原発がなければ、安定した電力供給はできず、日本企業はお手上げ状態であるという推進派に対して、原発は絶対に危険なものであるから、今すぐにすべて停止すべきであるという反対派の意見が真っ向から対立する。推進派は、容赦なく反対派を「原理主義」と斬り捨て、過激派のイメージと脱原発を強引に結びつけようとする。
もちろん脱原発を政争の具としている人たちの中には過激な人もいるだろうが、そうでない人もいる。特に3.11以降は、子どもや孫の将来に不安を抱く普通の市民たちが、原発の危険性を認識し、これを推進するために、福島原発の被害額(賠償額)をできるだけ最小限にとどめるためにやっきになっている政治家、行政、電力会社、御用学者、メディアに対して大いなる不信感を抱いているというのが現実である。
薔薇っ子は、「既得権益を持つ者の際限なき欲望を満たすだけのために、弱者に犠牲を強いる経済論理の上にしか成り立たないような原発ビジネスはどんな不便があろうと、断じて倫理的に認めてはならないものである。」と考える。
しかし、エネルギー問題に関して素人の薔薇っ子のような人間は、「代替エネルギーの開発事業を展開し、発電所を稼働させるまでに至るまでには、膨大な月日がかかる」と言われれば、そんなものなのかと思ってしまい、結局現実を見れば、折衷案しかないのかというような諦めムードに陥りがちである。
ところがどっこい、驚くようなニュースが今日のSankeibizに発表された。日本がインドネシアに長期低金利の円借款で550億円も供与するという。三菱重工をはじめとする日本の3つの企業はそれで地熱発電所建設に着手し、4年後に原発4基分の地熱発電ができるようにするのだという。
新興国への国際協力が悪いというつもりはない、しかし今日本は、新興国に多額のお金を貸与し、よその国の地熱発電所建設に血道をあげているような時期だろうか。
にもかかわらず、たった4年でプラントを建設するというのである。それほどの技術があるのならば、日本での発電所建設はもっと短期間にできるはずである。日本企業は、他国のエネルギー問題に対応しているような余力があるのならば、まず自国のエネルギー問題の解消に全力投球すべきなのではないか。
さて、以下に転載する2年前の日経BPネットの記事は、世界第2位のインドネシアとほぼ肩を並べるほどの地熱エネルギー源を有する第3位の日本が、世界の流れと逆行して地熱発電の開発をほとんど積極的に推進していないことを示すものである。
日本の場合地熱発電ができる場所には国定公園や国立公園があることが多く、景観や温泉に影響を与えるために地元の協力を得にくいそうだが、放射能汚染による国民の健康と安全か、電力不足による国の産業の空洞化か(あくまでも、電力会社が言うように、それが本当であればという前提だが)という瀬戸際で、国定公園の景観だの温泉だのに固執しているような事態ではないはずである。
ちなみにインドネシアに550億円供与する発電所プロジェクトは、地熱発電所の建設だけではないという。政府はさらに200億円供与して、高能率の超々臨界方式石炭火力発電所の建設も行うのだそうだ。
そんな技術とお金があるのならば、三菱重工さん、日本の原発への投資をやめて、自国の新電源開発に力を注いでもらえませんか。それこそが日本をリードする企業がなすべき社会貢献であると思うのですが、そうそう簡単に原発からの美味しすぎる利権を手放す気にはなれないということでしょうか。
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/special/20090915/102193/
2009年9月16日
大きな可能性を秘めた地熱発電 法整備で日本をエネル
ギー大国に
世界第3位のエネルギー資源保有国、日本
日本が世界第3位のエネルギー資源保有国だと聞いても、にわかには信じられないかもしれない。しかし、地熱エネルギーに関しては、これは紛れもない真実だ。産業技術総合研究所(産総研)地圏資源環境研究部門地熱資源研究グループの村岡洋文研究グループ長は、「地熱資源量は、ほぼ活火山の数と相関する。火山国である日本は、圧倒的な地熱資源大国だ」と語る。推定される地熱資源量は、米国の3000万kW、インドネシアの2779万kWに続く2347万kW とされている。
だが、日本国内の地熱発電設備容量は53万5000kWにとどまる。これは、総発電設備容量のわずか0.2%にすぎない。そしてこの数値は、世界的にみると設備容量では7位で、2008年には急伸するアイスランドにも追い抜かれている。
近年、世界的には地熱発電容量が急伸しており、1990年には600万kW程度だった設備容量が、2007年には1000万kWを突破している。ここまで地熱発電が注目される理由の一つは、発電所から排出される二酸化炭素(CO2)が建設時を含めて考えても極めて少ないことだ。理論的には、発電時に排出されるCO2はゼロとされ、設備建設時の排出量を考慮しても1kWh当たりのCO2排出量は15gと水力発電の11.3gに次いで少ない。「実際には、くみ上げる水蒸気の中にCO2が混じっている場合もあり、それを考慮すればもう少しCO2排出量は増える可能性もあるが、それでも極めて少ない発電方法であることは間違いない」(村岡研究グループ長)
インドネシア、地熱に550億円 円借款供与、官民でインフラ輸出
政府は18日、世界最大の地熱資源量を持つインドネシアが計画する地熱発電所の5つのプロジェクトに対し、一括で550億円を長期低利融資の円借款で供与する方針を明らかにした。政府の成長戦略としてインフラ輸出の柱だった原発輸出が福島第1原発事故で逆風にある中、三菱重工業や富士電機など3社が世界シェア7割を握り、日本が技術優位にある地熱発電プラントの市場開拓を官民一体で進める。同国は2014年までに原発4基分に相当する地熱発電所の増設を計画しており、今後もインフラ輸出として協力していく。
◆年内に試掘基金
政府は今年3月末にも、ルムットバライ地熱発電2基(計2万キロワット)に269億円の円借款を供与したのに続き、今回は国有電力会社、PLNが計画するフルライス地熱発電など優良案件5件に円借款を供与する計画。同国は2025年までに地熱発電の設備容量を現在の約8倍の950万キロワットに拡充する計画で、今後は政府主導の公共事業に加え、卸発電事業(IPP)による電力整備を検討している。
同計画の実現に向け、日本政府は国際協力機構(JICA)を通じた政策提言や助言を実施。これに沿って同国政府は、民間の投資リスクを軽減するための「試掘基金」を年内に設立することも決めた。日本政府は同基金に別途、円借款を供与することも検討している。試掘段階から日本勢が参加する場合のリスクを一部肩代わりし、商業化を決定したときにプラント納入から運営までを手がけるシステム輸出につなげる狙いだ。
◆14年めど400万キロワット
インドネシアは経済成長を背景に、15年までに年率約10%で電力需要が伸びると試算されており、恒常的な電力不足を解消するためにも新電源開発が課題になっている。地熱発電は、地下2000メートル前後の地中から高温高圧で噴き出す熱水から蒸気を取り出し、タービンを回して発電する。火山国の同国は14年までに新規開発する電源約1000万キロワットのうち、約400万キロワットを国産エネルギーの地熱発電で賄う計画だが、計画が遅れているのが実情だ。
このため、日本政府は従来の1件ごとに円借款を供与する方式ではなく、「セクターローン」と呼ばれる地熱開発の複数のプロジェクトに対して円借款を一括供与することで同計画を後押しする。松本剛明外相が21~23日に同国で開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議でインドネシアとの2国間協議の場で表明する。
今回のインドネシア向け円借款は地熱の550億円に加え、高効率の超々臨界方式石炭火力の導入を想定するインドラマユ石炭火力発電所の建設も含めて750億円に達する。日本が技術優位に立つ石炭火力プラント輸出も支援し、成長戦略を推進したい考え。(上原すみ子)
0 件のコメント:
コメントを投稿