臣の椅子にとどまるのなら、この問題で何かを決断して、これ以上の東電支援を行うという間違いさえ犯さなければ、よい。そうすれば、資金繰りからみて、1~2年の間に、東電に残された道は、破たん処理だけになるはずである。
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