2012年3月26日月曜日

「事故がなくても、原発は悲惨」:小出裕章氏

毎日がやっと3.10に京都で開かれた原発問題に関する市民集会での小出助教の講演をまとめた。新聞社ともあろうものが2週間以上もたって発表するとは、いかがなものかとは思うが、何も発表しないで、素知らぬ顔でスルーする他のメディアよりはましと言わざるを得ない。

小出氏の主張は、首尾一貫して全くぶれない。新しく発足する規制庁は、専門的な知見を踏まえ、しかも金にも権力にも媚びない、小出氏のような立派な人物を中心に人事を進めるべきであるが、そうなると情けないことに、たちまち人手が足りないことになってしまう。日本には、後藤氏、工藤氏、今中氏などごく僅かな人材しか残らないからである。それでも、その人達を核にして、規制の機能を働かさなければ、我々は取り返しのつかない汚れた国土を次世代に送り続けることを是認することになる。

小出氏は言う、「事故がなくても原発は悲惨だと」。

66年の原発操業以来既に作りだされてきた広島原発110万発分の核分裂生成物のゴミを、電力会社や政府は一体この小さな国土のどこに、どのような形で処分するつもりなのか、その議論すらまともになされないままに、保安院は伊方原発のストレステストの結果が妥当であるという審査書を安全委員会に提出した。

政府の広域がれき処理に対しても、小出氏は、放射能は隔離して閉じ込めるという大原則に反するという。汚染地に特別の焼却施設を作って処理するべきであるが、政府の怠慢で建設計画さえ立てられてこなかったのである。

自治体ががれき処理を引き受ける際の2つの条件を挙げているが、各自治体は国から特別の補助金がもらえるからという理由で、安易にがれき処理を引き受けるのではなく、住民の健康を守るという観点から氏の言う、2つの条件をしっかり踏まえてもらいたいものである。

1放射性物質が外に出ないフィルターなどの特殊な装置を必ず増設すること。
2焼却灰は各自治体で適当に処分。利用するのではなく、東電に返すこと。

焼却施設の運転員は小出氏のような専門家に放射性物質の漏出を防ぐフィルターの正しい取り付け方や、安全なフィルター交換の方法や、交換後のフィルターの取り扱い方を事前に習い、実際に個々の焼却現場で試験的に焼却してみて放射性物質が漏れでていないか、確認し、がれき焼却中は継続的に線量計測を継続する必要がある。

むろん汚染されたフィルターを自治体で適当に処分するのではなく、これもまた東電に返す必要もあるであろう。

今すぐ直ちに健康被害はなくても、10年後、20年後、焼却施設の風下の地元住民のがんの罹患率が急増し、原発の二次被害が出るなどということになれば、取り返しがつかないのだからーー。

以下、小出氏の講演に関する記事と、原発推進の日経新聞ウェブ版の伊方原発ストレステストに関する記事を転載する。

http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20120324ddlk26040702000c.html


講演:子供の被曝減らせ 原子力容認、大人に責任--小出・京都大助教 /京都

京都市内で今月10日あった原発問題に関する市民集会「バイバイ原発3・10京都」で、小出裕章・京都大原子炉実験所助教が演説や講演をした。東京電力福島第1原発事故の影響や現状など、発言のポイントをまとめた。【太田裕之】
■事故を振り返って
 私は41年前から原発は危ない、撤退すべきだと言い続け、廃絶させたいと考えてきたが、できないままここに至った。私たち大人には原子力を容認してきた責任がある。福島で今、放射能まみれの大地に子供たちが住んでいることを忘れず、できることを探そうと思う。私は非力だが、あきらめない。若い世代への責任だと思う。
■事故の大きさ
 日本政府がIAEA(国際原子力機関)閣僚会議に出した報告書で、大気中に放出されたセシウム137は広島原爆の約170発分とされているが、これは過小評価。世界の研究者が出している数字の大半は、その2~3倍の数百発分に相当する。海への放出量も同程度あると思う。
福島県の東半分を中心に、宮城、茨城、群馬、千葉、新潟、埼玉各県と東京都のそれぞれ一部地域が放射線管理区域以上に汚染された。私の仕事場である実験所は放射線管理区域で、そこでは飲食も寝ることも、子供の立ち入りも許されていない。汚染地域はまるで逆転した世界になっている。
 被曝(ひばく)放射線量には「これ以下であれば安全」という値はない。どんなに微量でも危険というのが現在の学問の到達点だ。
■第1原発の現状
 4号機は使用済み燃料プールが埋め込まれた階まで破壊された。使用済み燃料は膨大な放射能の固まりで広島原爆の4000発分だ。プールがさらに破壊され水が抜けたり、崩れ落ちれば、防壁のないところで大気中に吹き出す。そういう危険と隣り合わせで私たちは生きている。
 1号機は約100トンのウランなどが圧力容器の中から溶け落ちた状態。格納容器の下の厚さ1メートルのコンクリートの床について東電は70センチは壊れたが30センチは大丈夫と言うが、近寄ることはできず測定器もない。この床を突き抜ければ防壁はない。危機的状況が続いている。
■「原発」とは
 熱効率が33%に過ぎず効率の悪い蒸気機関で、生命体に圧倒的に危険な核分裂生成物を出す。出力100万キロワットの原発で毎日燃やすウランの量は3キロで、広島原爆(核分裂したウランは800グラム)3~4発分。また、原発は冷やし続けないと壊れるが、300万キロワットの発熱量のうち21万キロワットは核分裂生成物から生じる「崩壊熱」で、原発を停止しても止められない。日本では66年の東海発電所の営業運転開始から今日まで広島原爆110万発分の核分裂生成物を生み出した。事故がなくても原発は悲惨なのだ。
■除染とがれき処理
 政府は汚染地に人々が戻れるかのような幻想を与える「除染」という言葉を使っているが、放射能は人間がどんなに手を加えても消せず、放射性物質は無毒化できない。できるのは汚れを移動させる「移染」だ。もう戻れないのだと説明し、生活を補償すべきだ。
 私が最も訴えたいのは、事故に何の責任もない子供たちを守ることだ。校庭など子供が集中的に過ごす場所の土は必ず取り除き、東電の敷地にお返しするのが筋だ。
 政府はがれきの広域処理で、各自治体に、現行の焼却施設で燃やしたうえで猛烈な放射能の塊となる焼却灰を処分させようとしている。放射能は隔離し閉じ込めるという原則に反する。汚染地に専用の焼却施設を作って処理するべきだ。だが、政府の無策の結果、福島を中心とした汚染地にがれきが取り残されたまま、現在も子供たちは被曝を続けている。もはや子供全体の被曝をどう減らすかしか選択の道はなく、全国の自治体が引き受けるしかないだろう。
 それには二つの条件がある一つは放射性物質が外に出ないフィルターなど特殊な装置必ず増設すること。もう一つは、焼却灰は各自治体が勝手に埋めるのではなく、東電に返すこと。福島第1原発の事故処理には膨大なコンクリートが必要で、その部材にすればいい。

http://www.nikkei.com/news/local/article/g=96958A9C93819890E0E4E2E6EB8DE0E4E2E1E0E2E3E09E93E2E2E2E2;n=9694E3E4E3E0E0E2E2EBE0E0E4EB


四国電原子力本部長「一つの通過点」 伊方3号機「妥当」判断 

2012/3/27 1:41
経済産業省原子力安全・保安院が26日、四国電力伊方原子力発電所3号機(愛媛県伊方町)の安全評価(ストレステスト)の1次評価結果を妥当とする審査書を原子力安全委員会に報告したことについて、四国電力の柿木一高・原子力本部長は同日、記者団に対し「国の審査の一つの通過点と認識している」と語った。
安全委での今後の審査については、「審査が円滑に進むよう真摯に対応する」との方針を示した上で、「地元の理解を得て、一日も早い運転再開に向けて全力で臨む」と述べた。
愛媛県の中村時広知事は、「原子力安全委員会は厳正に確認作業を進め、四国電力は国の指摘に真摯に対応するとともに伊方原発の安全確保に努めてほしい」というコメントを発表した。

2012年3月25日日曜日

コピペ March 11, One Year On: WSJ

http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2012/03/10/march-11-one-year-on-occupy-meti/



March 11, One Year On: Occupy METI


At an intersection in central Tokyo, the concrete towers housing a group of Japan’s most influential government ministries rub shoulders.

Associated Press
Anitnuclear protesters gathered outside tents to rally against the use of nuclear power on the premises of the METII on Jan. 27.
In a leafy plaza by one of them, the powerhouse Ministry of Economy, Trade and Industry, known as METI, sits a ramshackle tent, festooned with colorful banners demanding an end to nuclear power in Japan.
Welcome to “Occupy METI,” Japan’s take on Occupy Wall Street.
March 11 marks the one-year anniversary of the natural disasters that triggered Japan’s worst-ever nuclear accident at Fukushima Daiichi, igniting a growing movement to protest the country’s reliance on atomic energy. It’s also six months to the day since the makeshift tented structure was set up in the confusion of a rally by 2,000 anti-nuclear protesters.
The occupiers say they didn’t think it would last more than a week. But to their surprise, METI didn’t evict them. Instead, in the consensus style of Japan’s politics, government officials sought negotiations — emboldening the occupiers to stick it out.
For ministry officials, the makeshift tent structure is an eyesore and something of an embarrassment, out of place in the heart of the well-appointed government district of Kasumigaseki, a seat of power visited by many foreign diplomats and business people.
The tent stands on land owned by the national government. Every day, police officers and plain-clothes detectives pay a visit  to check who is inside and remind the occupiers that the place needs to be vacated. But the occupiers say they are determined to stay on. “The land we are sitting on is national property. There is nothing wrong about using it for public debates on nuclear energy,” said one occupier in the tent during a recent visit, declining to disclose his/her name.
METI officials say that they actually share a common goal with the occupiers, now that the government has formally adopted a policy of reducing dependence on nuclear energy.
But the occupiers are unconvinced. They want to ensure the government will not restart idled reactors. “We won’t leave the place until the government promises not to restart any reactor,” said Taro Fuchigami, anti-nuke activist and leader of the occupy movement, in an phone interview with JRT.
The tent is sealed with extra tarp at the opening, but inside it remains cold as spring comes unusually late to Tokyo this year. At least two occupiers remain alert at all times to guard against a late-night or pre-dawn raid by police. “You can keep yourself warm with 10 hot pads on the body,” one occupier said, referring to adhesive self-heating strips commonly used and available from Japan’s convenience stores.
There are blankets, mattresses and sleeping bags to allow at least five people to sleep inside. With a dozen coats on the tent’s wall, paper cups and dishes on two foldable desks, and cartons of food, hot pads, documents on shelving structures, the place looks like a college dorm room. A large sign on one tent wall reads, “The rules on the use of the tent house: keep the place in good order, suitable for a public space.”
“We never thought we could stay on for this long,” said one gray-haired occupier coming off overnight guard duty. “METI couldn’t force our eviction probably because they feel guilty about the past nuclear development,” said another.
METI officials acknowledge that they are concerned about the image that might be conveyed if they use force to remove the tent. “That would make us look like we’re trying to quash the anti-nuclear movement, which we are not,” one official said.
Relations between protesters and officials seem cordial for the most part. But one incident toward the end of last year brought a tense standoff.
Over the six months it has been there, the tent has served as a focal point for anti-nuke activists. On Dec. 30, when a movie event was held for a year-end rally, a fire broke out, burning for nearly a minute before being put out, much to the irritation of METI officials.
After the New Year’s holiday, METI issued an ultimatum, ordering occupiers to leave by Jan. 27. But when the due date came around, some 800 protesters gathered at the site, according to the occupiers, making it impossible for METI to enforce the eviction without fuss.
METI officials say they are now considering filing for a court injunction to seek the tent’s removal.
In post-March 2011 Japan, attitudes toward public protest have clearly changed, the anti-nuclear campaigners say. “Such an occupation was never possible, even during the 1960s and 70s, when the social protest movement was very active,” the gray-haired tent occupier said.


2012年3月24日土曜日

原発再稼働の驚くべき障害:国際基準を下回る周辺住民710万人に対する緊急時計画

安全委員会派ストレステストによる一時評価を妥当と認め、再稼働は、政治家の政治判断に委ねられる局面を迎えている。

いよいよ野田政権は原発再稼働に向かって本格的に動き始めるというが、昨日のWSJのウエブ版によれば、再稼働の驚くべき障害として、国内原発の周辺住民710万人に対する緊急時計画は国際基準をはるかに下回っていることを指摘している。

日本の立地自治体には、小さな事故に対処する計画しかないというのである。そもそも、アメリカの原発とは異なり、日本は原発建設の場所を選択する際の基準として、集団避難が可能ということを全く考慮していなかったのだという。

現在新しい防災指針を原子力安全委員会の本間主査が中心となって改訂しているという。WSJによれば、その政府の新しい防災指針はようやく4月にも出されるそうであるが、その新しい国際基準に準じた指針の改定が行われば、大事故が起こった場合の避難区域は30キロにまで拡大されることになるが、そうした広い地域の住人のための緊急時の対策が全く講じられていないのである。

このブログに何度も書いたが、福井原発の30キロ圏内には大阪、滋賀、京都、奈良、兵庫の重要な水源である琵琶湖が含まれているのである。

しかし、2007年にIAEAが、日本の原発の防災対策重点地域を29キロ圏にまで拡大すべきであると勧告したにもかかわらず、原子力安全委員会は、この勧告を本間氏ら専門家の助言に基づいて拒絶したと言う。「日本の技術では深刻な事故は起こりえない」等という、傲慢極まりない、3.11以降の専門家の情けない対応の数々を知っている我々から見ても実に恥ずかしいような貧弱な理由付けによって。

今回の福島原発の災害は、偶然の重なり合いによってかろうじて最悪の事態に至らずにも済んだ。しかも当初はアメリカやフランスの技術や専門家の知見に頼らなければ、日本の専門家は手も足も出なかった。日本の専門家は砂を投入するつもりだったようだが、アメリカの専門家の指摘のおかげで水で冷却する必要があることをやっと認識できたほど、お粗末であった。そういったことをすべて考慮に入れれば、アメリカの専門家が設定した、大事故の場合は30キロ圏内という設定さえ少なすぎるのではないか。

いずれにしても、こうした日本の錚々たる専門家の方々のおかげで、放射性物質が拡散、被曝の被害が拡大したにもかかわらず、こうした人々が、今尚この国の原子力政策を左右するような要職にあるということが、許されてよいものなのだろうか。

以下、WSJのウエブの関連記事と、朝日新聞の大飯原発再稼働に関する記事を転載する。本来WSJが掲載してくれたような、こうした原発の安全性に関する記事は、日本のメディアが、もっとしっかり取材を行い、積極的に取り上げて、国民に広く知らしめなければならないことではないのだろうか。

http://jp.wsj.com/Japan/node_413390/?mod=Right_pickfree


国内の原発事故対策、依然進まず

【福井県敦賀市】国内の原子力発電所の再稼働をめぐって重要な決定がなされようとしているが、驚くべき障害が明らかになっている。国内原発の周辺住民数百万人に対する緊急時計画は国際基準をはるかに下回っている。
イメージChester Dawson/The Wall Street Journal
関西電力大飯原発(福井県おおい町)
 その結果、福島第1原発事故の際の避難区域内に十分入っているとしても、自治体の多くは今後発生する可能性のある同様の事故への準備が十分でないとみられる。
今後数週間以内に、野田佳彦首相は福井県に当地の原発再稼働を正式に要請する見通しで、さまざまな論議を呼ぶことになるだろう。また、4月上旬までには、緊急時計画の不足に対処するために防災指針が改定され、新指針では、国内の原発再稼働が一段と難しくなる可能性がある。それぞれの自治体に地元で原発を容認する意向があるかどうかについてさらに意見を求めることになることが一因だ。
昨年の福島第1原発事故を受けて、国内では原発の稼働停止が相次ぎ、国内の発電能力は3割ほど落ち込んでいる。現在稼働中の2基の原発についても来月下旬までには停止される予定となっている。電力各社は原発のストレステスト(耐性検査)の実施を求められ、経済産業省原子力安全・保安院の専門家による意見聴取会が原発の安全基準の再評価を始めている。
 こうした再評価で明らかになった最も厄介な事実の1つは、国内原発に最も近い50の立地自治体には、福島第1原発事故の規模ではなく、小さな事故に対処する計画しかないということだ。さらに、政府および自治体の当局者とのインタビューならびに、原子力安全委員会がまとめたデータによると、原発に最短の地域より外側の数十の地方自治体では、福島第1原発のような事故に対処する計画が全くない。
 原子力安全・保安院のデータに関するウォール・ストリート・ジャーナルの分析によると、国内原発から20マイル(約32キロ)圏内に位置する121の市町村の最大710万人の住民は、警告や避難、空中に飛散する放射性物質に対する医薬品による保護について信頼できる手段を持ち合わせていない。
例えば茨城県では東海第2原発から18マイル(約30キロ)圏内の14の市町村に約100万人が暮らしている。茨城県の橋本昌知事はインタビューで、「うちの県の場合には、前々から自家用車を使わないと実際的な避難というのは無理だろうということで自家用車を使った防災訓練などもやっているけれども、一般的には自家用車を使えば交通混雑でとんでもないことになるので自家用車を使わないと言われている。ただ、そういったことについて果たして方針を変換していくのかどうか、そういう重要な要素がさっぱり分からない」と語った。
新設される原子力規制庁の指揮の下、避難区域の拡大基準が来月にも発表される見通し。しかし政府当局者は原子力規制庁によるこうした政策の十分な実行を待たずに、閉鎖中の原発の再稼働を求める見通しだ。野田首相は今夏の電力需要がピークを付ける時期に間に合うように原発の稼働を再開すると公約している。
ただ、その時期までに原発が再稼働されるかどうかはまだはっきりしていない。国内の電力各社は、再稼働の方向性は認められているものの、世論の反対を受けて態度を保留している
 政府は原発依存の低減を公約しているが、イタリアやドイツのように、原発の全面廃止には言及していない。計画停電や電力不足を経験せずに夏のピークを乗り切ることができれば、わが国には原発が必要だという政府の主張が弱まることにもなりかねない。
 現在の防災指針で定められている「防災対策重点地域(EPZ)」の半径10キロメートルに代わり新たに半径30キロメートル圏内の「緊急時防護措置準備区域(UPZ)」に指定される圏内に入る地方自治体の多くは、災害対策が整うまでは原発再開には反対の意向だ医薬品の蓄積といった基本項目で6カ月、新たな避難ルートの整備といった一段と大きなプロジェクトでは数年かかるとみられている。
 4月の指針改定では国内で採用されている現行の半径10キロのEPZに代わり、2段階からなるシステムが採用される見通しだ。つまり、小さい事故の際の3マイル(約5キロ)の緊急避難区域と、大事故の場合の18.6マイル(約30キロ)に及ぶ避難区域だ同計画では新たな避難ルートおよび放射性物質を避ける避難所、放射線予防薬の準備、放射線測定場所のネットワーク拡大などが必要となる。
 この指針改定により、初めて国際原子力機関(IAEA)の勧告に沿うものになるとともに、10マイル(約16キロ)の避難区域と50マイル(約80キロ)の食品・水の汚染地域を指定する米国の規定に近いものとなる。
 福島第1原発事故を受けて、原子力安全委員会が原子力防災指針の見直し作業を進めている。同委員会は、既存の指針では現行の避難区域内に位置する地方自治体に対し、「日常生活に支障をきたさない」方法で、小規模な事故に備えるよう求めているにすぎない、と指摘した。また、委員会の調査で、原発の立地自治体のなかにはその程度の計画もないことが分かった。
福井県の場合は、海岸沿いに13基の原子炉が位置し、なかでも敦賀市には原発2基が存在する。敦賀市に派遣された原子力安全委任命の専門家による昨年11月の調査では、緊急時計画は「不十分」との判断が出された。
例えば、この専門家チームの追加報告によると、敦賀市の避難センターの1つは原発の入り口からわずか0.5マイルしか離れていなかった。また、敦賀市街の約8万人の住民に屋内にとどまったり、避難するよう警告する拡声器は全くなかったという。
さらに同報告書によると、山地が海に迫る半島に位置する原発には、緊急救援隊が到着して住民を救出するのに狭い曲がりくねった道が1本あるだけだ。敦賀市立石地区の原発の裏手数百メートルの地域に住む72人の住民のうちの1人で漁師の浜上秋良さん(92)は、「1つの道しかないんで、逃げる方法がない」と話す。
 敦賀市の緊急指令センターは同原発から8マイル(約13キロ)の海沿いにあり、海抜わずか6フィート(約1.8メートル)に過ぎない。そこには無線のコミュニケーション手段はなく、放射能で汚染された大気を浄化するフィルターもついていない。
敦賀市の状況は海岸線に位置する原発の多くの典型とも言える。米国の場合と異なり、原発の場所を選択する際の日本の基準は集団避難の可能性を考慮したものではなかった。防災指針の見直しを進めている国の原子力安全委員会防災指針検討作業部会の本間俊充主査はそれについて真剣な検討がなされなかったことは今では明らかだろう、と語った。
イメージChester Dawson/The Wall Street Journal
大飯原発近くの避難場所を示す標識
 原子力安全委員会は、最近では2007年に、原発の防災対策重点地域を18マイル(約29キロ)以上に拡大することを求めるIAEA勧告を、本間氏をはじめとする専門家の助言に基づき拒絶した。委員会は日本では深刻な事故は「技術的に起こり得ない」とする既存の指針を堅持した。
その翌年、こうした政府の自信の証拠が示された。08年10月、福島第1原発で2日間に及ぶ防災訓練が実施された。この訓練では、原発の送水ポンプが壊れ、冷却システムが作動せず、50ミリシーベルトの放射線量(原発作業員に対する年間の平均上限の2倍超)が放出されたと仮定された。
訓練シナリオでは、漏れた放射線は原発から1.2マイル(約1.9キロ)以内にとどまり、原発事業者による迅速な対応で被害は数時間のうちに食い止められた。周辺の2つの町の全住民1万8109人のうち、ごく一部の約1858人が、保育園と体育館の2カ所に避難した。ともに、原発から2マイル以内の距離にある。
 しかし、福島第1原発が震災に見舞われた昨年3月、こうした仮定が楽観的だったことが証明された。福島第1原発周辺では毎時400ミリシーベルトと極めて高い放射線が観測された。これは訓練での想定量を8倍上回るものだ。実際の事故では原発から最大30マイルの周辺住民数万人が避難を余儀なくされた。
 近く改定される指針では、避難計画地域が、現行指針で規定される原発立地自治体の範囲をはるかに超えるものに拡大される。30キロ圏内となる改訂後の同地域は、原子炉2基の敦賀原発周辺の場合、琵琶湖の北端に達する。琵琶湖は京都府や大阪府の住民をはじめ約4100万人の飲料水の水源となっている。
長期的な影響については依然明らかではないが、これまでのところ福島では放射線の被曝による死亡や病気の報告はなされておらず、健康への影響も現時点では懸念されたほどではないようだ。
原発周辺地域の地方自治体の当局者のなかには指針の改定に異議を唱えている者もいる。住民や企業が懸念を深め、土地を離れてしまうのではないかとの思いが背景にある。敦賀市の河瀬一治市長はインタビューで、立地自治体は危険な地域だとみられるのは避けたいと語った。さらに、原子炉が最高の安全基準を満たす限りは、周辺自治体には懸念はない、と強調した。
河瀬市長が率いるグループ(数十の原発の立地自治体を代表する)はここ数カ月間、原子力安全委員会に対し2回にわたって避難計画地域の拡大を再考するように嘆願するとともに、集団避難は実行不可能だと批判した。
また、改定後の新規定でも十分ではないとの見方もある。既存指針の下では、原発の運営事業者は原発の立地自治体と話し合う必要があるが、近隣の風下の自治体との協議は義務付けられていない。そのため風下に当たる都市の自治体関係者らは苛立ちを強めている。というのも、原発を運営する電力会社に対し意見を表明する正式な手段がない上、原発立地自治体に交付される政府や業界からの補助金の対象ともならないからだ。
藤村修官房長官は16日、定期検査で運転停止中の原発の再稼働手続きで、事前に説明して合意を得る地方自治体の範囲を、原則として原発から半径10キロメートル圏の自治体に限る考えを示唆した。これを受けて、10キロ圏外ながら原発に比較的近い一部自治体から反発の声が上がっている。
 緊急時の対応計画について現在、見直しを求められている自治体の1つは京都府の舞鶴市だ。人口は8万7000人で、自衛隊の舞鶴基地もある。
 舞鶴市の境は高浜原発から6マイル(約9.7キロ)圏内にあり、舞鶴市には数百世帯を避難させる基本計画はある。同市は住民に原発事故に関し、「窓を全部閉めてください」とか、「口にハンカチを当ててください」「帰宅したら顔や手をしっかり洗って下さい」といった基本的なアドバイスを記したハンドブックを支給している。
 原発の防災指針で定められている「防災対策重点地域(EPZ)」の半径10キロメートルに代わって新たに半径30キロメートル圏内を「緊急時防護措置準備区域(UPZ)」に指定する案が実現すれば、初めて舞鶴市全体が重点地域内に入ることになり、深刻な事故が発生した場合には市全体が避難の対象となる可能性が高まる。
医師でもある舞鶴市の多々見良三市長は、5月までに市の暫定計画を策定すると表明した。計画には、市役所の全機能を一時的に他の場所に移したり、避難ルートを策定し始めることなども含まれる。多々見市長はインタビューで、「(深刻な事故に際して)われわれ全部が逃げなければならないのであれば、(周辺自治体ではなく)立地自治体だ」と述べ、「同じ被害を受けるものについては、(立地自治体と)同じような(原発)再稼動判断をさせていただくのが普通ではないか」と語った。
近い時期の原発再稼働が可能か――そして、周辺自治体の準備が整っているか――を試すケースは、福島県おおい町に位置する大飯原発の4基の原子炉だ。大飯原発はかつて京都府と大阪府の消費電力の最大20%を供給していたこともあった。
国内の公益事業関連当局者や原子力安全・保安院(NISA)は、大飯原発の2基の原発について再稼働を検討している。公益企業の幹部やNISAの当局者らは、大飯原発の第3号機と第4号機は、福島第1原発事故後に導入された「ストレステスト」を最初に合格する見通しだとしている。
NISAの報告書は、ストレステストで、大飯原発とその使用済み燃料棒が「想定基準の1.8倍の地震に見舞われても」引き続き冷却可能であることが示されたと指摘した。
また同報告書によると、11.4メートルの津波にも持ちこたえられる見込みだ。同報告書は、歴史的な記録では、福井県おおい町では同水準を超える津波は示唆されておらず、同原発には災害の脅威に対処する「十分な余地」があると結論付けている。
 しかし、地元当局者らは、災害の可能性は小さいかもしれないが、可能性への十分な備えはできていないと語っている。敦賀市の場合と同じように、大飯原発周辺住民に対し指定された緊急避難所は原発の入り口から0.5マイル(0.8キロ)弱の学校となっている。また、おおい町の災害警告システムは約2.4メートルの位置に設置された拡声器に主に頼っている状況だ。
緊急時指令本部は海辺から数メートル程度しか離れておらず、海抜は約1.8メートルだ。大飯原発が位置し周辺住民が暮らす半島からの唯一の避難ルートは8キロほど続く崖に面した道だけで、この道は約640メートルの2車線の橋につながっているが、冬場はこの橋は凍りつく。
おおい町総務課の新谷博樹主査は「今調査中だ。数年前から新しい道路が必要だという話があったが、今まで作っていない状況だ」と語る。

大飯原発、再稼働手続きへ 野田政権、4月から地元説得

関連トピックス

図:原発再稼働までの流れ拡大原発再稼働までの流れ


 野田政権は23日、内閣府原子力安全委員会が関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の安全審査を認めたことを受け、再稼働に向けた検討を始めた。来週中にも関係閣僚で安全性を確認し、再稼働可能と判断。4月上旬にも地元自治体の説得に入る。再稼働に反対する大阪市の意向も考慮する考えで、早期に踏み切れない可能性もある。
 政権が原発再稼働の前提としているストレステスト(耐性評価)の1次評価について、原子力安全委は23日、大飯原発3、4号機を「妥当」とした経済産業省原子力安全・保安院の審査を認める文書を公表した。安全委による確認は初めて。大飯原発の再稼働に向けた、国の技術的な安全性の確認作業は完了した。
これを受けて、藤村修官房長官は23日夕の記者会見で「まず技術的な分野について、政府としてヒアリングしないといけない」と表明。原子力安全委などの判断を確認したうえで、再稼働の検討に入る。



2012年3月23日金曜日

電力会社の暴走は止まらず、ですか?

東電は、契約期間途中の場合、利用者が値上げを断れることを説明していなかったというし、関電は、この1年間、原発以外からエネルギーを確保するための努力をほとんど何もせず、夏の電力不足を逆手にとって、大飯原発の再稼働に血道を上げている。

先日、大飯原発に、視察に行った古賀茂明氏は、プレスを隔離、同行の代表取材も拒否したという。末端の一番危ない部署で働く作業員は身元も不明なケースも多く、そういった意味で日本の原発は、常に危険にさらされているにもかかわらず、安全上の理由などという理由にならない理由をつけてプレスを隔離するのである。電力会社が電力会社ならば、行政も行政である。

保安院はストレステストの結果を認め、安全委員会は今日それを確認した。地元の理解を得られれば、政府三役の政治的な判断で再稼働を決めるという。

フクシマ原発の事故原因の解明すらまだ何もなされず、原発の安全基準についても何一つはっきりしていない。規制庁の発足すら見通しがたっていない現状である。

原発のメルトダウンを食い止めるために誰一人としてまともな対応ができなかった保安院、安全委員会のメンバーが、原発の安全性を検証するテストの結果をチェックし、3.11の時に、国民に対して大嘘をついて重大な情報を隠蔽し、地元の人達の被曝を許してしまった政治家が、原発再稼働の政治的判断を行うとは、何たる茶番だろうか。

まともな倫理規範のある国であれば、決してあってはならないことが、ここでは平然となされていく。そのことに対して、大型メディアのジャーナリストや大企業の経営者の多くは、声を上げて電力会社と国が一体になった暴走に対してしっかり歯止めをかけるどころか、、私利私欲のためだけに、必死で原発の再稼働に拍車をかけようとやっきになっているのである。

この国は一体いつの間にこんなに情けない、救いがたい国に成り下がったのだろうか。

日本の昔の政治家は、私財を投げ打って国政のために粉骨砕身働いたという。会社のトップは、社会に迷惑をかけたり、騒がせたりするようなことがあれば、周りからわいわい責め立てられなくても、引け際を心得、自らの命を断つことで自分できっちり幕引きをし、社会的責任を負うたと聞く。

人々の上に立つ社会的影響力をもった人間が右を向いても、左を向いても、品性を疑うような厚顔無恥な輩ばかり、まさに世も末である。

古賀氏は大飯原発の安全性について疑問を投じ、同行の代表取材さえ拒否されたことを発言した後、テレ朝のワイドスクランブル木曜の4月からの出演を理由もなく降板しろと言われたことをツィッターで、つぶやいた。

幸いにして、多くの人々の抗議のツィート、リツィートのおかげで、4月からのレギュラーが復活したそうだが、テレ朝に内部では、必死で戦っている少数の人たちがいるという。玉川徹氏などもその一人であろう。

古賀氏のような大きな組織を離れ、大きな志をいだいて戦っている個人まで抑圧するようでは、日本はお終いである。志と良心のある多くの人達の力で、彼が復活できたことはせめてもの救いである。

以下東電料金値上げと、大飯原発再稼働関連の記事を転載する。


http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201203210126.html

東電料金上げ「拒絶可能、説明せず」と批判 経産相が改善指示

枝野幸男経済産業相は21日の閣議後の記者会見で、東京電力が4月1日に実施する大口顧客向け電気料金の値上げに関する説明が不十分だとして、改善を指示したことを明らかにした。契約期間途中の場合、利用者が値上げを断れることを明確には説明していなかったと指摘、「商慣習の常識の話だ。開いた口がふさがらなかった」と東電の対応を批判した。
これを受け東電は21日、都内で記者会見を開き、中小企業などが対象となる契約電力500キロワット未満の顧客約22万件に対する当初の説明が不十分だったと謝罪した。このうち約17万件は4月2日以降に契約更改を迎える。
 東電は2月、値上げ後の新料金を了承できない場合には3月30日までに連絡するよう求める文書を利用者に送付。経産相は「個別に指摘を受けた顧客にだけ対応していた、という指摘がある」と述べた。
東電は3月上旬から全体の半数強の顧客に電話か直接訪問の形で説明を実施したが、契約期間途中の顧客は大半が値上げを拒否した。東電は残る顧客への説明を急ぐとしている。
 経産相は「故意かどうかは評価できないが明らかにおかしい。経営体質は全く変わっていない」と批判している。
http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_411830



徹底したコスト削減を=東電の電気料金値上げに注文―松原消費者相


松原仁消費者担当相は21日の閣議後記者会見で、東京電力の電気料金値上げに「重大な関心を持っている」と述べ、徹底した合理化によるコスト削減を実現しなければ、国民の理解は得られないとの認識を示した。
松原消費者相は、家庭用電気料金の改定は国民生活に重大な影響を与えるとした上で、経済産業省と協議し「消費者への影響を踏まえて厳正に対応していきたい」と述べた。 
[時事通信社]

事業者の4月からの電気料金値上げは、遅らせる事ができる

文・荻原博子
4月1日から、電気料金が、平均で17%上がるという通知を、東京電力からもらった事業者の方も多いと思います。
ただし、事業者の了承が無ければ、契約期間内に上げる事はできないということで、これを知らずに諦めていると、損する方も出てくると思います
実は、先週金曜日に、世田谷区の保坂展人区長から電話がありました。世田谷区が東電と昨年に結んだ契約は、平成23年6月15日から平成24年6月14日。本来ならば、電気料金の値上げは契約更新時点に行われるものなので、今の契約が切れる6月15日までは値上げしないで欲しいと申し入れ、値上げを6月まで阻止したというのです。
「世田谷区の場合、平成23年度のPPS(特定規模電気事業者)以外の電気の契約は、5億6800万円。これが、4月から値上がりするのと、契約切れの6月から上がるのでは、なんと1500万円も電気料金が違ってきます。これは、大きい。東電は事業者に、4月1日の値上げに承服できない人は、3月30日までに“専用ダイヤル”に電話くださいと書いています。つまり、それを過ぎたら、勝手に契約中でも値上げしますよということなのでしょう」
東電に問い合わせると、「4月までに周知徹底し、ご理解を得ます」とのことですが、約24万件もある事業者すべてにあと2週間ほどでコンタクトをとれるとはとても思えません。
文句を言わない人は、契約途中でも自動的に電気料金を上げられてしまうということなので、それが嫌なら、早めに電話して、契約期間が終わるまでは値上げに応じない旨を伝えたほうがいいでしょう。
今のところ、これに気づかずに文句を言わない人は、自動的に4月から電気料金が値上がりするようですが、事業者が気づいて声を上げれば、4月以降でも何らかの配慮はなされるのではないかと思います。

政治介入で強行「大飯原発再稼働」津波・核燃料プール・テロなど問題だらけ

2012/3/21 16:56
「もし再稼働するなら、一番早いんじゃないか」(羽鳥慎一キャスター)と言われる関西電力の福井・大飯原発――を昨日(2012年3月20日)、元経産省官僚で大阪府市統合本部の特別顧問である古賀茂明らが視察、古賀が今朝の番組に電話出演した。なお大阪市は関電の筆頭株主で、原発を早期廃止する方針だそうである。

原子力推進原理主義者の暴走

   古賀によれば、大飯原発は津波対策で防潮堤の拡大が必要であるが、その長期に及ぶ予定の工事はまだはじまってもいない。核燃料プールは容量が足りず、移送先の目途も立たない状況である。テロ対策なども手薄で、問題だらけらしく、「現状で安全と言ってゴーサインを出すことは考えられない」と言う。

  いまの総理をはじめ、政府は安全安心な原発の早期再稼働に積極的だが、古賀は再稼働に向けて「政治介入」が行われているとし、それでは国民や国際社会の理解を得られないと主張。「このままいくと、原子力推進原理主義者の暴走を許すことになる」などと危機感をあらわらにした。 


関電大飯原発「安全確保できていない」 大阪府市エネ会議委員が視察

2012.3.20 22:29
関西電力大飯原発を視察する大阪府市統合本部エネルギー戦略会議委員=20日、福井県おおい町(平田雄介撮影)
関西電力大飯原発を視察する大阪府市統合本部エネルギー戦略会議委員=20日、福井県おおい町(平田雄介撮影)
大阪府市統合本部エネルギー戦略会議の委員ら12人が20日、再稼働に向けたプロセスが大詰めを迎えた福井県おおい町の関西電力大飯原発3、4号機を視察した。終了後、飯田哲也委員(大阪府・市特別顧問)は、安全を確保できていないとして、再稼働に必要な条件を戦略会議で7項目にまとめ、近く公表する意向を明らかにした。
飯田委員によると、7項目は電力需給データの開示や安全基準の見直し、再稼働の同意を得る自治体の広域化など。政府や関電への意見提出を検討している。
飯田委員らは18日の戦略会議で、関電筆頭株主の大阪市が6月の株主総会で全原発の速やかな廃止を提案する方針を決めたばかり。
 この日の視察は、使用済み核燃料の貯蔵庫など当初の予定になかった施設を報道陣に公開するよう求める委員側と、拒否する関電側が冒頭から衝突し、緊張した雰囲気の中で行われた。
委員らは福島第1原発事故後に導入した空冷式非常用発電機の起動訓練や、新たに浸水対策を施した非常用ディーゼル発電機室などを見学。視察は当初予定の2倍の4時間に及んだ。
 委員らは改めて安全への懸念を表明。関電側は「ご意見を参考にしたい」などと理解を求めた。

「大阪府内の一部も被曝」 高浜・大飯原発大事故時、府が予測公表 

2012.3.16 20:20
想定される大阪府の甲状腺被曝線量
想定される大阪府の甲状腺被曝線量
 大阪府は16日、福井県にある関西電力の高浜原発と大飯原発で、福島第1原発級の大事故が起きた場合の放射性ヨウ素拡散予測を公表した。独自に予測していた滋賀県からデータの提供を受けた。気象条件などが異なる106例の予測のうち、府内の一部で、内部被曝線量が屋内退避が必要な100ミリシーベルト以上の地域が出るケースが1例、安定ヨウ素剤の服用が必要とされる50~100ミリシーベルトの地域が出る事例が11例あった。
 今回の予測では、福井県内の高浜、大飯、敦賀、美浜の各原発で、それぞれ福島第1原発級の事故が起き、約6時間放射性物質が放出されたと仮定。平成22年の1年間で、滋賀や大阪両府県に影響しやすい北よりの風が長く吹いた日を抽出し、評価した。
 府内に影響する計12例のうち、22年3月6日の気象状況で高浜原発で事故が起きた場合、府北西部の能勢町の一部で100ミリシーベルト以上になると予測。また、
大飯原発で同じ日に事故が起きた設定では
高槻市付近から富田林市付近にかけて50~100ミリシーベルトになるなどの結果が出た。
 大阪府の松井一郎知事は「あくまで最悪の場合だが、気象条件によって
は大阪も被曝することになる脱原発依存の方向性を関電にも認識いただけるよう議論していきたい」と述べた。 

訓練想定の甘さ露呈

崖崩れ、渋滞考慮不足


放射線量の検査を受ける訓練に参加した子ども(18日午前10時29分、若狭町で)=竹田津敦史撮影

徒歩で参集する社員ら(18日午後1時37分、おおい町の関西電力大飯原発で)=笹井利恵子撮影

巡視船で避難する住民(18日午前8時47分、敦賀市で)=竹田津敦史撮影
 「運動会の予行演習のよう。本当に大事故が起きたら逃げられないのでは」――。敦賀市を拠点に行われた18日の県原子力防災総合訓練。自衛隊など120機関、総勢約3500人が参加したが、避難を経験した住民は原発から5キロ圏のわずか計141人。「想定外」に見舞われた福島第一原発事故の教訓がどこまで反映された訓練だったのか。実効性に疑問を投げかける声が上がった。(島田喜行、藤戸健志、畑本明義、熱田純一)
◆敦賀原発
午前6時20分、震度6強の地震が日本原子力発電敦賀原発(敦賀市明神町)を襲い、全電源が失われ、原子炉の冷却ができなくなったとの想定で行われた。免震構造の建屋に近くの寮から集まるなどした約100人が、衛星電話での連絡対応に追われた。高圧電源車3台を起動して電源を確保するなど、原子炉の機能を回復する手順を確認。使用済み燃料プールに落下して内部被曝した男性を構内の応急処置室で除染、シートで包んで病院に搬送した。
◆悪天候ヘリ中止
 午前9時。敦賀市立西浦中で、中学生8人と引率の教諭2人が、悪天候で中止となったヘリコプターの代わりに急きょ自衛隊車両で避難した。?野寛男教諭(48)は「ヘリがだめなら職員の車で避難するなど、別の方法を考えておかなければ」と表情を引き締め、同中2年の古川徹君(14)は「早く逃げることの大切さを実感。事故時にヘリが来なかったら、逃げるのが遅くなる」と不安そうだった。

◆避難所
午前9時30分。若狭町三方勤労者体育館にバスや自衛隊車両で次々と住民が到着。順路に従ってサーベイメーターで体に放射性物質が付着していないかを調べる検査を受け、放射性物質が多量に付着した人は再検査に。「前回(敦賀で行われた2007年)とは緊張感が違う」。6歳の息子を連れて避難した敦賀市内の旅館業山口貴子さん(35)は真剣な表情をみせた。

◆評価の声と課題
 通信網の破綻が致命的だった福島原発の事故。衛星携帯電話による通信連絡を徹底するなど、事故を強く意識した訓練だった。だが、敦賀市立石、漁業谷口伊久夫さん(75)は「訓練は運動会の予行演習のようなもの。道路でがけ崩れも起きずに避難できる事になっているが、実際に崩れたら逃げられない」と首をかしげ、車を使った避難に参加した同市立石の漁業、浜上貞和さん(62)は「いざ事故が起きたら大渋滞で逃げられない。がけ崩れが起きれば行き止まり。海が荒れたら船も使えない」と不満をあらわにした
 訓練後に敦賀市のオフサイトセンターで開かれた記者会見では、町民約1万1500人の92%が敦賀原発から20キロ圏に住む南越前町の川野順万(のぶかず)町長が「5キロ圏外や30キロ圏を範囲にした訓練を、今後はしてほしいとつくづく思った」と指摘、「津波を想定しなかったのも残念。地震があれば津波もある」と苦言を呈した。