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2012年7月12日(木)、テレビ朝日モーニングバード内コーナー「そもそも総研」に小出裕章さんがVTR出演されました。しんちゃんさんに情報を提供いただきました。
テーマは、「そもそも、二度と日本に放射能をまき散らさないために必要なことは何か?国会事故調委員に聞く」で、小出氏の他に、国会事故調委員の野村修也氏(中央大学法科大学院教授・弁護士)が提言されています。
▼20120712 国会事故調委員が語る 原発停止でも規制は重要
▼内容文字おこしは以下。
==以下、小出氏インタビュー部分文字おこし==
「国会事故調の提言無視で再稼働していいの?」
スタジオ玉川氏 「電力会社、規制当局、法律・・今のままではダメだというふうに国会事故調は考えています。しかし、もうすでに大飯は動いてる。で、このまま動かしていいんですかっていう話を私伺ったらですね、「少なくとも提言が具体化されるまではダメ」だと。これは当たり前のことだと思いますが、じゃあ、なぜ動かしちゃダメなのか、止まってるのと動いてるのと何が違うんだっていう話を伺っているのでVTR・・」
玉川 「動かしてない時と動いている時は、これ危険性はどのぐらい違うものなのか、それとも変わらないのか?」
小出 「例えば昨年の3月11日の時にも、地震と津波に襲われて、福島の原子力発電所がまあ壊れてしまったわけですが、地震に襲われて原子炉を停止させた時には、原子炉の中で出ていた発熱の7%分が放射性物質そのものが出していた熱であった。でも、1日経つとほぼ10分の1に減ってくれるのです。それからは(熱は)なかなかあんまりスピードは速く減りませんけれども、でも1年も経てばまたその10分の1……つまり原子炉が停止した直後に比べれば(熱は)100分の1まで減ってくれるという」
玉川 「1年間で?」
小出 「はい。そういう性質を持っているのです。ですから、原子炉が動いている時動いている状態で事故に遭遇した時には、福島第一原子力発電所がそうであったように、数時間のうちに原子炉そのものが全部溶けてしまうというようなことになったわけですが、例えば発熱が100分の1になってくれているのであれば、数百時間は溶けるまでに時間がかかるということになりますので、対処の仕方はかなり楽になる。」
玉川 「数百時間というとまあ20日とか、そういう単位になるわけですね?」
小出 「はい、そうですね。ですから水が無くなってしまったら、何かの補給の手段がないかとかですね、様々にまぁ対処するための時間的な余裕が出来ますので、大きな事故を防ぐというような意味で言えば、私はかなり楽になると……危険がゼロになるわけではもちろんありません。えー、原子力発電所を止めたらもう何でもないんだよ、安全なんだよということはもちろん誤解ですけれども、でも大きな破局的な事故を防ぐという意味であれば、先ずは動いている原子力発電所を止めるということは大変効果的な手段だと思います。」
==小出氏インタビュー部分おわり==
スタジオ玉川氏 「野村さん、今、どれも、電力会社も規制当局も法律も不十分なまま動いているわけですね。これについてはどうなんです?」
野村 「やはりですね、今小出先生がお話があったように、動いているのは相当危ないわけですね。ですが私達は動かすんだったらしっかりしたことをやっていただかないと、これ相当危険だっていうことを提言しているわけです。ところがですね、政府は動かして安心しているんですね。ようするに、国民が動かすか動かさないかでもめているところを動かせたので、あと何もやってないわけです。ですから、少なくとも今、動いているんであれば、もっとやらなければいけないことは沢山あるわけなんで、スピード感をもって対応していかなきゃいけないと思うんです。それと並行してですね、本当に動かしていいのかどうかってことを多くの国民の声を聞いてですね、しっかり決めて、もし規制庁がシッカリできないのであれば、止めるという選択をやっぱりしていくっていうことも大事なことだというふうに思います。」
福島原発事故に関する国会の事故調査委員会(黒川清委員長)が7月5日、事故の原因分析と提言をまとめた報告書を発表した。
報告は本来、規制する側の政府が規制される側の東京電力に「骨抜き」にされ「規制のとりこ(Regulatory Capture)」になっていたと指摘した。そのうえで、はっきりと「事故は人災だった」と断言している。この結論だけでも報告書の意義を十分に物語っているが、とくに重要と思われるポイントを指摘しておきたい。
なにより事故の原因である。これまで東電や政府は「事故が地震ではなく、その後の津波によって引き起こされた」と強調してきた。ところが、国会事故調報告は地震によって全交流電源喪失が引き起こされた可能性を強く示唆している。
なぜかといえば、肝心かなめの津波が原発を襲った時刻について、従来の東電や政府の説明が事実ではなかったからだ。政府の事故調査委員会や東電は、これまで「津波の第1波は15時27分ごろ、第2波は15時35分ごろ」としてきた。
ところが、その根拠は沖合1.5キロメートルに設置された波高計の記録だった。実際に津波が原発に到達するには、そこから70秒から80秒後と考えられる。沖合から陸地に到達するのに時間がかかるのは当然だ。
報告は大きな第2波が原発を襲った時刻について「15時37分より相当程度遅い可能性がある」と指摘している。従来の説明より2分以上遅くなる。
一方で、東電関係者へのヒアリングによれば「1号機A系の電源喪失は15時35分から36分ごろと考えられる」という。そうだとすれば、原発は津波が来襲する前に電源喪失に陥っていたことになる。これは重大な発見である。
1号機の非常用復水器(IC)の問題もある。ICは非常事態の際に自動的に起動して原子炉を冷やす重要な装置だ。事故直後、実際に起動したが、当直の運転員が手動で停止していたことが分かっている。重要な装置をなぜ、運転員は止めてしまったのか。
東電はこの問題について「手順書で原子炉圧力容器への影響緩和の観点から原子炉冷却材温度変化率が毎時55℃/hを超えないよう調整することとしている」(東電の事故調査報告書)と説明してきた。温度変化が激しかったのでマニュアルに沿って止めた、というのだ。政府事故調も東電の言い分をそのまま受け入れてきた。
ところが国会事故調の運転員へのヒアリングによると、まったく違う。原子炉の炉圧が下がっているのはICが原因かどうか、ほかにも漏洩がないかどうかを確認するために停止した、というのである。
ICを止めて炉圧が元に戻れば、IC以外には漏洩がない(つまり正常)と分かる。つまり運転員がICを止めたのは、ほかに漏洩の有無を確認するためだった。にもかかわらず、東電が55℃/hうんぬんの説明に固執したのはなぜか。報告書は「地震動による配管破損というやっかいな問題」に注目が集まるのを避けるためだった、と推測している。
なぜICを止めたのか。そんなことは運転員から事情を聞けば、すぐ分かる話である。にもかかわらず、本当の理由をあきらかにせず、もっともらしい作り話をデッチ上げた。東電はあくまで「事故は巨大津波によるもので地震が原因ではない」という主張を押し通したかった。そのために地震原因説につながるような話をすべて否定したのだ。
東電だけではない。政府も同じである。政府事故調は地震発生直後にIC配管が破断した可能性を完全否定している。その理由として、政府の中間報告は「ICにはフェイルセーフ機能があり、破断すれば(一時的にも)ICは動かない」「破断すれば炉圧と水位が大幅に低下する」「破断していれば、当直員に生死に関わる事態が生じていたはず」という3点を挙げている。
ところが国会事故調報告は「配管の小規模破断ならICは止まらないし、炉圧も水位も急激に下がらない」「作業員の生死に関わるほど大量の放射性物質が撒き散らされるわけでもない」と政府の説明を一笑に付した。
これ以外にも「直流電源が喪失したために交流電源のフェイルセーフ機能が作動し、ICの弁が閉じた」という政府の中間報告を、国会事故調報告は「原理的に不可能」と退けている。直流電源が喪失したなら、その前に交流電源が喪失しているからだ。
さらに1号機の主蒸気逃がし弁(SR弁)が地震によって作動しなかった可能性も指摘した。それが小規模の配管損傷を招き、全交流電源喪失も重なって炉心損傷につながったかもしれない。
東電は地震原因説を必死になって否定し、政府もそれを裏打ちしてきた。その理由について、国会事故調報告は「既設炉への影響を最小化したかった」ためではないかと推測している。事故が他の原発稼働に影響を与えるような事態をどうしても避けたかったのである。
客観的なデータや現場にいた関係者へのヒアリングを積み上げて冷静に分析すれば、津波だけでなく地震の影響は分かったはずだ。もちろん一番良く事態を理解できるのは、東電である。
ところが、いまだに東電と政府はグルになって事故原因をごまかそうとしている。報告は、そんな政府と事業者の癒着構造こそが「事故の根源的原因」と指摘した。事故は3.11前から起きるべくして起きていた。
事故が地震に由来するとすれば、それは関西電力大飯原発の再稼働問題に直結する。
一部には「日本海側では大きな津波がないから、地震対策さえしっかりしていれば大丈夫」といった根拠のない風説が出回っているが、とんでもない話である。原発が地震に耐えられないなら、やはりアウトなのだ。
偶然だろうが、国会事故調報告の発表があった5日、参院の別の会議室で渡辺満久東洋大学教授(変動地形学)の大飯原発観察結果報告会があった。渡辺教授は大飯原発の真下に活断層が走っている可能性を指摘している。「実際に掘削してみれば、活断層かどうかは一日で観察できる」という。大飯原発は国会事故調報告を待たずに再稼働した。政府は福島事故の教訓をなんら学ぼうとしていない。
その意味でも、事故はいまも続いている。
国会事故調報告は政府と国会に「規制当局に対する国会の監視」や「政府の危機管理体制の見直し」「被災住民に対する政府の対応」など7つの提言をした。もっとも重要な点は政府でも事業者でもない、完全に独立した機関が原発と事業者、政府を監視する点である。それは三権分立の原則から考えれば、国会以外にない。
国会議員を選ぶのは国民である。原発事故と国会事故調報告は私たちに、きわめて根源的かつ原理的な問いを突きつけている。
TOKYO — The nuclear accident at Fukushima was a preventable disaster rooted in government-industry collusion and the worst conformist conventions of Japanese culture, a parliamentary inquiry concluded Thursday.
Rubble was removed on Thursday from the damaged building for Reactor No. 4 at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant.
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The report, released by the Fukushima Nuclear Accident Independent Investigation Commission, challenged some of the main story lines that the government and the operator of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant have put forward. Most notably, the report said the plant’s crucial cooling systems might have been damaged in the earthquake on March 11, 2011, not only in the ensuing tsunami. That possibility raises doubts about the safety of all the quake-prone country’s nuclear plants just as theybegin to restart after a pause ordered in the wake of the Fukushima crisis.
“It was a profoundly man-made disaster — that could and should have been foreseen and prevented,” said Kiyoshi Kurokawa, the commission’s chairman, in the report’s introduction. “And its effects could have been mitigated by a more effective human response.”
While assigning widespread blame, the report avoids calling for the censure of specific executives or officials. Some citizens’ groups have demanded that executives of the plant’s operator, the Tokyo Electric Power Company, or Tepco, be investigated on charges of criminal negligence, a move that Dr. Kurokawa said Thursday was out of his panel’s purview. But criminal prosecution “is a matter for others to pursue,” he said at a news conference after the report’s release.
The very existence of an independent investigating commission — which avoids reliance on self-examination by bureaucracies that might be clouded by self-defense — is a break with precedent in Japan, but follows the pattern followed in the United States after major failures involving combinations of private companies, government oversight and technology issues. Those cases, which were cited by the panel, include the Three Mile Island nuclear accident in 1979, the Columbia and Challenger space shuttle disasters in 1986 and 2003 and the terrorist attacks on Sept. 11, 2001.
The 641-page report criticized Tepco as being too quick to dismiss earthquake damage as a cause of the fuel meltdowns at three of the plant’s six reactors, which overheated when the site lost power. Tepco has contended that the plant withstood the earthquake that rocked eastern Japan, instead placing blame for the disaster on what some experts have called a “once in a millennium” tsunami that followed. Such a rare calamity was beyond the scope of contingency planning, Tepco executives have suggested, and was unlikely to pose a threat to Japan’s other nuclear reactors in the foreseeable future.
The parliamentary report, based on more than 900 hours of hearings and interviews with 1,167 people, suggests that Reactor No. 1, in particular, might have suffered earthquake damage, including the possibility that pipes burst from the shaking, leading to a loss of coolant even before the tsunami hit the plant about 30 minutes after the initial earthquake. It emphasized that a full assessment would require better access to the inner workings of the reactors, which may not be possible for years.
“However,” the report said, “it is impossible to limit the direct cause of the accident to the tsunami without substantive evidence. The commission believes that this is an attempt to avoid responsibility by putting all the blame on the unexpected (the tsunami),” the report continued, adding, “and not on the more foreseeable quake.”
The report, submitted to Parliament on Thursday, also contradicted accounts put forward by previous investigations that described the prime minister at the time, Naoto Kan, as a decisive leader who ordered Tepco not to abandon the plant as it spiraled out of control. There is no evidence that the operator planned to withdraw all its employees from the plant, the report said, and meddling from Mr. Kan, including his visit to the plant a day after the accident, confused the initial response.
Instead, the report by the commission — which heard testimony from Mr. Kan and a former Tepco president, Masataka Shimizu — described a breakdown in communications between the prime minister’s office and Tepco, blaming both sides.
“The prime minister made his way to the site to direct the workers who were dealing with the damaged core,” the report said, an action that “diverted the attention and time of the on-site operational staff and confused the line of command.”
The report faulted Mr. Shimizu for an “inability to clearly report” to the prime minister’s office “the intentions of the operators,” which deepened the government’s misunderstanding and mistrust of Tepco’s response.
The commission also accused the government, Tepco and nuclear regulators of failing to carry out basic safety measures despite being aware of the risks posed by earthquakes, tsunamis and other events that might cut off power systems. Even though the government-appointed Nuclear Safety Commission revised earthquake resistance standards in 2006 and ordered nuclear operators around the country to inspect their reactors, for example, Tepco did not carry out any checks, and regulators did not follow up, the report said.
The report placed blame for the tepid response on collusion between the company, the government and regulators, saying they had all “betrayed the nation’s right to safety from nuclear accidents.” Tepco “manipulated its cozy relationship with regulators to take the teeth out of regulations,” the report said.
Dr. Kurokawa reserved his most damning language for his criticism of a culture in Japan that suppresses dissent and outside opinion, which he said might have prompted changes to the country’s lax nuclear controls.
“What must be admitted, very painfully, is that this was a disaster ‘Made in Japan,’ ” Dr. Kurokawa said in his introduction to the English version of the report. “Its fundamental causes are to be found in the ingrained conventions of Japanese culture: our reflexive obedience; our reluctance to question authority; our devotion to ‘sticking with the program’; our groupism; and our insularity.” The Japanese version contained a similar criticism.
Shuya Nomura, a commission member and a professor at the Chuo Law School, said the report had tried to “shed light on Japan’s wider structural problems, on the pus that pervades Japanese society.”
Matthew L. Wald contributed reporting from Washington.
関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働に反対する大規模な抗議行動が6日夜、首相官邸前で行われた。参加者は主催者発表で約15万人(警視庁調べで約2万1千人)。毎週金曜日に行われており、この日も、インターネットでの呼びかけなどに応じた市民らが「脱原発」などと書かれたプラカードを手に集まった。
午後6時、小雨の天気にもかかわらず、霞が関から官邸前へと続く歩道を、続々と市民らが埋めていった。「首相は声を聞け」「再稼働反対」。年齢も職業もさまざま人たちがマイクを手に官邸に向かって訴えた。作曲家の坂本龍一さん(60)も駆けつけ、「あきらめずに頑張りましょう」と呼びかけた。
江東区の女性(62)は、「意思表明できる数少ない手段。野田さんの耳にはかすかにしか聞こえていないかもしれないが、反対を伝えていきたい」と語った。
官邸前の抗議行動は、市民団体有志が3月に始めた。当初の参加者は約300人だったが、ツイッターなどの呼びかけで回を重ねるごとに増えている。
http://mainichi.jp/opinion/news/20120706k0000m070097000c.html
毎日新聞 2012年07月06日 02時31分
事故は自然災害ではなく「人災」だ。事前に対策を立てる機会が何度もあったのに実行されなかった。根本的原因は、日本の高度経済成長期にまでさかのぼった政府、規制当局、事業者が一体となった原子力推進体制と、人々の命と社会を守るという責任感の欠如にあった−−。
東京電力福島第1原発事故について、こう結論付けた報告書を国会の事故調査委員会が公表した。政府と東電のもたれあいの構図に踏みこみ、歴史的背景に迫った報告書を評価する。事故の未解明部分の究明や廃炉問題などを調査審議する第三者機関の国会設置、国会による原子力規制当局や電気事業者の監視体制の構築など7項目の提言も行った。政府及び国会は真摯(しんし)に受け止め、今後に生かしてほしい。
報告書によれば、東電は原発の稼働率の低下や訴訟への影響を恐れて安全規制の強化に反対し、規制当局もそれを後押ししてきた。原発の耐震補強の必要性や津波により全電源喪失に至る危険性を認識していながら対応を先延ばしし、経済産業省原子力安全・保安院も黙認した。規制当局は専門性でも東電に劣り、「規制する立場とされる立場に逆転関係」が起きて、事業者の「虜(とりこ)」になっていたという。その通りだろう。
危機的状況での官邸や東電の当事者能力の欠如も浮かび上がった。
安全対策は施されないまま、再稼働が決定された大飯原発。真下には活断層がある可能性も指摘されているのに、政府も電力会社も再稼働を見直そうとしない。この国の病理がここに凝縮されている。
6月19日夜、再稼働に向けた準備が進められる関西電力・大飯原発の3号機で、けたたましい警報音が鳴り響いた。
発電機のモーターを冷却する水を入れたタンクの水位が一時低下し、通常の水位を下回ったため、警報器が作動したのだ。
「国民に報告する必要があるレベルのトラブルでした。しかし関西電力はこのトラブルを約10時間公表せずにいました。『公表するほどの重要な問題ではない』と判断したそうです」(地方紙記者)
大事故につながるようなものでなかったことは、不幸中の幸いである。しかし、再稼働の準備段階で早速トラブルが起こるとは、その管理体制のずさんさが気になるところだ。再稼働後にも同様の、あるいはもっと重大な事故を引き起こすようなミスが起こる可能性が、はたしてゼロだと言えるだろうか。
大飯原発の再稼働予定日は7月4日に迫っている。だが、その再稼働は、十分な安全対策が講じられる前に決定され、多くの不安を抱えたまま進められていることを、いま一度国民は確認しておくべきだろう。
(1)免震棟がない
そもそも、再稼働決定に至るプロセスは、ウソにまみれていた。福島第一原発の事故以降、経済産業省原子力安全・保安院が「二度と同じ事故を起こさぬように」と、30項目の安全対策を提示したのは記憶に新しい。ところが大飯原発は、この30項目のうち半分程度しか達成できていないのに、再稼働が決定されたのである。
野田総理は「将来的に関西電力にこの30項目すべてを達成するよう求めていく」と言うが、東京大学名誉教授で、原子力安全・保安院の意見聴取会委員でもある井野博満氏は憤る。
「先送りにしていい問題であるはずがないのに、重要な〝安全対策〟がなされないまま再稼働が決定してしまった。特に私が問題視しているのが、現在のところ大飯原発には『免震事務棟』がないことです」
免震棟とは原発の敷地内に建てられる、耐震性の高い建物で、大事故が起きた場合、現場の対応拠点となる施設だ。東電の清水正孝前社長をして、国会で「福島第一原発の事故のとき、免震棟がなかったらと思うとゾッとする」と言わしめた重要な施設だが、それが大飯原発には、いまだに設けられていないのだ。
「免震棟がなければ、事故が起こったときにまともに修復作業を行うことができないのです。関西電力は『2015年までには大飯原発に免震棟を建てる』としていますが、それまでに過酷な事故が起こらないとなぜ言えるのか」(井野氏)
免震棟だけでなく、大飯原発では30項目の安全対策のうち、「事故が起きたとき、原子炉から蒸気を外部へ逃すフィルター」や「津波などでも流されない恒久的な非常用発電機の設置」など、素人から見ても重要な〝安全装置〟が未整備のままなのである。
(2)制御棒に疑問点が
また、井野氏は「原発のブレーキにあたる『制御棒』の問題も、クリアされていない」と警告する。
制御棒とは、原子炉内の核分裂を停止させるときに燃料棒と燃料棒の間に挿入する、必須の安全装置。この挿入が遅れると、とりかえしのつかない事故になる恐れがあるため、挿入に要する時間が国によって定められているのだが、この「時間」に関する関電側の説明が、あまりに不透明なのだ。
「原発で事故が起こった場合、早急に核分裂を止めるために、『2・2秒』以内に制御棒を挿入しなければならないと、国が基準を定めています。過去に関電から提出されたデータでは、大飯原発の燃料棒の挿入時間は『2・16秒』で、まさにギリギリでした。ところが、大飯原発再稼働について議論する会議に出された資料では、それがなぜか『1・88秒』に短縮されていた。なぜ唐突に数値が変えられたのかまったく説明がない」
(3)津波対策の不備
さらに、井野氏は津波対策の不備についても指摘する。ご多分にもれず、こちらの対策もずさんの一語だ。
「大飯原発では耐えられる津波の想定を11・4mと定めていますが、どのような基準でこの数字に決めたのか。福島原発を襲った15mの津波は考えないでいいという根拠は何か。それが明らかにされていないのです」
安全対策は先送りにされたうえ、安全確認のためのデータさえなんの説明もなく書き換えられる。これで「再稼働しても安全」とは、無責任にもほどがある。まさしく「再稼働ありき」だ。
(4)ベント装置がない
また、「新たな安全対策をいくつ施そうが、そもそも大飯原発は致命的な欠陥を抱えている」と指摘するのは、元京都大学原子炉実験所の小林圭二氏だ。
「大飯原発は、福島第一原発とはタイプの違う『加圧水型原子炉』を使った原発です。このタイプの原子炉には、内部にたまった蒸気を排出するベント装置が付いていないんです。
万一事故で炉の冷却機能が失われて水素が発生しても、これを外に排出できない。そうすると、時間が経てば空気と反応して爆発が起こり、格納容器が破壊されてしまう可能性がある。その場合、被害は福島の比ではありません。大飯から半径350kmに及びます。そこには大阪、京都など関西の人口密集地はもちろん、東は静岡も含まれるので、数千万人の暮らしに多大な影響がでるでしょう」
(5)地震と活断層
さらに、大飯原発の真下に活断層がある可能性も指摘されている。変動地形学を専門とする、鈴木康弘・名古屋大学大学院教授はこう危惧する。
「東洋大学の渡辺満久教授とともに、保安院が公開している大飯原発周辺の地質に関する資料を分析した結果、大飯原発の1、2号機と3、4号機の間の地下には南北に断層があり、それが活断層である可能性を否定する十分な証拠がないことがわかりました。
私たちは関電に『大飯原発の真下にある活断層について、再調査すべき』と働きかけているのですが、関電は『われわれの調査の結果では活断層はない』と主張して、かたくなに再調査を拒んだままなのです」
仮に活断層が動いてマグニチュード7規模の直下型地震が起きたら、原発施設は壊滅的なダメージを受け、福島の原発事故と同程度か、あるいはそれ以上の事故となってもおかしくないという。
(6)避難計画の欠落
原発施設の安全性への疑問だけではない。もうひとつ、見逃せない重大な問題がある。仮に大事故が起こった場合の周辺住民の避難計画が、ほとんど何も決められていないのだ。町民の命をあずかるおおい町役場の口は重い。
「現行の防災計画は、平成19年3月に策定したもので、震災以前の状況にもとづいています。国の原子力規制庁や規制委員会で新たな防災指針が示された段階で、それに従って改定していく予定なのですが・・・・・・」
原発を監視する原子力規制庁が発足するのは9月の予定だが、大飯原発は7月からフル稼働を始める。町民の避難計画は、そもそも眼中にないのである。
(7)原発の「孤島化」
同様に、元東芝の技術者で、原子炉格納容器設計者の後藤政志氏は、大飯原発へのアクセス方法が限られていることも問題視する。
「大飯原発へ向かう交通手段は県道241号線の一本だけなのです。かりに原発事故が起きて、瓦礫が道を遮断したり、大雪でこの道が使えなくなったりしていたら、プラントにアクセスする方法がないのです。大飯原発で事故が起きれば、それに対処できるだけの十分な人員も物資も輸送できないかもしれない」
対策として、新たなバイパス道路の建設が計画されているが、完成予定は8~10年後。しかも、「まだ着工はしておらず、地元との調整に入った段階」(おおい町役場担当者)というのだから話にならない。
「安全が確認できることを条件に、大飯原発を再稼働させる」---野田総理は国民にそう誓った。しかし、ここで見てきたとおり、安全対策は先送りにされ、新たに浮上した問題には無視を決め込んでいる。
こうした政府のやり方に対しては、与党内部からも大きな反対の声が上がっている。民主党の谷岡郁子参議院議員も、こう憤る。
「福島第一原発事故によって、電力会社、原発推進派の学者や官僚のなかにも、良心に目覚めて『これまでのエネルギー政策を見直そう』と思った人たちは少なからずいたはずなんです。ところが、今回のなし崩し的な再稼働によって、『いままでどおりやれるものは、まあそれでいいじゃないか』という方針が決まってしまった。良心の芽生えた人たちが、新たな道を探す機会を奪ってしまったのです。今回の再稼働は、それが最大の問題ですよ」
東日本大震災がそうであったように、地震、津波はいつ起こるかわからない。再稼働の翌日に、いやその日に起こっても不思議ではないのである。
「『2~3年以内に安全策を講じますから、とりあえず再稼働させてくださいよ』ということですが、野田総理や推進派は、自然に対して『地震も津波も、あと3年間待ってください』という約束でも取り付けたというのでしょうか」(前出・後藤氏)
誰も安全を断言できない。誰も責任を取ることはない。それでも再び動き出してしまった原発。この国は一体、福島の原発事故から何を学んだのだろうか。
「週刊現代」2012年7月7日号より
安全対策は施されないまま、再稼働が決定された大飯原発。真下には活断層がある可能性も指摘されているのに、政府も電力会社も再稼働を見直そうとしない。この国の病理がここに凝縮されている。
6月19日夜、再稼働に向けた準備が進められる関西電力・大飯原発の3号機で、けたたましい警報音が鳴り響いた。
発電機のモーターを冷却する水を入れたタンクの水位が一時低下し、通常の水位を下回ったため、警報器が作動したのだ。
「国民に報告する必要があるレベルのトラブルでした。しかし関西電力はこのトラブルを約10時間公表せずにいました。『公表するほどの重要な問題ではない』と判断したそうです」(地方紙記者)
大事故につながるようなものでなかったことは、不幸中の幸いである。しかし、再稼働の準備段階で早速トラブルが起こるとは、その管理体制のずさんさが気になるところだ。再稼働後にも同様の、あるいはもっと重大な事故を引き起こすようなミスが起こる可能性が、はたしてゼロだと言えるだろうか。
大飯原発の再稼働予定日は7月4日に迫っている。だが、その再稼働は、十分な安全対策が講じられる前に決定され、多くの不安を抱えたまま進められていることを、いま一度国民は確認しておくべきだろう。
(1)免震棟がない
そもそも、再稼働決定に至るプロセスは、ウソにまみれていた。福島第一原発の事故以降、経済産業省原子力安全・保安院が「二度と同じ事故を起こさぬように」と、30項目の安全対策を提示したのは記憶に新しい。ところが大飯原発は、この30項目のうち半分程度しか達成できていないのに、再稼働が決定されたのである。
野田総理は「将来的に関西電力にこの30項目すべてを達成するよう求めていく」と言うが、東京大学名誉教授で、原子力安全・保安院の意見聴取会委員でもある井野博満氏は憤る。
「先送りにしていい問題であるはずがないのに、重要な〝安全対策〟がなされないまま再稼働が決定してしまった。特に私が問題視しているのが、現在のところ大飯原発には『免震事務棟』がないことです」
免震棟とは原発の敷地内に建てられる、耐震性の高い建物で、大事故が起きた場合、現場の対応拠点となる施設だ。東電の清水正孝前社長をして、国会で「福島第一原発の事故のとき、免震棟がなかったらと思うとゾッとする」と言わしめた重要な施設だが、それが大飯原発には、いまだに設けられていないのだ。
「免震棟がなければ、事故が起こったときにまともに修復作業を行うことができないのです。関西電力は『2015年までには大飯原発に免震棟を建てる』としていますが、それまでに過酷な事故が起こらないとなぜ言えるのか」(井野氏)
免震棟だけでなく、大飯原発では30項目の安全対策のうち、「事故が起きたとき、原子炉から蒸気を外部へ逃すフィルター」や「津波などでも流されない恒久的な非常用発電機の設置」など、素人から見ても重要な〝安全装置〟が未整備のままなのである。
(2)制御棒に疑問点が
また、井野氏は「原発のブレーキにあたる『制御棒』の問題も、クリアされていない」と警告する。
制御棒とは、原子炉内の核分裂を停止させるときに燃料棒と燃料棒の間に挿入する、必須の安全装置。この挿入が遅れると、とりかえしのつかない事故になる恐れがあるため、挿入に要する時間が国によって定められているのだが、この「時間」に関する関電側の説明が、あまりに不透明なのだ。
「原発で事故が起こった場合、早急に核分裂を止めるために、『2・2秒』以内に制御棒を挿入しなければならないと、国が基準を定めています。過去に関電から提出されたデータでは、大飯原発の燃料棒の挿入時間は『2・16秒』で、まさにギリギリでした。ところが、大飯原発再稼働について議論する会議に出された資料では、それがなぜか『1・88秒』に短縮されていた。なぜ唐突に数値が変えられたのかまったく説明がない」
(3)津波対策の不備
さらに、井野氏は津波対策の不備についても指摘する。ご多分にもれず、こちらの対策もずさんの一語だ。
「大飯原発では耐えられる津波の想定を11・4mと定めていますが、どのような基準でこの数字に決めたのか。福島原発を襲った15mの津波は考えないでいいという根拠は何か。それが明らかにされていないのです」
安全対策は先送りにされたうえ、安全確認のためのデータさえなんの説明もなく書き換えられる。これで「再稼働しても安全」とは、無責任にもほどがある。まさしく「再稼働ありき」だ。
(4)ベント装置がない
また、「新たな安全対策をいくつ施そうが、そもそも大飯原発は致命的な欠陥を抱えている」と指摘するのは、元京都大学原子炉実験所の小林圭二氏だ。
「大飯原発は、福島第一原発とはタイプの違う『加圧水型原子炉』を使った原発です。このタイプの原子炉には、内部にたまった蒸気を排出するベント装置が付いていないんです。
万一事故で炉の冷却機能が失われて水素が発生しても、これを外に排出できない。そうすると、時間が経てば空気と反応して爆発が起こり、格納容器が破壊されてしまう可能性がある。その場合、被害は福島の比ではありません。大飯から半径350kmに及びます。そこには大阪、京都など関西の人口密集地はもちろん、東は静岡も含まれるので、数千万人の暮らしに多大な影響がでるでしょう」
(5)地震と活断層
さらに、大飯原発の真下に活断層がある可能性も指摘されている。変動地形学を専門とする、鈴木康弘・名古屋大学大学院教授はこう危惧する。
「東洋大学の渡辺満久教授とともに、保安院が公開している大飯原発周辺の地質に関する資料を分析した結果、大飯原発の1、2号機と3、4号機の間の地下には南北に断層があり、それが活断層である可能性を否定する十分な証拠がないことがわかりました。
私たちは関電に『大飯原発の真下にある活断層について、再調査すべき』と働きかけているのですが、関電は『われわれの調査の結果では活断層はない』と主張して、かたくなに再調査を拒んだままなのです」
仮に活断層が動いてマグニチュード7規模の直下型地震が起きたら、原発施設は壊滅的なダメージを受け、福島の原発事故と同程度か、あるいはそれ以上の事故となってもおかしくないという。
(6)避難計画の欠落
原発施設の安全性への疑問だけではない。もうひとつ、見逃せない重大な問題がある。仮に大事故が起こった場合の周辺住民の避難計画が、ほとんど何も決められていないのだ。町民の命をあずかるおおい町役場の口は重い。
「現行の防災計画は、平成19年3月に策定したもので、震災以前の状況にもとづいています。国の原子力規制庁や規制委員会で新たな防災指針が示された段階で、それに従って改定していく予定なのですが・・・・・・」
原発を監視する原子力規制庁が発足するのは9月の予定だが、大飯原発は7月からフル稼働を始める。町民の避難計画は、そもそも眼中にないのである。
(7)原発の「孤島化」
同様に、元東芝の技術者で、原子炉格納容器設計者の後藤政志氏は、大飯原発へのアクセス方法が限られていることも問題視する。
「大飯原発へ向かう交通手段は県道241号線の一本だけなのです。かりに原発事故が起きて、瓦礫が道を遮断したり、大雪でこの道が使えなくなったりしていたら、プラントにアクセスする方法がないのです。大飯原発で事故が起きれば、それに対処できるだけの十分な人員も物資も輸送できないかもしれない」
対策として、新たなバイパス道路の建設が計画されているが、完成予定は8~10年後。しかも、「まだ着工はしておらず、地元との調整に入った段階」(おおい町役場担当者)というのだから話にならない。
「安全が確認できることを条件に、大飯原発を再稼働させる」---野田総理は国民にそう誓った。しかし、ここで見てきたとおり、安全対策は先送りにされ、新たに浮上した問題には無視を決め込んでいる。
こうした政府のやり方に対しては、与党内部からも大きな反対の声が上がっている。民主党の谷岡郁子参議院議員も、こう憤る。
「福島第一原発事故によって、電力会社、原発推進派の学者や官僚のなかにも、良心に目覚めて『これまでのエネルギー政策を見直そう』と思った人たちは少なからずいたはずなんです。ところが、今回のなし崩し的な再稼働によって、『いままでどおりやれるものは、まあそれでいいじゃないか』という方針が決まってしまった。良心の芽生えた人たちが、新たな道を探す機会を奪ってしまったのです。今回の再稼働は、それが最大の問題ですよ」
東日本大震災がそうであったように、地震、津波はいつ起こるかわからない。再稼働の翌日に、いやその日に起こっても不思議ではないのである。
「『2~3年以内に安全策を講じますから、とりあえず再稼働させてくださいよ』ということですが、野田総理や推進派は、自然に対して『地震も津波も、あと3年間待ってください』という約束でも取り付けたというのでしょうか」(前出・後藤氏)
誰も安全を断言できない。誰も責任を取ることはない。それでも再び動き出してしまった原発。この国は一体、福島の原発事故から何を学んだのだろうか。
「週刊現代」2012年7月7日号より