2012年7月17日火曜日

原子炉を止めるのと動かすのは、同じ危険性?:小出氏

 「原発を止めていても、動かしていてもどちらも危険なんだから、同じ危険なものなのならば、動かさなきゃ損」というような説明をしている人がいる。

しかし、そうではないと小出裕章氏は言う。1年原子炉を停止させれば、全電源喪失のような事態になったときに、フクイチのように数時間で原子炉がメルトダウンしてしまうが、1年停止させれば、原子炉のなかで出る熱は100分の1までに減るため、メルトダウンをおこすまでに20日ほどの猶予ができるというのである。

 数時間でメルトダウンするのか、20日間対応策を講じられる猶予があるかは非常に大きな違いである。

そういった重要な事実があまり、公にされていないことも大きな問題である。電力会社も政府も、自分たちに都合の悪い情報は一切積極的に明るみに出さないのである。

 国会事故調委員野村氏は、原発は止まっているからといって、安全とは言えないことも力説している。細野原発担当相をはじめ政府は、電力会社の社員にやらせの発言をさせて、形だけの茶番の意見聴取会など開いている暇があったら、さっさと廃炉できるものから作業を始め、脱原発の新しいエネルギー政策をどんどん推進していかないと、次に大きな震災が原発立地自治体を襲ったら、この国は立ち上がることができないほど壊滅的なダメージを受けることになるのではないか。

7月12日 1年も経てば原子炉が停止した直後に比べれば(熱は)100分の1まで減ってくれる。数百時間は溶けるまでに時間がかかるということになる。対処の仕方はかなり楽になる 小出裕章(モーニングバード)

2012年7月12日(木)、テレビ朝日モーニングバード内コーナー「そもそも総研」に小出裕章さんがVTR出演されました。しんちゃんさんに情報を提供いただきました。

テーマは、「そもそも、二度と日本に放射能をまき散らさないために必要なことは何か?国会事故調委員に聞く」で、小出氏の他に、国会事故調委員の野村修也氏(中央大学法科大学院教授・弁護士)が提言されています。

▼20120712 国会事故調委員が語る 原発停止でも規制は重要

▼内容文字おこしは以下。

==以下、小出氏インタビュー部分文字おこし==

「国会事故調の提言無視で再稼働していいの?」

スタジオ玉川氏 「電力会社、規制当局、法律・・今のままではダメだというふうに国会事故調は考えています。しかし、もうすでに大飯は動いてる。で、このまま動かしていいんですかっていう話を私伺ったらですね、「少なくとも提言が具体化されるまではダメ」だと。これは当たり前のことだと思いますが、じゃあ、なぜ動かしちゃダメなのか、止まってるのと動いてるのと何が違うんだっていう話を伺っているのでVTR・・」

玉川 「動かしてない時と動いている時は、これ危険性はどのぐらい違うものなのか、それとも変わらないのか?」

小出 「例えば昨年の3月11日の時にも、地震と津波に襲われて、福島の原子力発電所がまあ壊れてしまったわけですが、地震に襲われて原子炉を停止させた時には、原子炉の中で出ていた発熱の7%分が放射性物質そのものが出していた熱であった。でも、1日経つとほぼ10分の1に減ってくれるのです。それからは(熱は)なかなかあんまりスピードは速く減りませんけれども、でも1年も経てばまたその10分の1……つまり原子炉が停止した直後に比べれば(熱は)100分の1まで減ってくれるという」

玉川 「1年間で?」

小出 「はい。そういう性質を持っているのです。ですから、原子炉が動いている時動いている状態で事故に遭遇した時には、福島第一原子力発電所がそうであったように、数時間のうちに原子炉そのものが全部溶けてしまうというようなことになったわけですが、例えば発熱が100分の1になってくれているのであれば、数百時間は溶けるまでに時間がかかるということになりますので、対処の仕方はかなり楽になる。」

玉川 「数百時間というとまあ20日とか、そういう単位になるわけですね?」

小出 「はい、そうですね。ですから水が無くなってしまったら、何かの補給の手段がないかとかですね、様々にまぁ対処するための時間的な余裕が出来ますので、大きな事故を防ぐというような意味で言えば、私はかなり楽になると……危険がゼロになるわけではもちろんありません。えー、原子力発電所を止めたらもう何でもないんだよ、安全なんだよということはもちろん誤解ですけれども、でも大きな破局的な事故を防ぐという意味であれば、先ずは動いている原子力発電所を止めるということは大変効果的な手段だと思います。」
==小出氏インタビュー部分おわり==

スタジオ玉川氏 「野村さん、今、どれも、電力会社も規制当局も法律も不十分なまま動いているわけですね。これについてはどうなんです?

野村 「やはりですね、今小出先生がお話があったように、動いているのは相当危ないわけですね。ですが私達は動かすんだったらしっかりしたことをやっていただかないと、これ相当危険だっていうことを提言しているわけです。ところがですね、政府は動かして安心しているんですね。ようするに、国民が動かすか動かさないかでもめているところを動かせたので、あと何もやってないわけです。ですから、少なくとも今、動いているんであれば、もっとやらなければいけないことは沢山あるわけなんで、スピード感をもって対応していかなきゃいけないと思うんです。それと並行してですね、本当に動かしていいのかどうかってことを多くの国民の声を聞いてですね、しっかり決めて、もし規制庁がシッカリできないのであれば、止めるという選択をやっぱりしていくっていうことも大事なことだというふうに思います。」

2012年7月16日月曜日

いじめ報道にすり変わった、原発報道


 明けてもくれても、大津のいじめ事件の報道。メディアは教師や学校、教育委員会叩きに忙しい。
問題の中学校は早速警察が入り、捜査対象となった。誤解のないように言うが、いじめで小さい子どもの命が絶たれてしまったことは誠に痛ましい。しかし、同じようなことは今までも、あるいは水面下でも、大人の世界でも、いくらでもあることではないのか。

責任回避だの、自己保身だの、見て見ぬふりをしてけしからんだの、それはそのとおりである。

 しかし、国民の生存権を脅かすような深刻な事態が引き起こしながら、誰一人として責任をとろうとはせず、組織ぐるみでかばい合いをしたり、自分たちの都合のわるい情報は何もかも隠蔽し、自己保身に忙しいのは、日本の電力会社や、霞が関官僚、民主党政権の閣僚や電力族の体質そのものではないのか。

また、自分たちにとって脅威になるや利得をもたらす権力集団にとって都合の悪いことであれば、それが国民全体の生活に長年にわたって悪影響を及ぼすような、どんなに捨ておけないようなことであっても、「それは間違っている」と声を発することすらせず、弱小な組織や個人に対しては、異常といえるまでに執拗に攻撃を加えるのは、多くの国民が日照りの中、雨の中、毎週集会を開き、再稼働反対の声を上げているのに、見て見ぬふりをして、まともに取り上げないのは、日本の大型メディアの体質そのものではないのか。

国会事故調の報告書を受けて、国会では早急に報告書に示された課題に向けて、さらなる議論と、適切な対応をしていかなければならないはずであるし、それは今後のエネルギー政策をどうすべきかという問題とも決して無関係ではない。原発問題の責任の所在を明らかにし、今の無責任体制の中で原発を稼働することの危険性を十分に踏まえた上で、国民的議論を尽くさなければならない時期であるにもかかわらず、メディアは明けてもくれてもいじめ問題に終始している。

教師叩きや学校叩きは、これまでもメディアが事あるごとに、火がついたように行ってきたことであるし、たしかに教師や学校など、いくら叩いても電力会社や大企業とは違って、メディアの腹が痛むことはなにもない。権力には迎合し、弱い者の声は無視するようなジャーナリストに正義を振りかざして、教師叩き、学校叩きをする権利がどこにあるのか。

国民の政府や官僚や電力会社に対する怒りやストレスのはけ口を、いじめ問題に向けさせ、原発問題を見えにくくするよう、操作、誘導するようなメディア戦略は、あまりに姑息といわなければならない。



2012年7月15日日曜日

東電、テレビ会議のビデオ公開、なぜすぐにできないの?

今後何年かかれば完全に収束するのか、その目処さえつかない原子力事件を引き起こした東電、そこに我々の血税、公的資金が投入された。これによって、もはや東電は事実上、国有化されたというが、それは本当にそうなのだろうか。

国会事故調の報告書の公開によって、昨今事故当時の東電本社、フクイチの事件現場、官邸の間で行われたテレビ会議のVTRの存在がクローズアップされている。枝野氏は、公開するように東電に申し入れているが、東電側がなかなか出して来ないのだという。最近になってようやく東電は、公開を認めたものの、その時期は未だ明らかにしていないという。

 これは何を意味するのか、東電が事実上、国有化されたのならば、政府は有無をいわさず、国税のお情けにすがって倒産を免れているような質の悪い電力会社に対して、「即刻「ビデオ、公開せよ」と迫るべきではないのか。

 これはいわば実質上、東電の出資者となった我々国民が、電力会社の本社経営陣の実態や、原発再稼働の安全チェックをし、大飯原発を再稼働させた霞が関官僚、施政者、電力会社の経営陣の見識や危機管理能力がいかほどのものであるのかを知る上で、非常に重要な資料である。

 テレビ会議が今、100%公開されてしまうと、東電関係者のみならず、当時官邸で、フクイチの原子力災害への対応にあたった張本人でありながら、引責辞任するどころか、大臣の椅子に堂々と鎮座しておられる枝野・細野氏を始めとする民主党の政治家、小学生レベルの識見しかもたないにも関わらず、原子力行政に関わっている霞が関官僚の失態が露呈されば都合が悪い。

新しく設立されるであろう規制庁の事務局に滑りこんで、虎視眈々と規制庁を牛耳り、既得権益を得ようともくろんでいる官僚にとっても、次の選挙にも、相当なダメージを及ぼしかねない。それゆえに民主党政権の施政者は、本音では、誰も早急なビデオ公開など、本気で求めようとはしていないのではないのか。

政治家がどう立ち回ろうが、公的資金が投入された以上、包み隠さず即刻、ビデオを全面公開することは、東電の国民に対する義務であり、国民には知る権利がある。

視聴率低迷の著しいテレビ局だが、ゴールデンアワーに3月の事故直後からのこのビデオ会議の記録をシリーズで公開すれば、高い視聴率をとれるかもしれない。公共放送がそれを拒むとするならば、再生エネルギー開発に力を注いでいる企業がスポンサーになればよろしいのでは?

小沢一郎さん、本当にやる気があるのならば、票集めの選挙対策に走るばかりではなく、国会で厳しく政府の姿勢を追及すべきなのでは? 

2012年7月9日月曜日

エネルギー政策、国民の意見を聞いて決めるそうですが。。。

 エネルギーの中長期的な計画は国民の議論を待って、8月に決定するという。何十万という市民が、直ちに脱原発を行うことを、再稼働の反対を叫んでいるというのに、中長期的な計画しか、考えないという事自体が国民の声に耳を傾けていない証拠ではないのか。

 今すぐ原発を廃炉にすると、多くの作業員の人たちが職を失うという者もあれば、また原発を辞めることで、廃炉技術開発や日本の原子力研究そのものを遅らせることになるという者もいる。しかし、それはいずれも、一見正当な議論のようにも思えるが、原発を存続させるための体裁のよい理由付けでしかない。

先月のブログにも書いたが、福島の廃炉作業1つのためだけに、わざわざ遠くブラジルから労働力を確保しようとさえしているのである。福島に限らず、54基の廃炉作業や、すでに過去何十年間にもわたって山積した放射性廃棄物の処分作業は、大きなビジネスになるし、原発関連現場の第一線で働く労働力の需要は、10年や20年で終わるものではない。原発を辞めたら即座に、今原発の現場で働く人間の仕事が奪うことになるというのはウソである。原発を辞めて困るのは、今まで理由もなく原発からの恩恵を浴していた人間だけである。たとえば、原発を辞めて地域独占をしてきた電力会社の経営が苦しくなるかもしれないが、これまで国民の安全を犠牲にし、しかも不当ともいうべき高い電気料金を強要し、私腹を肥やすだけ肥やしてきたのであるから、今すぐ倒産したところで、自業自得というものである。電気会社の地域独占を廃止し、発送電分離をして、電力を自由化することが欠かせない。

また原子力研究についても、フクイチの原発災害事件で日本の技術が、御用学者が世界一の技術と豪語するほどのものではないことがはっきり露呈した。アメリカやフランスの技術を総動員して、彼等の力を借りなければ、自力では手も足も出せなかったことが、素人目にも明らかになった。

単に技術的に未熟であるというだけではなく、安全神話に酔いしれて、科学者としての謙虚さを完全に喪失し、このような大惨事を引き起こしても収束する術さえないことに羞恥心もなければ、安全神話をまき散らしたことに対して反省すらないような日本のお偉い御用学者の元で、これ以上若い科学者が,電力会社の蜜漬けになって、ヤラセに加担し、国民をペテンにかけて常に上から目線で、安全神話を撒き散らす師匠の姿ばかり見て、同じ行動様式ばかりを身につけるとすれば、それが日本の原子力研究にプラスに働くとは到底思えない。高い研究能力を身につけるためには、より優れた技術や知見をもつ欧米で研究を続けた方が将来的に、よほど有望な研究者を輩出することができるはずである。

 海外で十分な知見を身に付けてかえって来た人間や、海外にいる優秀な人材を招聘し、その研究分野を牽引していけばいいのである。ヒッグス粒子の発見も国際研究チームで行われたものである。今の時代の科学技術開発はもはや1国内で進められるようなものではなくなっている。日本の地域独占の電力会社が原発の稼働を全部止めたからといって、原子力分野の人材が誰もいなくなるという考えには、大きな飛躍があるのである。

 以下は、現代ビジネスに掲載された、長谷川幸洋氏の「ニュースの深層」からの転載である。
首相は国民の意見を聞いて8月にエネルギー政策の方向性を決めるというが、今の首相は、霞が関と大企業と組合の顔色をうかがうだけで、国民の声に耳を傾ける姿勢などみじんも見られない。
長谷川氏は、国会議員を選ぶのは国民であるというが、選ぶに足りない政党と国会議員が余りにも揃い過ぎていることが、この国の最大の悲劇であると思うのは薔薇っ子だけだろうか。


 「現代ビジネス」            長谷川幸洋 『ニュースの深層』2012,7.6

「福島原発は津波来襲前に電源喪失に陥っていた!政府と東電のウソを暴いた国会事故調査報告書」

福島原発事故に関する国会の事故調査委員会(黒川清委員長)が7月5日、事故の原因分析と提言をまとめた報告書を発表した。

 報告は本来、規制する側の政府が規制される側の東京電力に「骨抜き」にされ「規制のとりこ(Regulatory Capture)」になっていたと指摘した。そのうえで、はっきりと「事故は人災だった」と断言している。この結論だけでも報告書の意義を十分に物語っているが、とくに重要と思われるポイントを指摘しておきたい。

1号機の電源喪失は15時35分から36分ごろ

 なにより事故の原因である。これまで東電や政府は「事故が地震ではなく、その後の津波によって引き起こされた」と強調してきた。ところが、国会事故調報告は地震によって全交流電源喪失が引き起こされた可能性を強く示唆している。

 なぜかといえば、肝心かなめの津波が原発を襲った時刻について、従来の東電や政府の説明が事実ではなかったからだ。政府の事故調査委員会や東電は、これまで「津波の第1波は15時27分ごろ、第2波は15時35分ごろ」としてきた。

 ところが、その根拠は沖合1.5キロメートルに設置された波高計の記録だった。実際に津波が原発に到達するには、そこから70秒から80秒後と考えられる。沖合から陸地に到達するのに時間がかかるのは当然だ。

 報告は大きな第2波が原発を襲った時刻について「15時37分より相当程度遅い可能性がある」と指摘している。従来の説明より2分以上遅くなる。

 一方で、東電関係者へのヒアリングによれば「1号機A系の電源喪失は15時35分から36分ごろと考えられる」という。そうだとすれば、原発は津波が来襲する前に電源喪失に陥っていたことになる。これは重大な発見である。

1号機の非常用復水器(IC)の問題もある。ICは非常事態の際に自動的に起動して原子炉を冷やす重要な装置だ。事故直後、実際に起動したが、当直の運転員が手動で停止していたことが分かっている。重要な装置をなぜ、運転員は止めてしまったのか。

既設炉への影響を最小化したかった政府と東電

 東電はこの問題について「手順書で原子炉圧力容器への影響緩和の観点から原子炉冷却材温度変化率が毎時55℃/hを超えないよう調整することとしている」(東電の事故調査報告書)と説明してきた。温度変化が激しかったのでマニュアルに沿って止めた、というのだ。政府事故調も東電の言い分をそのまま受け入れてきた。

 ところが国会事故調の運転員へのヒアリングによると、まったく違う。原子炉の炉圧が下がっているのはICが原因かどうか、ほかにも漏洩がないかどうかを確認するために停止した、というのである。

 ICを止めて炉圧が元に戻れば、IC以外には漏洩がない(つまり正常)と分かる。つまり運転員がICを止めたのは、ほかに漏洩の有無を確認するためだった。にもかかわらず、東電が55℃/hうんぬんの説明に固執したのはなぜか。報告書は「地震動による配管破損というやっかいな問題」に注目が集まるのを避けるためだった、と推測している。

 なぜICを止めたのか。そんなことは運転員から事情を聞けば、すぐ分かる話である。にもかかわらず、本当の理由をあきらかにせず、もっともらしい作り話をデッチ上げた。東電はあくまで「事故は巨大津波によるもので地震が原因ではない」という主張を押し通したかった。そのために地震原因説につながるような話をすべて否定したのだ。

 東電だけではない。政府も同じである。政府事故調は地震発生直後にIC配管が破断した可能性を完全否定している。その理由として、政府の中間報告は「ICにはフェイルセーフ機能があり、破断すれば(一時的にも)ICは動かない」「破断すれば炉圧と水位が大幅に低下する」「破断していれば、当直員に生死に関わる事態が生じていたはず」という3点を挙げている。

 ところが国会事故調報告は「配管の小規模破断ならICは止まらないし、炉圧も水位も急激に下がらない」「作業員の生死に関わるほど大量の放射性物質が撒き散らされるわけでもない」と政府の説明を一笑に付した。

 これ以外にも「直流電源が喪失したために交流電源のフェイルセーフ機能が作動し、ICの弁が閉じた」という政府の中間報告を、国会事故調報告は「原理的に不可能」と退けている。直流電源が喪失したなら、その前に交流電源が喪失しているからだ。

 さらに1号機の主蒸気逃がし弁(SR弁)が地震によって作動しなかった可能性も指摘した。それが小規模の配管損傷を招き、全交流電源喪失も重なって炉心損傷につながったかもしれない。

 東電は地震原因説を必死になって否定し、政府もそれを裏打ちしてきた。その理由について、国会事故調報告は「既設炉への影響を最小化したかった」ためではないかと推測している。事故が他の原発稼働に影響を与えるような事態をどうしても避けたかったのである。

 客観的なデータや現場にいた関係者へのヒアリングを積み上げて冷静に分析すれば、津波だけでなく地震の影響は分かったはずだ。もちろん一番良く事態を理解できるのは、東電である。

 ところが、いまだに東電と政府はグルになって事故原因をごまかそうとしている。報告は、そんな政府と事業者の癒着構造こそが「事故の根源的原因」と指摘した。事故は3.11前から起きるべくして起きていた。

事故はいまも続いている

 事故が地震に由来するとすれば、それは関西電力大飯原発の再稼働問題に直結する。

 一部には「日本海側では大きな津波がないから、地震対策さえしっかりしていれば大丈夫」といった根拠のない風説が出回っているが、とんでもない話である。原発が地震に耐えられないなら、やはりアウトなのだ。

 偶然だろうが、国会事故調報告の発表があった5日、参院の別の会議室で渡辺満久東洋大学教授(変動地形学)の大飯原発観察結果報告会があった。渡辺教授は大飯原発の真下に活断層が走っている可能性を指摘している。「実際に掘削してみれば、活断層かどうかは一日で観察できる」という。大飯原発は国会事故調報告を待たずに再稼働した。政府は福島事故の教訓をなんら学ぼうとしていない。

 その意味でも、事故はいまも続いている。

 国会事故調報告は政府と国会に「規制当局に対する国会の監視」や「政府の危機管理体制の見直し」「被災住民に対する政府の対応」など7つの提言をした。もっとも重要な点は政府でも事業者でもない、完全に独立した機関が原発と事業者、政府を監視する点である。それは三権分立の原則から考えれば、国会以外にない。

 国会議員を選ぶのは国民である。原発事故と国会事故調報告は私たちに、きわめて根源的かつ原理的な問いを突きつけている。

2012年7月6日金曜日

’’A Man-Made Disaster’’:Fukushima Crisis (NYT)

 国会事故調が、福島原発は人災だと結論づけたことを、さすがの日本のメディアも大きく取り上げた。海外メディアが声を挙げているのに、さすがにスル―するだけの気概はなかったようである。NHKはもっぱら菅首相の官邸介入の責任に焦点をあてた報道を行ったが、ニュースステーションには、黒川委員長が生出演した。しかしその黒川委員長の、イントロを読めば、これがえっ!と驚くような、非常に中途半端な報告書であることがわかる。

原発の原因をMade in Japanの、集団主義だの、自省的で従順な態度など、権威に対して疑問を呈さない姿勢や島国性など、誠に陳腐な「我々の文化論」ですり替えてしまっている点である。

事故調のメンバーもまた、首相同様、再稼働反対をめぐって大飯原発再稼働の前夜に15万人、今日もまた小雨の降りしきる中、15万人もの一般市民が反対運動を展開していることを、たんなる小さな音としてしか受けとめていないのだろうか。独占企業体として存続していた電力会社と霞が関官僚と国会議員と原子力関連企業、原発立地自治体の首長、住民と電力会社から利益を享受している製鉄、化学などの大きな製造業を中心とする大企業、銀行、御用学者が私利私欲のために日本経済新聞社、産経新聞とそれにつながる系列のテレビ放送局、NHKなど大型メディアまでを大々的に取り込み、都合の悪いことはすべて口封じをして、安全神話を流布し続け、原子力工学などというおたく的な分野には当然疎い一般市民を、安心、安全と長い間だまし続けていただけの話である。

 せめてメディアが誠実に、小出裕章氏などが長年主張してきた主張をもっと早くからしっかり受けとめ、原発の危険性を国民にしっかり知らしめていれば、少なくとも阪神大震災が起こった段階で、原発の既得権益で潤っている人間以外、誰もこの地震大国に、多くの原発を設置し、その上にまだ新たな、原発関連施設をこんなに狭い国土に強引に増設しようとする電力会社や政府に対して、黙っておとなしく服従するようなことはしなかったに違いない。

 自然科学者が陥りがちな、そしてアメリカ人が喜びそうな単純な文化論で、福島原発災害の

原因追究をうやむやに終わらせてもらいたくない。人災であるといいながら、司法による介入

必要性にひとことも言及していない点も、報告書は6月に提出される予定だったのが、衆参

両議員長の都合に合わせて、大飯再稼働の後に提出したことにも、大いに疑問と納得のいかないものが残る。


 黒川氏は昨日のニュースステーションでは、しきりに立法と行政の相互間の抑制について論じていたが、彼の議論の中で司法についての言及は全くなされなかった。

黒川氏のみではなく、日本の新聞各社は、福島原発災害は、人災であり、人災を起こした電力会社とそれを野放図に放置し続けた政府に責任があるとはいうものの、あれだけ深刻な人災を引き起こしながらも、放射能漏れを深刻さを過小化し、「あれは天災である」と言い張った東電に対して、事故後1年4カ月近くの時が流れているというのに、未だ司直の手が全く及ばないことに対して、誰も何一つ異論を唱えるものすらない。

司法、立法、行政の3種の間の抑制と均衡によってこそ、国民の政治的な自由が確保されるという、民主政治の基本原則が、全く日本という国には存在しないかの如くである。

無論電力会社は高い電気料金をむしり取り、それでもって最高の布陣の弁護団を組織しているがゆえに、たとえ告発したところで到底太刀打ちできないとしても、これだけの人災を引き起こした会社が、一切何もお咎めなしで、会長らは関連企業に再就職の道も開け、その上さらにこんなたちの悪い企業を国民の税金を投入して救済するなどという愚行を、法の番人などと豪語している人々が、一体いつまで黙って許し続けるつもりなのだろうか。そんなことでは、この国では、社会正義が守られているなどということを誰が胸を張って言うことができるだろうか。

どこかの4等国がやるようなぶざまな姿ばかり海外に見せていると、どれだけ多額の税金を外にばらまいても、世界のどこからも相手にされない国になり下がってしまうばかりである。


http://www.nytimes.com/2012/07/06/world/asia/fukushima-nuclear-crisis-a-man-made-disaster-report-says.html

Inquiry Declares Fukushima Crisis a Man-Made Disaster

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TOKYO — The nuclear accident at Fukushima was a preventable disaster rooted in government-industry collusion and the worst conformist conventions of Japanese culture, a parliamentary inquiry concluded Thursday.

Kyodo News, via Associated Press

Rubble was removed on Thursday from the damaged building for Reactor No. 4 at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant.

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Readers’ Comments

The report, released by the Fukushima Nuclear Accident Independent Investigation Commission, challenged some of the main story lines that the government and the operator of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant have put forward. Most notably, the report said the plant’s crucial cooling systems might have been damaged in the earthquake on March 11, 2011, not only in the ensuing tsunami. That possibility raises doubts about the safety of all the quake-prone country’s nuclear plants just as theybegin to restart after a pause ordered in the wake of the Fukushima crisis.

“It was a profoundly man-made disaster — that could and should have been foreseen and prevented,” said Kiyoshi Kurokawa, the commission’s chairman, in the report’s introduction. “And its effects could have been mitigated by a more effective human response.”

While assigning widespread blame, the report avoids calling for the censure of specific executives or officials. Some citizens’ groups have demanded that executives of the plant’s operator, the Tokyo Electric Power Company, or Tepco, be investigated on charges of criminal negligence, a move that Dr. Kurokawa said Thursday was out of his panel’s purview. But criminal prosecution “is a matter for others to pursue,” he said at a news conference after the report’s release.

The very existence of an independent investigating commission — which avoids reliance on self-examination by bureaucracies that might be clouded by self-defense — is a break with precedent in Japan, but follows the pattern followed in the United States after major failures involving combinations of private companies, government oversight and technology issues. Those cases, which were cited by the panel, include the Three Mile Island nuclear accident in 1979, the Columbia and Challenger space shuttle disasters in 1986 and 2003 and the terrorist attacks on Sept. 11, 2001.

The 641-page report criticized Tepco as being too quick to dismiss earthquake damage as a cause of the fuel meltdowns at three of the plant’s six reactors, which overheated when the site lost power. Tepco has contended that the plant withstood the earthquake that rocked eastern Japan, instead placing blame for the disaster on what some experts have called a “once in a millennium” tsunami that followed. Such a rare calamity was beyond the scope of contingency planning, Tepco executives have suggested, and was unlikely to pose a threat to Japan’s other nuclear reactors in the foreseeable future.

The parliamentary report, based on more than 900 hours of hearings and interviews with 1,167 people, suggests that Reactor No. 1, in particular, might have suffered earthquake damage, including the possibility that pipes burst from the shaking, leading to a loss of coolant even before the tsunami hit the plant about 30 minutes after the initial earthquake. It emphasized that a full assessment would require better access to the inner workings of the reactors, which may not be possible for years.

“However,” the report said, “it is impossible to limit the direct cause of the accident to the tsunami without substantive evidence. The commission believes that this is an attempt to avoid responsibility by putting all the blame on the unexpected (the tsunami),” the report continued, adding, “and not on the more foreseeable quake.”

The report, submitted to Parliament on Thursday, also contradicted accounts put forward by previous investigations that described the prime minister at the time, Naoto Kan, as a decisive leader who ordered Tepco not to abandon the plant as it spiraled out of control. There is no evidence that the operator planned to withdraw all its employees from the plant, the report said, and meddling from Mr. Kan, including his visit to the plant a day after the accident, confused the initial response.

Instead, the report by the commission — which heard testimony from Mr. Kan and a former Tepco president, Masataka Shimizu — described a breakdown in communications between the prime minister’s office and Tepco, blaming both sides.

“The prime minister made his way to the site to direct the workers who were dealing with the damaged core,” the report said, an action that “diverted the attention and time of the on-site operational staff and confused the line of command.”

The report faulted Mr. Shimizu for an “inability to clearly report” to the prime minister’s office “the intentions of the operators,” which deepened the government’s misunderstanding and mistrust of Tepco’s response.

The commission also accused the government, Tepco and nuclear regulators of failing to carry out basic safety measures despite being aware of the risks posed by earthquakes, tsunamis and other events that might cut off power systems. Even though the government-appointed Nuclear Safety Commission revised earthquake resistance standards in 2006 and ordered nuclear operators around the country to inspect their reactors, for example, Tepco did not carry out any checks, and regulators did not follow up, the report said.

The report placed blame for the tepid response on collusion between the company, the government and regulators, saying they had all “betrayed the nation’s right to safety from nuclear accidents.” Tepco “manipulated its cozy relationship with regulators to take the teeth out of regulations,” the report said.

Dr. Kurokawa reserved his most damning language for his criticism of a culture in Japan that suppresses dissent and outside opinion, which he said might have prompted changes to the country’s lax nuclear controls.

“What must be admitted, very painfully, is that this was a disaster ‘Made in Japan,’ Dr. Kurokawa said in his introduction to the English version of the report. “Its fundamental causes are to be found in the ingrained conventions of Japanese culture: our reflexive obedience; our reluctance to question authority; our devotion to ‘sticking with the program’; our groupism; and our insularity.” The Japanese version contained a similar criticism.

Shuya Nomura, a commission member and a professor at the Chuo Law School, said the report had tried to shed light on Japan’s wider structural problems, on the pus that pervades Japanese society.”

Matthew L. Wald contributed reporting from Washington.

2012年7月3日火曜日

原発再稼働、毒くわば皿までか!


大飯原発の再稼働が始まったが、大飯のベント装置のない加圧水型原子炉の冷却機能が失われ、爆発事故が起こった場合、被害はフクシマの比ではなく、半径350キロに汚染が及ぶという、琵琶湖の汚染は言うまでもないことだ。滋賀、京都、大阪どころか、汚染は静岡まで広がるという。350キロなら首都圏は及ばないし、国民はおとなしく何でも国の言いなりになるから、ここまでくれば、「毒食わば、皿まで」というつもりか。

 何もできない無能な首相でもかまわない。免震棟もなく、津波対策も不備で、地下に活断層があると言われ、マグニチュード7以上の直下型地震が起きれば、もろくも壊滅的なダメージを受けるような危ない原発の再稼働を止めてさえくれたらと思うのは、集団ヒステリーとレッテル貼りをされた、あるいはひきこもりと斬り捨てられた、馬鹿で自国の将来を慮る能力すらない無能な、少数の国民だけなのだろうか。

 少なくともはっきり約束してもらいたい、この再稼働に賛成したすべての人間は、過酷事故が起きた場合、全責任を負うと!

以下、再稼働前に書かれた週刊現代の記事「7月7日号)を転載する。ここには書かれていないが、大飯原発の3号機1つが吹っ飛べば、福井の原発銀座はすべて高線度の汚染で、そばに近寄ることさえできなくなる可能性も否定できない。東北の太平洋側だけではなく、関西の日本海も著しく汚染されるだろうし、原発災害は、フクシマどころかもっとももっと過酷な大災害になることを誰が否定できるというのか。

大飯原発再稼働、国民が知っておくべきこと
                  

安全対策は施されないまま、再稼働が決定された大飯原発。真下には活断層がある可能性も指摘されているのに、政府も電力会社も再稼働を見直そうとしない。この国の病理がここに凝縮されている。

さっそくトラブル発生

 6月19日夜、再稼働に向けた準備が進められる関西電力・大飯原発の3号機で、けたたましい警報音が鳴り響いた。

 発電機のモーターを冷却する水を入れたタンクの水位が一時低下し、通常の水位を下回ったため、警報器が作動したのだ。

「国民に報告する必要があるレベルのトラブルでした。しかし関西電力はこのトラブルを約10時間公表せずにいました。『公表するほどの重要な問題ではない』と判断したそうです」(地方紙記者)

 大事故につながるようなものでなかったことは、不幸中の幸いである。しかし、再稼働の準備段階で早速トラブルが起こるとは、その管理体制のずさんさが気になるところだ。再稼働後にも同様の、あるいはもっと重大な事故を引き起こすようなミスが起こる可能性が、はたしてゼロだと言えるだろうか。

 大飯原発の再稼働予定日は7月4日に迫っている。だが、その再稼働は、十分な安全対策が講じられる前に決定され、多くの不安を抱えたまま進められていることを、いま一度国民は確認しておくべきだろう。

(1)免震棟がない

 そもそも、再稼働決定に至るプロセスは、ウソにまみれていた。福島第一原発の事故以降、経済産業省原子力安全・保安院が「二度と同じ事故を起こさぬように」と、30項目の安全対策を提示したのは記憶に新しい。ところが大飯原発は、この30項目のうち半分程度しか達成できていないのに、再稼働が決定されたのである。

 野田総理は「将来的に関西電力にこの30項目すべてを達成するよう求めていく」と言うが、東京大学名誉教授で、原子力安全・保安院の意見聴取会委員でもある井野博満氏は憤る。

「先送りにしていい問題であるはずがないのに、重要な〝安全対策〟がなされないまま再稼働が決定してしまった。特に私が問題視しているのが、現在のところ大飯原発には『免震事務棟』がないことです

 免震棟とは原発の敷地内に建てられる、耐震性の高い建物で、大事故が起きた場合、現場の対応拠点となる施設だ。東電の清水正孝前社長をして、国会で「福島第一原発の事故のとき、免震棟がなかったらと思うとゾッとする」と言わしめた重要な施設だが、それが大飯原発には、いまだに設けられていないのだ。

「免震棟がなければ、事故が起こったときにまともに修復作業を行うことができないのです。関西電力は『2015年までには大飯原発に免震棟を建てる』としていますが、それまでに過酷な事故が起こらないとなぜ言えるのか」(井野氏)

 免震棟だけでなく、大飯原発では30項目の安全対策のうち、「事故が起きたとき、原子炉から蒸気を外部へ逃すフィルター」や「津波などでも流されない恒久的な非常用発電機の設置」など、素人から見ても重要な〝安全装置〟が未整備のままなのである。

半径350kmの汚染

(2)制御棒に疑問点が

 また、井野氏は「原発のブレーキにあたる『制御棒』の問題も、クリアされていない」と警告する。

 制御棒とは、原子炉内の核分裂を停止させるときに燃料棒と燃料棒の間に挿入する、必須の安全装置。この挿入が遅れると、とりかえしのつかない事故になる恐れがあるため、挿入に要する時間が国によって定められているのだが、この「時間」に関する関電側の説明が、あまりに不透明なのだ。

原発で事故が起こった場合、早急に核分裂を止めるために、『2・2秒』以内に制御棒を挿入しなければならないと、国が基準を定めています。過去に関電から提出されたデータでは、大飯原発の燃料棒の挿入時間は『2・16秒』で、まさにギリギリでした。ところが、大飯原発再稼働について議論する会議に出された資料では、それがなぜか『1・88秒』に短縮されていた。なぜ唐突に数値が変えられたのかまったく説明がない」

(3)津波対策の不備

 さらに、井野氏は津波対策の不備についても指摘する。ご多分にもれず、こちらの対策もずさんの一語だ。

大飯原発では耐えられる津波の想定を11・4mと定めていますが、どのような基準でこの数字に決めたのか。福島原発を襲った15mの津波は考えないでいいという根拠は何か。それが明らかにされていないのです」

 安全対策は先送りにされたうえ、安全確認のためのデータさえなんの説明もなく書き換えられる。これで「再稼働しても安全」とは、無責任にもほどがある。まさしく「再稼働ありき」だ。

(4)ベント装置がない

 また、「新たな安全対策をいくつ施そうが、そもそも大飯原発は致命的な欠陥を抱えている」と指摘するのは、元京都大学原子炉実験所の小林圭二氏だ。

「大飯原発は、福島第一原発とはタイプの違う『加圧水型原子炉』を使った原発です。このタイプの原子炉には、内部にたまった蒸気を排出するベント装置が付いていないんです。

 万一事故で炉の冷却機能が失われて水素が発生しても、これを外に排出できない。そうすると、時間が経てば空気と反応して爆発が起こり、格納容器が破壊されてしまう可能性がある。その場合、被害は福島の比ではありません。大飯から半径350kmに及びます。そこには大阪、京都など関西の人口密集地はもちろん、東は静岡も含まれるので、数千万人の暮らしに多大な影響がでるでしょう」

地震は待ってくれない

(5)地震と活断層

 さらに、大飯原発の真下に活断層がある可能性も指摘されている。変動地形学を専門とする、鈴木康弘・名古屋大学大学院教授はこう危惧する。

「東洋大学の渡辺満久教授とともに、保安院が公開している大飯原発周辺の地質に関する資料を分析した結果、大飯原発の1、2号機と3、4号機の間の地下には南北に断層があり、それが活断層である可能性を否定する十分な証拠がないことがわかりました。

 私たちは関電に『大飯原発の真下にある活断層について、再調査すべき』と働きかけているのですが、関電は『われわれの調査の結果では活断層はない』と主張して、かたくなに再調査を拒んだままなのです」

 仮に活断層が動いてマグニチュード7規模の直下型地震が起きたら、原発施設は壊滅的なダメージを受け、福島の原発事故と同程度か、あるいはそれ以上の事故となってもおかしくないという。

(6)避難計画の欠落

 原発施設の安全性への疑問だけではない。もうひとつ、見逃せない重大な問題がある。仮に大事故が起こった場合の周辺住民の避難計画が、ほとんど何も決められていないのだ。町民の命をあずかるおおい町役場の口は重い。

「現行の防災計画は、平成19年3月に策定したもので、震災以前の状況にもとづいています。国の原子力規制庁や規制委員会で新たな防災指針が示された段階で、それに従って改定していく予定なのですが・・・・・・」

 原発を監視する原子力規制庁が発足するのは9月の予定だが、大飯原発は7月からフル稼働を始める。町民の避難計画は、そもそも眼中にないのである。

(7)原発の「孤島化」

 同様に、元東芝の技術者で、原子炉格納容器設計者の後藤政志氏は、大飯原発へのアクセス方法が限られていることも問題視する。

「大飯原発へ向かう交通手段は県道241号線の一本だけなのです。かりに原発事故が起きて、瓦礫が道を遮断したり、大雪でこの道が使えなくなったりしていたら、プラントにアクセスする方法がないのです。大飯原発で事故が起きれば、それに対処できるだけの十分な人員も物資も輸送できないかもしれない」

 対策として、新たなバイパス道路の建設が計画されているが、完成予定は8~10年後。しかも、「まだ着工はしておらず、地元との調整に入った段階」(おおい町役場担当者)というのだから話にならない。

「安全が確認できることを条件に、大飯原発を再稼働させる」---野田総理は国民にそう誓った。しかし、ここで見てきたとおり、安全対策は先送りにされ、新たに浮上した問題には無視を決め込んでいる。

 こうした政府のやり方に対しては、与党内部からも大きな反対の声が上がっている。民主党の谷岡郁子参議院議員も、こう憤る。

「福島第一原発事故によって、電力会社、原発推進派の学者や官僚のなかにも、良心に目覚めて『これまでのエネルギー政策を見直そう』と思った人たちは少なからずいたはずなんです。ところが、今回のなし崩し的な再稼働によって、『いままでどおりやれるものは、まあそれでいいじゃないか』という方針が決まってしまった。良心の芽生えた人たちが、新たな道を探す機会を奪ってしまったのです。今回の再稼働は、それが最大の問題ですよ」

 東日本大震災がそうであったように、地震、津波はいつ起こるかわからない。再稼働の翌日に、いやその日に起こっても不思議ではないのである。

「『2~3年以内に安全策を講じますから、とりあえず再稼働させてくださいよ』ということですが、野田総理や推進派は、自然に対して『地震も津波も、あと3年間待ってください』という約束でも取り付けたというのでしょうか」(前出・後藤氏)

 誰も安全を断言できない。誰も責任を取ることはない。それでも再び動き出してしまった原発。この国は一体、福島の原発事故から何を学んだのだろうか。

「週刊現代」2012年7月7日号より


原発再稼働、毒食わば、皿までか!

 大飯原発の再稼働が始まったが、大飯のベント装置のない加圧水型原子炉の冷却機能が失われ、爆発事故が起こった場合、被害はフクシマの比ではなく、半径350キロに汚染が及ぶという、滋賀、京都、大阪どころか汚染は静岡まで広がるという。首都圏とは関係ないし、国民はおとなしく何でも従順に政府の方針に従うから、毒食わば、皿までということか。

 何もできない無能な首相でもかまわない。免震棟もなく、津波対策も不備で、地下に活断層があると言われ、マグニチュード7以上の直下型地震が起きれば、もろくも壊滅的なダメージを受けるような危ない原発の再稼働を止めてさえくれたらと思うのは、集団ヒステリーとレッテル貼りをされた、あるいはひきこもりと斬り捨てられた、馬鹿で国の将来を考える力もない無能なごく少数の国民だけなのだろうか。

 少なくともはっきり約束してもらいたい、この再稼働に賛成したすべての人間は、過酷事故が起きた場合、全責任を負うと!


 





大飯原発再稼働、国民が知っておくべきこと
                  

安全対策は施されないまま、再稼働が決定された大飯原発。真下には活断層がある可能性も指摘されているのに、政府も電力会社も再稼働を見直そうとしない。この国の病理がここに凝縮されている。

さっそくトラブル発生

 6月19日夜、再稼働に向けた準備が進められる関西電力・大飯原発の3号機で、けたたましい警報音が鳴り響いた。

 発電機のモーターを冷却する水を入れたタンクの水位が一時低下し、通常の水位を下回ったため、警報器が作動したのだ。

「国民に報告する必要があるレベルのトラブルでした。しかし関西電力はこのトラブルを約10時間公表せずにいました。『公表するほどの重要な問題ではない』と判断したそうです」(地方紙記者)

 大事故につながるようなものでなかったことは、不幸中の幸いである。しかし、再稼働の準備段階で早速トラブルが起こるとは、その管理体制のずさんさが気になるところだ。再稼働後にも同様の、あるいはもっと重大な事故を引き起こすようなミスが起こる可能性が、はたしてゼロだと言えるだろうか。

 大飯原発の再稼働予定日は7月4日に迫っている。だが、その再稼働は、十分な安全対策が講じられる前に決定され、多くの不安を抱えたまま進められていることを、いま一度国民は確認しておくべきだろう。

(1)免震棟がない

 そもそも、再稼働決定に至るプロセスは、ウソにまみれていた。福島第一原発の事故以降、経済産業省原子力安全・保安院が「二度と同じ事故を起こさぬように」と、30項目の安全対策を提示したのは記憶に新しい。ところが大飯原発は、この30項目のうち半分程度しか達成できていないのに、再稼働が決定されたのである。

 野田総理は「将来的に関西電力にこの30項目すべてを達成するよう求めていく」と言うが、東京大学名誉教授で、原子力安全・保安院の意見聴取会委員でもある井野博満氏は憤る。

「先送りにしていい問題であるはずがないのに、重要な〝安全対策〟がなされないまま再稼働が決定してしまった。特に私が問題視しているのが、現在のところ大飯原発には『免震事務棟』がないことです

 免震棟とは原発の敷地内に建てられる、耐震性の高い建物で、大事故が起きた場合、現場の対応拠点となる施設だ。東電の清水正孝前社長をして、国会で「福島第一原発の事故のとき、免震棟がなかったらと思うとゾッとする」と言わしめた重要な施設だが、それが大飯原発には、いまだに設けられていないのだ。

「免震棟がなければ、事故が起こったときにまともに修復作業を行うことができないのです。関西電力は『2015年までには大飯原発に免震棟を建てる』としていますが、それまでに過酷な事故が起こらないとなぜ言えるのか」(井野氏)

 免震棟だけでなく、大飯原発では30項目の安全対策のうち、「事故が起きたとき、原子炉から蒸気を外部へ逃すフィルター」や「津波などでも流されない恒久的な非常用発電機の設置」など、素人から見ても重要な〝安全装置〟が未整備のままなのである。

半径350kmの汚染

(2)制御棒に疑問点が

 また、井野氏は「原発のブレーキにあたる『制御棒』の問題も、クリアされていない」と警告する。

 制御棒とは、原子炉内の核分裂を停止させるときに燃料棒と燃料棒の間に挿入する、必須の安全装置。この挿入が遅れると、とりかえしのつかない事故になる恐れがあるため、挿入に要する時間が国によって定められているのだが、この「時間」に関する関電側の説明が、あまりに不透明なのだ。

原発で事故が起こった場合、早急に核分裂を止めるために、『2・2秒』以内に制御棒を挿入しなければならないと、国が基準を定めています。過去に関電から提出されたデータでは、大飯原発の燃料棒の挿入時間は『2・16秒』で、まさにギリギリでした。ところが、大飯原発再稼働について議論する会議に出された資料では、それがなぜか『1・88秒』に短縮されていた。なぜ唐突に数値が変えられたのかまったく説明がない」

(3)津波対策の不備

 さらに、井野氏は津波対策の不備についても指摘する。ご多分にもれず、こちらの対策もずさんの一語だ。

大飯原発では耐えられる津波の想定を11・4mと定めていますが、どのような基準でこの数字に決めたのか。福島原発を襲った15mの津波は考えないでいいという根拠は何か。それが明らかにされていないのです」

 安全対策は先送りにされたうえ、安全確認のためのデータさえなんの説明もなく書き換えられる。これで「再稼働しても安全」とは、無責任にもほどがある。まさしく「再稼働ありき」だ。

(4)ベント装置がない

 また、「新たな安全対策をいくつ施そうが、そもそも大飯原発は致命的な欠陥を抱えている」と指摘するのは、元京都大学原子炉実験所の小林圭二氏だ。

「大飯原発は、福島第一原発とはタイプの違う『加圧水型原子炉』を使った原発です。このタイプの原子炉には、内部にたまった蒸気を排出するベント装置が付いていないんです。

 万一事故で炉の冷却機能が失われて水素が発生しても、これを外に排出できない。そうすると、時間が経てば空気と反応して爆発が起こり、格納容器が破壊されてしまう可能性がある。その場合、被害は福島の比ではありません。大飯から半径350kmに及びます。そこには大阪、京都など関西の人口密集地はもちろん、東は静岡も含まれるので、数千万人の暮らしに多大な影響がでるでしょう」

地震は待ってくれない

(5)地震と活断層

 さらに、大飯原発の真下に活断層がある可能性も指摘されている。変動地形学を専門とする、鈴木康弘・名古屋大学大学院教授はこう危惧する。

「東洋大学の渡辺満久教授とともに、保安院が公開している大飯原発周辺の地質に関する資料を分析した結果、大飯原発の1、2号機と3、4号機の間の地下には南北に断層があり、それが活断層である可能性を否定する十分な証拠がないことがわかりました。

 私たちは関電に『大飯原発の真下にある活断層について、再調査すべき』と働きかけているのですが、関電は『われわれの調査の結果では活断層はない』と主張して、かたくなに再調査を拒んだままなのです」

 仮に活断層が動いてマグニチュード7規模の直下型地震が起きたら、原発施設は壊滅的なダメージを受け、福島の原発事故と同程度か、あるいはそれ以上の事故となってもおかしくないという。

(6)避難計画の欠落

 原発施設の安全性への疑問だけではない。もうひとつ、見逃せない重大な問題がある。仮に大事故が起こった場合の周辺住民の避難計画が、ほとんど何も決められていないのだ。町民の命をあずかるおおい町役場の口は重い。

「現行の防災計画は、平成19年3月に策定したもので、震災以前の状況にもとづいています。国の原子力規制庁や規制委員会で新たな防災指針が示された段階で、それに従って改定していく予定なのですが・・・・・・」

 原発を監視する原子力規制庁が発足するのは9月の予定だが、大飯原発は7月からフル稼働を始める。町民の避難計画は、そもそも眼中にないのである。

(7)原発の「孤島化」

 同様に、元東芝の技術者で、原子炉格納容器設計者の後藤政志氏は、大飯原発へのアクセス方法が限られていることも問題視する。

「大飯原発へ向かう交通手段は県道241号線の一本だけなのです。かりに原発事故が起きて、瓦礫が道を遮断したり、大雪でこの道が使えなくなったりしていたら、プラントにアクセスする方法がないのです。大飯原発で事故が起きれば、それに対処できるだけの十分な人員も物資も輸送できないかもしれない」

 対策として、新たなバイパス道路の建設が計画されているが、完成予定は8~10年後。しかも、「まだ着工はしておらず、地元との調整に入った段階」(おおい町役場担当者)というのだから話にならない。

「安全が確認できることを条件に、大飯原発を再稼働させる」---野田総理は国民にそう誓った。しかし、ここで見てきたとおり、安全対策は先送りにされ、新たに浮上した問題には無視を決め込んでいる。

 こうした政府のやり方に対しては、与党内部からも大きな反対の声が上がっている。民主党の谷岡郁子参議院議員も、こう憤る。

「福島第一原発事故によって、電力会社、原発推進派の学者や官僚のなかにも、良心に目覚めて『これまでのエネルギー政策を見直そう』と思った人たちは少なからずいたはずなんです。ところが、今回のなし崩し的な再稼働によって、『いままでどおりやれるものは、まあそれでいいじゃないか』という方針が決まってしまった。良心の芽生えた人たちが、新たな道を探す機会を奪ってしまったのです。今回の再稼働は、それが最大の問題ですよ」

 東日本大震災がそうであったように、地震、津波はいつ起こるかわからない。再稼働の翌日に、いやその日に起こっても不思議ではないのである。

「『2~3年以内に安全策を講じますから、とりあえず再稼働させてくださいよ』ということですが、野田総理や推進派は、自然に対して『地震も津波も、あと3年間待ってください』という約束でも取り付けたというのでしょうか」(前出・後藤氏)

 誰も安全を断言できない。誰も責任を取ることはない。それでも再び動き出してしまった原発。この国は一体、福島の原発事故から何を学んだのだろうか。

「週刊現代」2012年7月7日号より